オリコン株式会社がMBOで非上場化される見込みです。
三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタルが資金支援し、1株1,332円で公開買付を実施。買付期間は2026年5月29日から7月9日までで、最大総額109億円となる見込み。オリコンは上場廃止となります。
非上場化を決めた要因に、メディアにおけるAIの普及によるメディアの流入減少、ゼロクリック化を挙げました。今回のMBOは特にメディア事業の行方を左右すると考えられます。
業績は堅調だったオリコンが非上場化を選択
オリコンは2026年3月期の売上高が前期比28.6%増の63億2,000万円、営業利益が同10.0%増の15億4,300万円でした。増収増益で、業績は決して悪くありません。2027年3月期は通期の売上高を同2.9%増の65億円、営業利益を同6.3%増の16億4,000万円と予想しています。
2026年3月期は買収した株式会社新旭ののれんの減損損失の計上などにより、純利益は前期と比較して4割近く減少しました。しかし、M&Aという一時的な要因による減益であり、本業の稼ぐ力をみる営業利益は伸びています。
オリコンのMBOはゼロクリック問題が背景にあるとの報道が取り沙汰されたため、事業がすで衰退しているように感じますが、足元の業績は堅調そのものなのです。

※決算短信より筆者作成
メディア「オリコンニュース」のセッション数も、2026年3月期は2%増加、広告に誘引して収入を得るセッション単価は10%増加しました。
メディアを運営するニュース配信・PV事業の売上高は16億9,600万円で、前期比で9.2%も増加しています。タイアップ広告は増加しており、外部メディア向けのコンテンツ提供でもニュース記事・動画ともに増収となりました。
また、MBOを発表する前のPBRは1.0倍以上を維持しており、株価が低迷していたわけではありません。アクティビストとの表立った対立もありませんでした。スタンダード市場の上場維持基準から大きく外れることもなく、経営環境は比較的安定していた会社。
つまり、今回のMBOはネガティブな要因というよりも、健全な再成長に向けて非上場化するというポジティブなものであると受け止めることができます。
オリコンという会社が持つ最大の強みとは一体何か?
オリコンはかつて音楽のランキング提供や雑誌の発行、モバイル事業が中核でしたが、現在は大きく変化しています。成長をけん引しているのは顧客満足度調査。学資保険や積立保険、建売住宅ビルダー、旅行予約サイトなどに対してインターネット調査をもとに満足度調査を実施。それをランキング化して顧客満足度として公表しているのです。
顧客満足度調査事業の2026年3月期の売上高は前期比8.8%増の25億9,800万円。会社全体の4割以上を占めています。
しかも、この事業の主力サービスは商標利用で、売上は18億2,000万円。1割増加しました。
商標利用は特定の企業に対して「オリコン顧客満足度○位」獲得といったロゴの利用許可を受けることです。企業が消費者に対して、客観的な調査に基づいた良質なサービスを提供しているという安心感を付与することができます。
かつてテレビの音楽番組やニュース番組などでは頻繁にオリコンチャートが登場しました。音楽番組が盛り上がっていた世代にとってオリコンを知らない人は少なく、一定の権威性があります。つまり、現在のオリコンの強みは「オリコン」というブランドそのものなのです。ブランドの毀損につながる要素は徹底的に排除し、更なるブランド力向上に努めなければなりません。
現在、消費者に対してブランド力向上に寄与していると考えられるのがオリコンニュース。オリコンは収益基盤を盤石なものにするため、このメディアの影響力を拡大しようとするでしょう。すでに動画などのテキスト以外のコンテンツを提供しており、更なる投資を進めるものと考えられます。一方、メディア事業はコンテンツへの投資を重ねたとして、相応のリターンが得られるわけではありません。仮に動画コンテンツの強化を目的とした映像の制作会社を買収すれば企画力や編集力を上げることになりますが、すぐに投資回収ができるわけでもありません。
しかし、メディア事業の強化で利益率が落ちることになれば株主から反発が起こることも予想されます。株価が低迷すればアクティビストに狙われることにもなりかねず、ブランド毀損のリスクが高まります。これが非上場化を決めた要因の一つなのではないでしょうか。
一般的なWebメディアとは異なるオリコンの立ち位置
オリコンがMBOを発表した後、Webメディアの苦境と「オリコンニュース」を並列で語る記事が多く見受けられました。Webメディアの読者層の年齢層は上がっており、若年層の情報取得ツールはSNSに移行している。先細るユーザーに対して収益化を急ぎ、ペイウォールを設けても離脱者が増えてしまうだけだ。それはオリコンも同じだといった論調です。
しかし、「オリコンニュース」の位置づけは、メディア単体で稼ぐ会社とは異なります。メディアでの収益化を急ぐよりも、住宅や金融など芸能以外の分野にもオリコンブランドを広げ、ブランド力を拡大しつつ強力なものにしようとするのではないでしょうか。
それが同時に顧客満足度調査事業の成長につながるはずだからです。
オリコンがいかにして消費者にブランド認知を広げようとするのか、その手法には注目でしょう。



