メディアにおけるブロックチェーンの活用として、トークンエコノミーという考え方があります。ブロックチェーンによって発行したトークンを、コミュニティの通貨として活用し、その活性化や円滑な運営に当てようというものです。

デジタルメディアの世界で、21ジャンル59のメディアを運営する株式会社イードでは、ゲーメディアの新戦略としてゲーム領域のトークンエコノミーを昨年から立ち上げようと取り組んでいます。その現状と、目指す未来について、同社でゲーム事業を統括する、宮崎 紘輔 部長にお話を聞きました。(Vtuberに続いて2度目の登場です)

―――簡単に自己紹介をお願いします

イードでゲームメディアを統括している宮崎です。主に「インサイド」「Game*Spark」「GameBusiness.jp」という3つのメディアを運営していて、新しい取り組みとして昨年秋から、ゲーム領域でのトークンエコノミーを立ち上げようとブロックチェーンを活用した「GameDays」というアプリをリリースしました。

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―――どういう経緯でブロックチェーンに関心を持ったのでしょうか?

ブロックチェーン自体は興味深い技術だと2,3年前から感じていました。一方で、自分たちのようなメディアにどのようにして適用するかというのはハッキリとは見えていませんでした。様々に情報収集は続けていたのですが、昨年頭に開催されたカンファレンスで、トークンエコノミーに取り組んでいる先人の話を聞く機会があり、「これだ!」と感じ、ゲーム領域のトークンエコノミーに取り組む事にしました。

―――トークンエコノミーのどこが魅力的だったのでしょうか?

メディアとコミュニティは表裏一体だと思っています。メディアはある一定のコンセプトを持って情報を伝えていくので、それに共感する読者が集まってきます。それは自然と形成されるコミュニティだと思います。特に「Game*Spark」は長年読者参加型のメディアとしてコミュニティを大切にしてきましたので、そのコミュニティの共通の通貨として、トークンを取り入れていく事は非常に自然な事に思えました。

また、トークンは法定通貨と同じ価値ではなく、コミュニティの価値を体現するものです。ゲームをやりすぎて両親から「ゲームは1日1時間」と怒られた事がある人は多いと思いますが、ゲームを遊ぶというのはなかなか評価されないものです(笑)。でも、ゲームを遊び込んで、情熱を注いでいて、とてもプレイが上手い、情報を沢山知っている、語れるというような事は、同じゲーマーからすると評価に値する価値だと思うんです。Twitterにフォロワー数の表示があることで、その数字を沢山持っている人はインフルエンサーだと一目で分かるように、ゲームへの情熱を可視化するような仕組みを作りたいと思いました。

―――具体的に「GameDays」はどのようなサービスなのでしょうか?

「GameDays」では、ゲーム情報の閲覧、ゲームプレイログの管理ができるというのが主要な機能です。「Super Gamers Coin」と「Super Gamers XP」という2種類のトークンがあり、ゲーム情報の閲覧・コメント・シェア、ゲームの購入・プレイ(現状ではPCのゲームプラットフォームであるSteamに対応)といった行為に対してトークンが付与されていきます。特に意識せずこれまで通りにゲームライフを重ねていくと、自然とトークンが溜まっていくという仕組みです。2種類のトークンは、貯めて何かに交換できる資産を表す「Super Gamers Coin」と、貯まるだけで経験値やレベルを表す「Super Gamers XP」という特徴があります。

2種類のトークンを発行している

トークンの使い道は、現状では記事に投げ銭をして、PV(=閲覧数)とは異なるかたちで記事を評価したり、ランキングを上位に持っていってその記事の拡散をサポートする、という程度なのですが、限定コンテンツの閲覧、特典との交換、イベントへの招待などを充実させていく予定です。また、コミュニティの参加者が皆で協力できるような企画が欲しいと思っていて、トークンを使った投票企画で、好きなゲームに投票をしてもらって、一番トークンを集めたゲームのメーカーに対して、メディアの広告枠を無償で提供する、というような取り組みを考えています。ユーザーが協力し合って、自分の好きなゲームのマーケティングに協力するというものです。

ゲーム領域のトークンエコノミー立ち上げを目指す「GameDays

―――面白そうです

やっぱり、自分が好きなゲームが売れるとファンは嬉しいものですし、コミュニティがある種の共犯関係になって、何かに取り組むというのはとても新しいですし、これからのメディアにとって大事な要素ではないかと思います。

―――立ち上げるに当たって苦労した点はどういったことでしょうか?

技術的にはプライベートブロックチェーンのソリューションである「mijin」を採用することで、開発のハードルは下げる事が出来ました。ただ、ブロックチェーン特有のやり方や癖は多少ありました。一番大変だったのは、トークンエコノミーの全体を設計することです。トークンの性質上、後から全体の設計をやり直す事は困難ですので、最初の設計段階は議論を重ねて、丁寧に、抜けがなく、今後何年間にも渡って自律的に動くものになるように検討をしました。

―――サービス開始から1年が経とうとしていますが、現状はどのようなものでしょうか?

開発を進めながら、必要な機能を少しずつ充実させていっている状況で、ユーザー数はまだ限定的です。ただ、トークンの所有者は確実に増えていっていて、トークンを導入することで、よりメディアに参加してもらい、1ページ多く記事を読んでもらったり、より積極的にコメントを付けたり、記事をシェアしてくれたりする事は明確に分かりました。

一方で、ゲームコミュニティの中で価値を感じてもらうためには、もっと多くの人が参加し、トークンを保有するという状況を作らなければなりません。これまでは「GameDays」というアプリ内のみで発行と利用ができていましたが、ウェブ版のメディアにもトークンの機能を直近で、実装予定です。これによってトークンの所有者は圧倒的に増えるはずです(「インサイド」も「Game*Spark」も月間のアクティブユーザーは数百万人にのぼる)。

最近のアップデートではゲーム情報の閲覧を拡充するために、ニュースソースの拡充を行いました。これまではイードが運営する3メディアのみの情報でしたが、これを広げることで、ゲームに特化したニュースアプリとしても広く使われるようになることを狙っています。

―――他にもアップデートの計画があれば教えてください

ゲームプレイログの管理も大きな柱ですが、現状はSteamというPCのプラットフォームのみに対応しています。これをiOSとAndroidに広げるアップデートを次に予定しています。スマホでもゲームをするのが当たり前になっていますので、そこも取り込むことで、より便利なアプリになると思います。さらに、その後には家庭用ゲーム機のデータも取り込めるようにしていく計画です。

―――今後どのようなトークンエコノミーを目指すのか、教えてください

究極のゴールは、ゲームを買う、遊ぶ、情報収集をする、コミュニケーションをする、といったゲームに消費した時間が、そのまま価値になって、日本円のような法定通貨がなくとも、その価値で生活できるような世界を作ることです。すなわち「ゲームは1日1時間」ということを誰も言わなくなる世界ですね(笑)。

あらゆる支払いを代替するのが遠い未来だとしても、ゲームを遊ぶ事が時間の浪費ではなく、頑張った事が価値に変わる、それによって、更にゲームライフを充実させることができる仕組みをまずは構築したいと考えています。少し夢物語ですが、1つのゲームで頑張ったものがトークンとして価値になり、別のゲームでアイテムや武器を手に入れるために使える……ということが実現したら、きっと大きなパラダイムシフトがおきるだろうと思うんです。いまはまだブロックチェーンゲームの中で取り組みが始まったばかりですが、家庭用ゲームやあらゆるゲームがこうした経済圏ができるのだとしたら、メディアのあり方も大きく変わっていくだろうなと。

メディアをやるうえで自分が大事にしている前提は、あくまでユーザーとメーカー(クリエイター)とを繫ぐ“媒(なかだち)”であるということなんです。単に間に入ってなんとなく広告費を掠め取るというのは正しいありかたじゃなく、本質でもないと思うんですね。これまでは一方的に情報を発信するという立場でしたが、読者とも同じトークンという価値を共有することで面白い共犯関係が作れると思っています。

例えば、トークンを使って編集部に記事を書かせたり、逆に記事を読者から寄稿することで対価としてトークンを得たり。より、同じ場を共有しながら、一緒にトークンの価値を向上させていく仲間になっていくのではないかと思います。

―――最後に、メディアでトークンエコノミーを検討している方にメッセージがあればお願いします

繰り返しになりますが、メディアはコミュニティであり、コミュニティは共通の価値観を持った人たちの集まりだとすると、その持っている価値を表すようなトークンがあるというのは自然な成り行きだと思います。僕たちはゲームメディアとして、「ゲームを遊ぶことは価値がある」という想いで、それを体現するトークンを発行していますが、それぞれのメディアでコンセプトとしているものを表すトークンというのは有り得るのではないでしょうか? ブロックチェーン特有の難しさはありますが、BaaS(※)のようなものも出てきていますので、技術的な利用のハードルは下がっていると思います。ブロックチェーンによって、様々なジャンルで、多様な価値を体現する世界が生まれると世界はもっと面白くなると思いますので、楽しみにしています。

※Blockchain as a Service=ブロックチェーンをサービスとして提供するもの。例えばAWSやAzureでも簡単にブロックチェーンを利用できるようなサービスが提供されている

MIは株式会社イードが運営しています

―――ありがとうございました。

宮崎氏も登壇するイベント「ブロックチェーンとメディアのこれから」を8月28日(水)に丸の内で開催します。詳細はこちらから

特集: ブロックチェーンとメディアのこれから

  1. 活用が広がるブロックチェーン領域のカオスマップを大公開!全135の企業・サービスを掲載
  2. メディアにおけるブロックチェーン技術の活用とは? 著作権管理と許諾のプラットフォームにも取り組む、コンテンツジャパンの堀代表に聞く
  3. ブロックチェーンで資本主義的な世界を超える!全領域に積極投資を進めるgumi國光会長に聞く
  4. 「ゲーム遊ぶ」だけで生活できる未来を作りたい、ゲーム領域のトークンエコノミーに挑む「GameDays」・・・イード宮崎氏
  5. NFTを使った音楽の原盤権や3Dデータ流通にも取り組む、ブロックチェーンの社会実装を目指すBlockBase真木社長インタビュー
  6. トークンを使ったコンテンツの翻訳プラットフォーム「Tokyo Honyaku Quest」について、Tokyo Otaku Mode、bitFlyer blockchain、イードの3社に聞く

登壇者が出演するイベントは28日(水)に開催

Media Innovationのオフラインイベント「Media Innovation Meetup」では、8月も特集と同じく「ブロックチェーンとメディアのこれから」というテーマで、4名の方をお招きして8月28日(水)に開催します。ぜひお誘い合わせの上、ご参加いただければ幸いです。

■概要
日時 2019年8月28日(水) 19:00~22:00
会場 Vacans Space5 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル B1F
主催 株式会社イード

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    株式会社イード 宮崎紘輔 部長
    BlockBase株式会社 真木大樹社長
    株式会社gumi 国光宏尚 会長
    株式会社bitFlyer blockchain 加納裕三 社長
20:15 パネルディスカッション
20:50 懇親会
    軽食とドリンクを用意します
21:45 終了

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    株式会社イード 宮崎紘輔 部長
    BlockBase株式会社 真木大樹社長
    株式会社gumi 国光宏尚 会長
    株式会社bitFlyer blockchain 加納裕三 社長
20:15 パネルディスカッション
20:50 懇親会
    軽食とドリンクを用意します
21:45 終了

チケットはPeatixで販売中です。

サロン会員の皆様には1000円引きのクーポンコードを配布しています。下記からぜひ入会ください。