音声メディアの収益化機会を生み出していく、オトナル八木社長・・・メディア業界2021年の展望(9)

新型コロナウイルスによって平時と全く異なる一年となった2020年。みなさんにとってはいかがだったでしょうか? そして2021年に向けてどのような事を取り組んでいくのでしょうか? 今年もMedia Innovationで大変お世話になった皆様に今年の振り返りと来年への展望をお聞き…

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音声メディアの収益化機会を生み出していく、オトナル八木社長・・・メディア業界2021年の展望(9)
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新型コロナウイルスによって平時と全く異なる一年となった2020年。みなさんにとってはいかがだったでしょうか? そして2021年に向けてどのような事を取り組んでいくのでしょうか? 今年もMedia Innovationで大変お世話になった皆様に今年の振り返りと来年への展望をお聞きました。「メディア業界2021年の展望」全ての記事を読む。

株式会社オトナルは急成長する音声市場で、メディア向けの支援や音声広告の立ち上げに取り組んでいます。八木社長には今年は4月の「Media Innovation Meetup Online #15 音声メディアのいまをキャッチアップする2時間」や12月の「#22 2020年の振り返りと来年に向けての展望」に登壇いただきました。

八木太亮
株式会社オトナル 代表取締役
2013年ウェブメディアを運営する株式会社オトナル(旧社名:京橋ファクトリー)を創業。ウェブメディア事業を事業売却ののち、音声コンテンツと音声広告領域に特化し、アドテクノロジーを活用した広告出稿とクリエイティブ制作をトータルサポートできる”音声広告カンパニー”としてデジタル音声広告事業を展開中。その他、ラジオ局や新聞社など大手パブリッシャー向けの音声コンテンツの配信支援事業とデータ運用支援を行っている。

2020年はメディア業界にとってどのような年だったでしょうか?

コロナの影響でメディアやコンテンツフォーマットごとの性質の差が明確に現れた年だったと思います。

音声メディアに関していうと、音声コンテンツへの関心の高まりを受けて、メディアとしても広告枠としても成長した1年でした。

その理由を大きく3つに分類して挙げると、1つ目は外出自粛や在宅ワークの普及による音声コンテンツへの接触時間の増加、次にGoogleやAmazonなど海外大手プラットフォーマーの音声コンテンツ領域への参入、そして最後に国内の音声プラットフォームや音声サービスの増加が挙げられます。

1つ目の音声コンテンツへの接触時間の増加には、新型コロナウイルス感染症予防のための外出自粛が影響しています。在宅ワークや自宅で過ごす時間が増加し、自宅で働いている時間でもながら聴きで楽しめるインターネットラジオや音楽ストリーミングサービスが成長しました。実際にインターネットラジオサービスのradikoでは緊急事態宣言の発令を境にMAUが750万から900万へと急増しています。

2つ目は海外の大手プラットフォーマーの音声領域への参入です。

Amazonは5月にAmazon Musicで広告付きの無料音楽ストリーミングができるメディア型のモデルを発表しました。さらに9月にはポッドキャストで先行するSpotifyと同様にAmazon MusicでのPodcastコンテンツの受け入れを開始しています。また、広告領域では11月にGoogleがYouTubeで音声広告への参入を発表するなど、大手プラットフォーマーが音声コンテンツ領域を強化しつつあります。

これらの出来事は2021年以降も更に続くと思われるため、来年以降のさらなる音声メディア市場の成長が予想されます。

日本国内においても、一般のユーザーが音声配信を行うこともできる音声配信プラットフォームサービスが複数登場し、音声配信者に対する収益還元プログラムの発表や複数人収録機能を提供し始めるなど、アプリ一つで音声配信を手軽に行えるようなサービスが盛り上がりつつあります。

また英語圏を中心に成長を続ける音声配信手法ポッドキャストにおいても、国内企業が法人名義でポッドキャスト番組を展開したり、これまでブログや動画配信を行っていた配信者が音声配信を行うなど、影響力のある音声配信者による音声配信が行われ始めていると感じます。

音声において2020年はコロナ禍の中においても様々な進展を見せた一年だったと言えるでしょう。

これからのメディアに求められること、直面する課題はどういったことでしょうか?

2020年において、インターネット上の音声コンテンツやメディアにとっては、リスナーの増加という意味でポジティブな成長があった1年でした。その次なるステップとして、コンテンツ配信者の明確なマネタイズ手法の確立が必要になってきています。

音声メディアにおいても代表的なマネタイズモデルのひとつは広告ですが、デジタル音声広告の出稿においては、効果検証手法・メジャメントをどう定義し行っていくかべきかというところを求められています。

さらに広告出稿時の広告IDに頼った広告配信からの脱却という課題は、デジタル音声メディアについても同様です。

メディア自体で深くリスナーをつなぎとめるような、ファーストパーティーデータの構築や、魅力的なリスナーを引きつける媒体自体の質の向上を進めていき、メディアのマネタイズのあり方をさらに模索していく必要があると考えています。

2021年に取り組みたいと考えていることはどういったことでしょうか?

音声コンテンツは2021年もリスナーの増加が続き成長していくことでしょう。

それに伴い弊社オトナルとしては、音声のパブリッシャーがサステナブルにメディア運用ができるように、広告を始めとした音声コンテンツ配信者のマネタイズ手法の確立を進めていきたいと考えています。

音声コンテンツ配信は多様性が進んでおり、新聞社のようなもともと音声コンテンツではない活字メディアのパブリッシャーが音声に参入する動きも進んでいます。

音声メディアを収益化をする手段としては、広告モデルかリスナーから課金をするモデルの2つに大分類されますが、 デジタル音声広告においてはプラットフォーマーのような巨大な広告在庫を持つ音声メディアのみがプログラマティックを中心とした広告マネタイズを行っているというのが現状です。

広告主からの出稿をデジタル音声メディアのひとつの番組に対してのみ行うことは、まだ現在の日本の音声市場では広告在庫と広告主のバランスが理由で多くない状況ですが、我々としてはこの点を解消し、音声配信をするコンテンツプロバイダーと広告主の橋渡しになるような流通の創造を行っていきます。

また、英語圏のポッドキャスターがクラウドファンディングPatreonにおいてが行っているようなリスナーからの月額課金型のマネタイズ手法など、 広告だけにとらわれない新しいデジタル音声メディアの収益化手法についても模索を続けていきたいと考えています。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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