【メディア企業徹底考察 #29】売上・利益の縮小が続く文教堂から占う書店の未来

日本最大の直営書店チェーン「文教堂書店」を運営する株式会社文教堂グループホールディングスの2021年8月期の営業利益が3億6,500万円となり、2期連続で営業利益を出しました。新型コロナウイルス感染拡大の行動制限の影響などにより、売上高は前期比11.8%減の187億8,20…

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日本最大の直営書店チェーン「文教堂書店」を運営する株式会社文教堂グループホールディングスの2021年8月期の営業利益が3億6,500万円となり、2期連続で営業利益を出しました。新型コロナウイルス感染拡大の行動制限の影響などにより、売上高は前期比11.8%減の187億8,200万円となったものの、リモートワークの拡大で郊外型の店舗の売上高は堅調に推移しました。また、希望退職者の募集などの経費削減策により、利益が出る体質へと変化しています。

文教堂は2018年8月期に5億9,100万円の純損失を出し、2億3,300万円の債務超過に転落。更に2019年8月期に39億7,700万円の巨額損失を計上して債務超過額は42億1,200万円まで膨らみました。2019年9月27日に事業再生ADRを申請。 文教堂は第三者割当増資を通して46億6,000万円の金融支援を受けることとなります。 みずほ銀行、三井住友銀行、横浜銀行などの金融機関が、41億1,600万円の債権を株式化する計画を受け入れたのです。

このとき、文教堂は事業再生計画を提出しています。計画では、2021年8月期の売上高は180億7,600万円、営業利益は2億3,800万円としていました。文教堂の売上高、営業利益の実績は計画を上回っています。2020年8月期も同様に計画を超えました。「鬼滅の刃」のスマッシュヒットやコロナ禍・リモートワークの推進により、文教堂がにわかに勢いづいています。

■文教堂ホールディングス業績推移(単位:百万円) ※2022年8月期以降は再生計画の数字

決算短信及び事業再生計画より筆者作成
※営業利益は右軸

しかし、売上高は縮小が続き、利益も年を経るごとに薄くなる予想です。この記事は文教堂がこれまで辿った道と、書店の将来を占う内容です。

「メディア企業徹底考察」シリーズのバックナンバーはこちら

息も絶え絶えの状態で上場維持が続くわけ

文教堂は1949年12月に神奈川県川崎市に誕生した島崎文教堂が前身。1978年4月に文教堂書店をチェーン展開を開始しました。1994年7月にジャスダックに上場しています。2008年3月に持株会社化して文教堂グループホールディングスに商号を変更しました。2007年8月期に6億9,400万円の純損失を計上。このころから業績の低迷が鮮明になりました。

2009年8月期には16億1,000万円の純損失を計上し、自己資本比率は3.98%と債務超過寸前に追い込まれました。2009年9月に筆頭株主で前会長の嶋崎欽也氏が20.4%の株式(議決権ベースで24.95%)をジュンク堂書店(現:株式会社丸善ジュンク堂書店)に譲渡。これによってジュンク堂が文教堂の筆頭株主になります。

2010年5月にジュンク堂の親会社である大日本印刷株式会社に対して第三者割当増資を実施し、文教堂は12億円を調達しました。この増資により、大日本印刷とジュンク堂の保有株式が合計で51.85%となったため、大日本印刷の連結子会社となりました。

2016年10月に丸善ジュンク堂書店が全株、大日本印刷はその一部を日本出版販売(現:日販グループホールディングス株式会社)に譲渡しました。現在も日販は11.51%を保有する筆頭株主。大日本印刷は9.72%を保有する大株主です。

上述したとおり、2019年9月に事業再生ADRを申請することとなります。事業再生ADRとは倒産の一種で、裁判所を通した法的強制力を持った手続きではなく、当事者同士の合意によって債権の放棄や債務を圧縮するものです。


《不破聡》

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