英国の文化・メディア・スポーツ省(DCMS)は、デジタルラジオと音声サービスについての最新のレポートを公開しました。同省は、スマートスピーカーでのラジオの提供などを促すことで、今後も国内ラジオ局のコンテンツを保護していきたい考えです。
このレポートは、政府の委託を受けて、商業ラジオグループ、英国放送協会、自動車産業の業界団体など、業界の幅広い関係者の協力を得て実施されたもので、聴取習慣の変化や新技術によってラジオサービスが将来直面する可能性のある課題を検討しているとのことです。
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スマートスピーカーでラジオを聴取可能に
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現在市場に出回っている音声起動型スマートスピーカーの95%以上は、アマゾン、グーグル、アップルの3社から発売されているとのことです。Amazon EchoやGoogle Homeなどのスマートスピーカーが、発売されてから5年しか経っていないにもかかわらず世間に広く浸透していることから、同省はこれを利用して、今後もラジオ局の聴取者に国内ラジオ放送を届けていきたい考えです。
レポートでは、これらの技術系プラットフォームが英国のラジオサービスへのアクセスを制限したり、放送局に放送料金を請求したりすることを妨げるものは、現行の規制にはないと指摘されています。
2030年まではFMラジオを継続
その他に、同レポートでは、少なくとも2030年まではアナログラジオの廃止を義務付けるべきではないということが述べられています。今回の調査では、2030年にはアナログラジオの聴取率が全体の12〜14%になると予想されていますが、特にFMラジオは、現在も高齢者や社会的弱者、遠隔地に住んでいる人など、多くのリスナーから高い評価を得ているとのことから、少なくともあと10年は続けるべきであるとしています。
また、全視聴者数の3%にも満たないAMサービスは、ネットワークを二重に運営するコストを考慮して、国内の中波放送を廃止する計画を立てるべきであるということも述べられています。
メディア大臣であるジュリア・ロペス氏は、新しい技術に移行しても、この貴重なメディアが人々に届き続けるように、また、高齢のリスナーや遠隔地の人々を守るために、アナログラジオからの移行は徐々に時間をかけてやっていかなければならない、と述べています。
英国のラジオ放送の今後
現在、英国では、数千のオンライン放送局と300以上のアナログ放送局に加えて、570以上の放送局がデジタル音声放送で聴取可能となっています。ラジオ聴取の約60%は、デジタル音声放送またはその他のデジタル・プラットフォームを介して行われており、レポートでは、2030年代以降もデジタル音声放送がラジオ聴取を支えていくと結論づけられています。また、小規模なデジタル音声放送ネットワークが続々と登場し、ますます多くの小規模ローカル局がデジタル放送を行えるようになっているとのことです。
今後、英国政府はこのレポートの提言を検討しながら、デジタル市場のための新たな競争促進体制を構築していくことになると述べられています。