オーストラリアの小規模出版社18社が「Public Interest Publishers Alliance(公益出版社同盟)」を結成し、グーグルやフェイスブック(現:メタ)との記事使用料支払いに関する契約締結を目指すことを発表しました。
Public Interest Publishers Allianceは、ブリスベンに拠点を置くLGBTIQコミュニティのメディア「Qニュース」や、南オーストラリア州ナラクアトのローカル新聞「ナラクアト・ニュース」など、年間収益が1000万豪ドルに満たない18の出版社で構成されています。
慈善団体による支援を受けるこの同盟は、グーグルとフェイスブックとの商業契約を結ぶために団体交渉を行うものです。
忘れ去られた小規模出版社
オーストラリアでは今年初め、フェイスブックやグーグルといった大手プラットフォームがニュース記事を使用する際の対価支払いについて、メディア企業と交渉することを義務付ける法律「ニュースメディア交渉法(news media bargaining code)」が成立。ニューズ・コーポレーション、セブン・ウェスト、ナインといった、オーストラリアの大手メディア企業らは、フェイスブックやグーグルから数百万ドル規模の記事使用料を受け取ることで合意しました。
しかし、大手企業が一定の成果を挙げた一方、国内の小規模なローカルメディア企業にとって問題は解決していません。
ニュースメディア交渉法は、「『指定されたデジタルプラットフォーム企業』がニュースパブリッシャーにコンテンツの使用料を支払うこと」を義務付けています。しかし、法が成立してからこれまで、実際にどのデジタルプラットフォーム企業が対象となるのかは指定されていません。政府はこの法律を制定したうえで「当事者が規則以外の方法で商業交渉を行うことを奨励する」とし、プラットフォーム企業とメディア企業が個別で契約を結ぶことを期待しています。
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つまり、「ニュースメディア交渉法」は、法制化を強く主張していたニューズ・コープやナインなどの大手企業が契約を結ぶための名目として役割が強いのです。
「Qニュース」のリチャード・バッカー氏は「政府の取り組みは、大規模なニュースメディア企業には有効だったが、小規模な独立系出版社はほとんど忘れ去られている」「専門性の高い独立したジャーナリズムが減ると、情報の信頼性が低下し、その結果、精査や説明責任が果たせなくなる」と問題点を指摘しています。
「オーストラリアン・ルーラル・アンド・リージョナル・ニュース」のフィオナ・フォックス氏は、以下のように述べ、政府の取り組みが不十分であることを批判しています。
「政府は、大手企業がフェイスブックやグーグルから数百万ドルの報酬を得た時点で、仕事は完了したと考えているようだ。そうではなく、オーストラリアにおける独立した公益ジャーナリズムの維持を確保するための本当の仕事は、まだ始まったばかりである」
交渉は成功するか?
オーストラリアのメディア業界に関するSubstackを運営するハル・クロフォード氏は、この団体交渉が同盟に大きな利益をもたらさないだろうと考えているようです。クロフォード氏はプレス・ガゼットの取材に対し、次のように語っています。
「団体交渉は、間違いなく小規模出版社の立場を強めるものですが、それでも依然として弱いままでしょう。なぜなら、結局のところ、ニュースメディア交渉法は大手メディアによる政治的圧力によって生まれたものだからです。その圧力は、大規模なオーディエンスを抱えるからこそ成り立つものですが、同盟の出版社のオーディエンスは小さいのです。」
また、政府が法に従ってグーグルやフェイスブックを「指定」してしまうと、大手メディアとの既存の取引を危険にさらすことになる、と見ています。
ニューズ・コープのような大企業が合意に至ったことで、一見成功したように見えたニュースメディア交渉法ですが、依然問題を抱えていることがわかります。この同盟の動向は、世界中のローカルメディアが注目することで