パブリッシャーが動画コンテンツで成功するためには・・・レポート「Media Moments 2021」

メディア界のニュースや見解を紹介している「Media Voices」と「What’s New In Publishing」は、2021年のメディア業界の動向をまとめたレポート「Media Moments 2021」を発表しました。前回の広告編に続き、今回は動画編をご紹介します。

フェイスブックの告発文書の中で、プラットフォーム上で過剰に動画を配信したことが原因でユーザーが離れていったということが示されていたように、2021年にかけて、動画を過剰に使用することは誤りであったということを示す情報が多く出てきました。それによってパブリッシャーの動画への関心は下がっていきましたが、ショート動画は引き続き視聴者の間で高い評価を得ており、それを専門に扱うプラットフォームが台頭し続けています。

所有権の問題

動画メディアで成功をするためには、制作や配信をいかにコントロールできるかが鍵であるとレポートでは述べられています。2月に「ビッグイシュー」が立ち上げた、ドキュメンタリーシリーズを配信するための「ビッグイシューTV」は、YouTubeやスマートTVのようなプラットフォームでの配信ではなく、独自の定額動画配信(SVOD)プラットフォームに重点を置いているのが特徴です。

クラウドファンディングプラットフォームであるPatreonも、自社の動画製品を管理することに価値を見出しているようです。11月には、同社のCEOが、外部のプレーヤーに依存するのではなく、クリエイターの動画用に独自のネイティブ・プレーヤーを立ち上げることを明らかにしました。また、Spotifyは、依然としてオーディオが中心ですが、YouTubeなどのライバルですでに消費されているポッドキャストコンテンツの割合が大きいことから、ポッドキャスター向けの動画機能を拡張しています。

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英国のオンライン新聞「インデペンデント」は初期の成功に後押しされ、独自の動画への取り組みを加速させています。YouTubeやFacebookなどのプラットフォームでは動画コンテンツに無料でアクセスできますが、インデペンデントでは、自社のプラットフォームが視聴者をその場にとどめ、次の動画を見てもらうのに最も効果的であることを確認するために、多大な時間と資源を投入しているとのこと。マネージングディレクターのクリスチャン・ブロートンは、「作れば売れる」という考え方ではなく、最初から製品にマネタイズを組み込んで、プロセスの早い段階でスポンサーにアプローチしていると述べています。

これらの企業やその他のパブリッシャーは、明確な動画コンテンツの作成と収益化に注力していますが、視聴者数の増加の多くは、Snapchat、TikTok、Instagramなどのソーシャルビデオで起きているとのことです。これらのショート動画コンテンツは継続的に成長し、その結果として企業ブランドやパブリッシャーからの投資も増加したと述べられています。

ワシントン・ポストの動画編集責任者であるミカ・ゲルマン氏は、ソーシャル動画は視聴者をより広いニュースブランドの中に引き込むための誘い水のようなものだと述べています。ほとんどの動画視聴は、YouTube、Facebook、Instagram、TikTokなどで行われるため、最初はワシントン・ポストをよく知らなくても、他のプラットフォームから自社のジャーナリズムを試しに来てくれる人々にリーチすることが非常に重要だと語っています。これは、米国の経営学誌「ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)」が、TikTokとYouTube視聴者を他のコンテンツに引き込もうとしているのと同様のアプローチだそうです。HBRは、動画における取り組みの主要なターゲットは若い視聴者であると語っています

一部のパブリッシャーが、自社が運営するチャネルで長尺のプレミアムコンテンツの作成と配信に注力している一方で、動画プラットフォームは、動画フォーマットを生み出し、若い視聴者をパブリッシャーのブランドに引き戻す上で、依然として大きな役割を担っています。

曖昧な境界線

ソーシャル動画は、ARやXRと切っても切れない存在になりつつあります。ユーザーは、プラットフォームのフィルターやレンズを使って動画を作成していることから、動画制作と仮想空間制作の境界線が曖昧になり、一方に投入されていたリソースが他方に移動する流れになってきそうです。

また、特にライフスタイル系のメディアでは、ビッグイシューのような出版社独自の定額動画配信サービスの立ち上げがさらに進むことが予想されています。多くの雑誌は、まだマネタイズされていない高品質の動画コンテンツを保有しており、他の購読サービスを強化するために再パッケージ化されています。健康やライフスタイルのコンテンツの可能性は広がっており、また高価値の商品に焦点を当てた他の消費者ブランドも、この機会を利用することができると述べられています。

しかし、動画市場の大部分は依然としてプラットフォームに属しています。これらの動画チャンネルが、定額動画配信やその他のサービスと共に、スマートTVやモバイル機器を利用して視聴されるということは、視聴者にとっても、動画制作に慣れたブランドにとっても、それらが依然として有効な選択肢であることを意味するとのことです。何よりも、今後もパブリッシャーは、特にスポンサーからの資金がある場合は、動画に関して試行錯誤を続けていくことが予想されて

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【12月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

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