【メディア企業徹底考察 #64】新聞の紙文化を支えるHOUSEIがこのタイミングで上場する理由

HOUSEI株式会社が2022年6月24日に上場承認を受け、7月28日に上場する予定です。HOUSEIといえば、新聞社や出版社などメディア業界向けのシステムを開発する会社。紙面構成を決める組版システムの提供など、紙文化を下支えする事業を展開しています。 なぜ、このタイミン…

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HOUSEI株式会社が2022年6月24日に上場承認を受け、7月28日に上場する予定です。HOUSEIといえば、新聞社や出版社などメディア業界向けのシステムを開発する会社。紙面構成を決める組版システムの提供など、紙文化を下支えする事業を展開しています。

なぜ、このタイミングで上場を決めたのでしょうか?

M&Aと競合の撤退で業界シェアを高めた

HOUSEIは、中国の商業印刷システムや新聞・出版社向けのシステムを手掛ける北京北大方正集団公司が、日本のマーケットを開拓することを目的として1996年3月に設立。Windows上で使用可能なDTPソフトウェアを日本向けにカスタマイズし、新聞社などへの導入を進めます。

北大方正集団は2020年2月にデフォルトし、1兆2,400億円の資金注入を受けて再建を目指すと報じられました。しかし、HOUSEIは2014年8月に代表取締役社長の管祥紅氏がMBOをしたために資本関係はなく、倒産の影響は受けていません(北大方正集団傘下の北京北大方正電子とは新聞出版印刷システムなどで協力関係にあるものの、協力関係や業務を停止することはないとしています)。

HOUSEIは2005年5月に新聞業界向けシステムを開発する株式会社シスインを買収。2011年1月にモデリスタ株式会社からプリントマネジメント事業を譲受するなど、M&Aでシェアを高めてきました。また、HOUSEIは競合が撤退しているため、新聞業界からの売上は増加傾向にあるとしています。売上高の48%が新聞社と通信社によるものです。

HOUSEIの業績は堅調に推移しています。

■HOUSEI業績推移

※経常利益率の目盛りは右軸

2021年12月期の売上高は前期比20.7%増の41億200万円、経常利益は同5.2%増の2億8,400万円でした。2022年12月期の売上高は前期比9.1%増の44億7,500万円、経常利益は38.0%増の3億9,200万円を見込んでいます。

当面は機関紙による安定収益が見込めるか

HOUSEIの事業は大きく2つに分かれます。1つは情報システム事業。もう1つは越境EC事業です。越境EC事業は2018年6月に設立した子会社24ABC株式会社が運営するもので、中国の消費者向けに日本の製品を販売するECプラットフォームを提供。中国へと販路を広げたい日本の事業者に提案しています。

ただし、業績への貢献度が圧倒的に高いのは情報システム事業です。2021年12月期の情報システムの売上高は前期比20.2%増の40億2,700万円。全体の98.1%を占めています。越境EC事業の売上高は前期比52.6%増の2,500万円となったものの、1,200万円のセグメント損失を計上しています。この事業は会社を支えるものには育っていません。目先は情報システムに注力するでしょう。

HOUSEIの主要顧客は創価学会の機関紙を発行する聖教新聞社。2021年12月期の総販売実績に占める割合は23.4%を占めています。機関紙はその性格上、急激にデジタル化が進むとは考えにくい分野。聖教新聞が中長期的にHOUSEIの業績を支えるのは間違いないものと考えられます。


《不破聡》

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