【メディア企業徹底考察 #99】既存株主はParaviを持て余した?U-NEXTと経営統合する理由

動画配信サービスParaviを運営する株式会社プレミアム・プラットフォーム・ジャパンを、U-NEXTが完全子会社化することで合意しました。プレミアム・プラットフォーム・ジャパンは、2023年3月末を目処にU-NEXTと合併して消滅する見込みです。 プレミアム・プラットフォー…

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動画配信サービスParaviを運営する株式会社プレミアム・プラットフォーム・ジャパンを、U-NEXTが完全子会社化することで合意しました。プレミアム・プラットフォーム・ジャパンは、2023年3月末を目処にU-NEXTと合併して消滅する見込みです。

プレミアム・プラットフォーム・ジャパンの株主は株式会社TBSホールディングスや、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ。今回の買収は、U-NEXT(の親会社USEN-NEXT HOLDINGS)が交渉を有利に進めているように見えます。プレミアム・プラットフォーム・ジャパンは黒字化しておらず、2018年4月のスタートから約5年で有料会員数が85万人に留まっています。フジテレビが運営するFODは2022年11月に有料会員数が100万を突破していました。

Paraviは成長性にも乏しかったことから、TBSやテレビ東京などの既存株主が早期撤退をしたというのが本音なのかもしれません。

純資産額よりも安く買収して負ののれんが生じる見込み

U-NEXTはプレミアム・プラットフォーム・ジャパンの株式の取得費用を65億円としています。プレミアム・プラットフォーム・ジャパンの純資産額は、繰越欠損金を繰延税金資産として計上した場合、95億円になる見込みです。つまり、プレミアム・プラットフォーム・ジャパンは純資産額よりも安く買収しており、差額を特別利益として計上する負ののれんが、株式会社USEN-NEXT HOLDINGSに発生する見込みです。

今回の買収はUSEN-NEXT HOLDINGSとの株式交換で行われるため、U-NEXTは買収資金を用意する必要がありません。

しかも、プレミアム・プラットフォーム・ジャパンと経営統合した後の新生U-NEXTは、2023年4月1日にTBSと博報堂に対して第三者割当増資を実施。TBSに1,251株(2.25%)、博報堂に244株(0.44%)を割り当てて資金を調達します。U-NEXTは、第三者割当増資をする理由として引受先2社との協業関係強化のためとしていますが、増資後もUSEN-NEXT HOLDINGSの持株比率は97.31%であり、圧倒的な支配力は残ったまま。TBSと博報堂は資金を拠出しながらも、わずかな議決権比率を得るに過ぎません。

なお、USEN-NEXT HOLDINGSとプレミアム・プラットフォーム・ジャパンの株式交換比率は1:7.94。交付する普通株式は2,540,800株となる見込みです。プレミアム・プラットフォーム・ジャパンの筆頭株主はTBSで31.25%を保有しています。

今回、株式交換で交付される株式を保有比率に応じて分配すると、TBSはUSEN-NEXT HOLDINGSの株式を79万4,000株保有することになります。TBSが株式交換前にUSEN-NEXT HOLDINGSの株式を持っている様子はありません。

株式交換後のTBSの保有比率は1%程度であり、影響力が持てるわけではありません。そもそも、USEN-NEXT HOLDINGSは創業者・宇野康秀氏が2,700万株、宇野氏の資産管理会社が950万株を保有しており、創業者の圧倒的な支配力が揺らぐことはありません。

■USEN-NEXT HOLDINGSとプレミアム・プラットフォーム・ジャパンの株主

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《不破聡》

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