「エキサイトニュース」や「エキサイトブログ」を運営するエキサイトホールディングス株式会社が、2023年3月15日に上場承認され、4月19日にスタンダード市場に新規上場します。エキサイトは2018年7月に、新規事業の立ち上げ支援やベンチャーキャピタル事業を展開するXTechに買収され、上場廃止となっていました。
XTechは2018年1月に設立されたスタートアップ。エキサイトはインターネットの黎明期を支えた企業の一つです。当時、新興企業が老舗IT企業を飲み込んだとして話題となりました。それから4年半の年月を経ての再上場。エキサイトの業績と事業はどのように変化したのでしょうか。
ポータルサイトの隆盛と衰退
エキサイトは、インターネットナビゲーションサービスを展開するExcite Inc.の日本法人として1997年8月に設立されました。1997年12月にポータルサイト「エキサイト」の提供を開始しています。インターネット利用者の増加、広告市場の拡大とともに成長し、2013年7月にジャスダック市場に上場しました。
2000年代は検索エンジンとポータルサイトが全盛を極めていました。1998年にGoogleが設立され、2000年に日本でサービスを提供します。同じ年に楽天がInfoseekの日本法人を買収しました。Yahoo!Japanはgooの検索エンジンを使っていましたが、2001年にGoogleを採用するなど、各サービスが目まぐるしく変化していました。
Yahoo!Japanは2004年に独自の検索エンジンを開発。Googleとの提携を打ち切りました。Microsoftは2005年にMSN serchの正式版をリリースし、独自の検索エンジンを提供します。
このころ、Yahoo!Japanのように、検索エンジンと様々な情報が得られるポータルサイトを抱き合わせて提供するサービスが数多く登場しました。Infoseek、goo、AOL、So-netなどです。その一角を占めていたのがエキサイトでした。
2007年はアクセス数の国内上位20サイト内、ポータルサイトは8サイト。しかし、YouTubeやFacebook、Twitter、Instagramなど多種多様なサービスが誕生してインターネットの世界も変化します。国内においては、検索エンジンがほぼGoogleに集約され、ポータルサイトはYahoo!Japanの1強状態が確立されました。
エキサイトの広告・課金事業は少しずつ収益性が悪化します。2016年3月期からは3期連続の営業損失となりました。
伊藤忠商事の目論見が外れた
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エキサイトの筆頭株主は伊藤忠商事でした。2社の関係は深く、エキサイトの日本法人を設立したばかりの1997年11月に伊藤忠商事が第三者割当増資を引き受けています。
エキサイトの筆頭株主だったExcite@Homeの経営が悪化すると、保有していた株式を伊藤忠商事に譲渡します。伊藤忠商事は80.66%の筆頭株主となりました。その後、エキサイトは上場します。上場後も伊藤忠商事は大株主として残りました。ここがXTech買収の一番のポイントです。
XTech代表取締役の西條普一氏は1996年に新卒で伊藤忠商事に入社しています。財務部や為替部を経験した後、2000年にサイバーエージェントに移籍。そこでサイバーエージェントFXなど、商社で得た経験とインターネットのノウハウを結び付けた新規事業の立ち上げを行います。
その後、複数社の代表取締役を歴任し、経営の経験も積みました。
XTechにエキサイトの買収を持ち掛けたのは伊藤忠商事。西條普一氏のエキサイト再建計画には非上場化が相応しいと判断し、LBOローンを組んでTOBを仕掛けるというという結論を出しました。新規事業立ち上げ支援を行うデジタルガレージの代表取締役・林郁氏や、みずほキャピタルなどがXTechの再建案に賛同し、55億円での買収が決まりました。
TOBが成立した後の2018年12月、西條晋一氏がエキサイトの代表取締役社長に就任しています。
大企業特有の悪しき組織になっていたエキサイト
非上場化後は目覚ましい業績回復を成し遂げています。2020年3月期に黒字転換に成功。2021年3月期は売上高が前期比19.1%の大幅増を達成しました。2023年3月期の売上高は前期比5.3%増の75億1,000万円を見込んでいます。4期連続の増収です。
エキサイトの売上高は、およそ半分がプラットフォーム事業で構成されています。更に、プラットフォーム事業は、「エキサイト電話占い」や「エキサイトお悩み相談室」の課金型カウンセリングサービスの売上高が、プラットフォーム事業の半分を占めています。
XTech買収後は、WebサイトのUI/UXの徹底的な改善を図って顧客主義に立ち返った他、占い師やカウンセラーを毎月増員し、サービスの向上に努めました。
サービスの基礎を整備した後は、会員獲得のための大々的なプロモーションを実施。会員の増加が増収増益に一役も二役も買っています。
エキサイトは再建を図る前、プロモーション費用の回収期間は、サービスに関係なく一律3か月と決まっていました。XTechはこの仕組みを変更。プロモーション費用の回収期間を、ユーザーの平均利用期間をベースとしてサービスごとに基準を設けました。「広告経由の売上高÷広告費用×100%」で割り出すROASと、「売上総利益÷広告費用×100%」のROIをKPIに導入し、費用対効果を基にした議論ができるようにしました。
プロモーション費用の回収期間を一律3か月に決めてしまうなど、エキサイトは従業員のモチベーションやチャレンジ精神を奪う典型的な大企業病にかかっていたことがわかります。XTechはそこにベンチャー風土を再度根付かせました。
のれんと有利子負債を順調に圧縮
気になるのは、XTechが買収した際に生じたのれんと有利子負債。エキサイトはTOBで7億1,700万円ののれんを抱えることとなりました。総資産の18.6%、自己資本の69.2%を占めています。エキサイトは日本の会計基準を採用しているためにのれんの償却が進んでおり、2022年12月末時点でのれんは5億7,900万円まで縮小しました。
総資産に占める割合は12.4%、自己資本の締める割合は29.2%まで下がっています。安定的に利益が出るようになっていることから、突然のれんの減損損失を計上する可能性は低いと言えるでしょう。また、その額も小さくなっていることから、仮に全額減損しても影響は限定的です。
エキサイトは2020年3月にLBOローンを全額返済し、一般ローンへの借り換えを行っています。有利子負債の総資産に占める割合は42.2%でしたが、2022年12月末には30.4%まで下がりました。
有利子負債を総資産で除した有利子負債依存度は、全業種の平均が30%程度と言われています。エキサイトは標準的なレベルまで下げています。
のれんや有利子負債が経営上の高いリスクになっているとは言えません。
エキサイトの上場時の吸収金額は13億9,000万円。公募が90万株で売出が13万5,000株。非公開後の再上場案件で公募株が多いという珍しいケースです。調達した資金は新規事業の立ち上げに充当するなどとしており、今後の成長にも期待で