20%超の勢いで増収を続けていたベクトルに急ブレーキがかかりました。2021年2月期の売上高は372億7,300万円と、前期比1.2%の微増での着地。営業利益は19.9%減の23億1,400万円となりました。新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言の発令による企業のマーケティング活動の自粛、イベントの中止、タクシー広告の出稿減少を受けて主力のPR・広告事業が落ち込みました。決算報告から、業績と今後の展開を分析していきます。
■ベクトル業績推移(単位:百万円)
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20%超という圧倒的な成長力で売上高を拡大してきたベクトルにとって、コロナによるPRの自粛は大打撃となりました。しかし、PRを軸とする競合他社と比較すると、その影響を小さく抑えていることがわかります。
共同PRの2020年12月期売上高は前期比13.3%減の49億4,900万円でした。営業利益は68.8%減の1億5,600億円とベクトルに比べて減少幅が大きくなっています。2021年12月期も売上高は3.2%増、営業利益は3.9%増と慎重な予想。4月に3度目の緊急事態宣言が発令され、企業のPR活動はまだまだ制限されるとみているのでしょう。
■共同PR業績推移(単位:百万円)
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ベクトルが競合と比較してコロナの影響を軽微に抑えられた背景に、度重なる企業買収や新規事業立ち上げによる事業の多角化が挙げられます。特に2005年12月に100%子会社として創業したPR TIMESが堅調でした。
目次
新常態でプレスリリース需要が急増した2020年
事業別に業績をみてみます。
ベクトルの主力となるPR・広告事業の売上高は前期比9.4%減、営業利益は52.8%減とコロナの影響を大きく受けています。2018年7月に子会社化したあしたのチームも売上高が27.3%減、9億円の赤字と、こちらも落ち込みの激しかった事業です。あしたのチームは、中小企業にクラウド型人事評価制度の導入支援をしています。2020年は商談件数が激減しました。中小企業にとっては新常態で働き方が大きく変わり、人事評価制度の在り方そのものの見方が大きく変化した年です。あしたのチームは、リモートワークが主流となる新しい働き方に沿ったシステムの再構築が必要になりそうです。
■ベクトル事業別業績(単位:百万円)
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2020年で絶好調だった事業がプレスリリース配信サービスのPR TIMESです。売上高は30.3%増、営業利益は132.2%増という驚異的な上昇をみせています。コロナ禍で20%台だった営業利益率は34.6%まで10ポイント以上も増加。ベクトル全体の営業利益の減少幅を前期比20%に抑え込んだ最大の尽力者といえるでしょう。