米バズフィードの方針転換、上場廃止は避けられるか?【Media Innovation Weekly】12/4号

米バズフィードは、ナスダック証券取引所から上場廃止の猶予期間を2024年5月28日まで延期する旨の通知を受け取ったと発表しました。2010年代のデジタルメディアの勃興期に成長した代表企業が岐路に立っています。

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今週のテーマ解説 バズフィードの方針転換、上場廃止は避けられるか?

米バズフィードは、ナスダック証券取引所から上場廃止の猶予期間を2024年5月28日まで延期する旨の通知を受け取ったと発表しました。2010年代のデジタルメディアの勃興期に成長した代表企業が岐路に立っています。

2021年12月にSPACとの合併で上場したバズフィードですが、30営業日連続で株価が1ドルを下回るという上場廃止基準に抵触し、180日間の猶予期間が与えられていました。この期間は11月27日までで、直近も30セント程度で取引されていますが、幾つかの提案が認められ、もう半年の延長が認められたようです。

同社は3階層あるナスダックの最も下のランクであるナスダック・キャピタル・マーケットへの移行すること(最も基準が緩く、比較的規模の小さい企業が多い)、必要に応じて株式併合を行う考えがあることを表明しています(単純に30セントの株を10株併合すると理論上は3ドルになる)。

バズフィードの1日の終値は約4200万ドル(約60億円)です。上場直後は1株10ドルを付けた事もありましたが、苦境にあります。

デジタルメディアの勃興とバズフィードの成長

バズフィード創業者でCEOのジョナ・ペレッティ氏は、アリアナ・ハフィントン氏とハフィントン・ポスト(現ハフポスト)を創業した後に、バズフィードを創業しました。社名のように、インターネットのバズを科学する事を打ち出し、リスティクル(リスト記事)のようなフォーマットをヒットさせました。

特に2010年代にプラットフォームとして急成長したFacebookなどのソーシャルメディアで、バズる記事を大量生産し、膨大なトラフィックを集めてビジネスを拡大させました。2010年代後半は、動画スタジオの設立や、各国版の立ち上げなど積極策を続けました。

一方、Facebookなどのソーシャルメディアではコンテンツの扱いが二転三転して、以前のようなバズを巻き起こすことはなくなりました。ネイティブ広告と並んだ柱の運用型広告でのマネタイズも年々単価が減少し、二重に収益を蝕んでいっています。BuzzFeed Newsもピューリッツァー賞を受賞するような実績も残しましたが、赤字が継続し、部門閉鎖に至っています。

2023年7-9月の業績は売上高7330万ドル(前年同期比-29%)、純損失1390万ドルという結果でした。広告収入が35%減、コンテンツ収入が32%減という散々な結果です。

方向転換は実現するか

その業績発表でペレッティ氏は「トラフィックの大手プラットフォームへの依存を減らし、収益性を改善し、変化するデジタルメディアの新たな現実に対応するため、私達が所有・運営するウェブサイトやアプリに直接トラフィックを誘導することに集中しています」と述べています。

プラットフォームからいかにトラフィックを誘引するかに注力してきた同社にとっては大きな方向転換と言えます。

さらにAdweek https://www.adweek.com/media/buzzfeed-strategic-shift-jessica-probus/ によれば、複数のブランドで集約されたネットワークを重視するのではなく、ブランドごとに編集、営業、技術チームを運営する方向に移行しつつあるということです。同社はBuzzFeedのほか、HuffPost、Complex Media、First We Feast、Tastyといった多彩なブランドを抱えています。

The Media Operatorは、バズフィードの戦略は、個別のブランドを強調するのではなく、ネットワーク全体の成長に注力し、プラットフォーマーや広告主が「協力せざるを得ない規模を獲得すること」だったと指摘します。しかしプラットフォームがコンテンツを必要としなくなり、トラフィックを戻さなくなり、崩壊を迎える事になります。

同じニュースでもBuzzFeedとHuffPostは全く異なる性質を持ったブランドであり、ComplexやTastyのような特定のカテゴリで存在感を持っているブランドを抱えている事を考えれば、ごちゃ混ぜにするのではなく、それぞれの価値を磨いていく戦略は十分に取り得ます。ただ、企業文化を変えるのは容易ではなく、十分な時間が残されているかは不明瞭です。

※12/4 22:30 ジョナ・ペレッティ氏のハフポスト退職はAOLへの売却前である点、初期の収益源は運用型広告ではなくネイティブ広告であった点、BuzzFeed Newsの立ち上げは2010年代後半ではなかった点、事実誤認がありましたのでお詫びして訂正いたします。

◆ ◆ ◆

11月もメディア企業のレイオフの話題でいっぱいでした。

ワシントン・ポストは希望退職を募っていますが、2週間以内に更に120人が退職に応じなければレイオフを実行するとCEOが述べました。B2BメディアのRecurrent Venturesは少なくとも18人をレイオフしました(アクシオス)。Viceは事業再編を通じて100名未満が職を失いました(Deadline)。ケーブルネットワークのDishは最大20%の従業員をレイオフしました(Code Cutters News)。

他方、先日お伝えした、G/O Mediaが閉鎖を決定した女性向けメディアのイゼベルはペースト・マガジンが買収を発表し、閉鎖から1ヶ月で再開される事が決定しました(New York Post)。捨てる神あれば拾う神あり、ということで嬉しいニュースですね。

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編集部からひとこと

まずいですね、もう12月です。忘年会シーズンという感じがしてきました。

Media Innovationでも13日(水)にプチ忘年会を企画しました。手違いで販売チケット数を極小にしてしまっていたので、もしかすると売り切れで買えなかった方がいらっしゃるかもしれませんが、在庫復活しておりますので、再度ご確認いただけますと幸いです。ぜひ交流を深められればと思います!

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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