【メディア企業徹底考察 #1】Quartzの大失敗で65億円の赤字、それでもユーザベースが評価される2つの理由

ユーザベースは2020年12月期で64億7,200万円の純損失(前期は16億2,000万円の赤字)を計上しました。上場以来最大の巨額損失を計上した直接の原因は米経済メディアQuartz買収の大失敗によるもの。82億5,000万円で買収したQuartzののれん78億1,000万円を減損損失として計…

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ユーザベースは2020年12月期で64億7,200万円の純損失(前期は16億2,000万円の赤字)を計上しました。上場以来最大の巨額損失を計上した直接の原因は米経済メディアQuartz買収の大失敗によるもの。82億5,000万円で買収したQuartzののれん78億1,000万円を減損損失として計上したのです。ユーザベースは、Quartzをアメリカでの成長の足掛かりとする計画でしたが、買収からわずか2年で全面的に撤退することとなりました。

その経営責任をとって代表取締役CEOだった梅田優祐氏は取締役に降格。梅田氏とともに共同代表として事業を推進していた稲垣裕介氏がCEOに昇格しました。また、B2B事業の責任者を務めた佐久間衡氏もCEOに就任。稲垣・佐久間体制のもとでどのような成長戦略を描くのでしょうか。

新型コロナウイルスでQuartzの売上は1/3に縮小

まずはユーザベースの業績からみてみます。2021年12月期からQuartzの業績が外れますが、売上は前期比13.0%増の2桁増収を見込んでいます。営業利益の回復が目覚ましく、今期は10倍以上の14億円で着地する見込みとなっています。営業利益率はQuartz買収前の2018年12月期の8%台後半まで戻しています。一時的に痛みを伴う売却となりましたが、再び利益が出る体質となりました。

■ユーザベース業績推移(単位:百万円)

ユーザベース決算短信より筆者作成

ここで買収したQuartzの業績を見てみます。買収当初から営業利益が出ておらず、ユーザベースにとっては重荷になっていたことがよくわかります。そして2020年12月期は売上が激減。半期で5億4,400万円となりました。これは新型コロナウイルスの感染拡大で米企業のクライアントが広告の出稿を抑制したことが原因です。売上は1/3ほどにまで縮小してしまいました。

■Quartz業績推移(単位:百万円)

Quartz事業からの撤退より筆者作成

Quartzは2012年に誕生した新興経済メディア。広告と有料会員サービスで事業を構築していましたが、盤石な経営基盤を備えたメディアには育っていませんでした。スタートアップ特有の利益が出にくい段階でユーザベースが買収し、コロナで激変した事業環境に耐えられなかったことになります。長期的にも業績が回復する見込みは立たず、早期売却へと至りました。

Quartz買収の失敗によって巨額損失を計上したユーザベースですが、市場の受け止め方は好意的です。現在、PERは145倍で推移しています。投資家や金融機関向け情報を提供するミンカブ・ジ・インフォノイドが118倍、フィスコが42倍です。PERは株価を1株利益で除したもので、値が高い方が割高と判断されます。すなわち、ユーザベースは競合と比較して評価が高いことを表しています。

市場から高評価を得ている理由は2つあります。1つはSPEEDAとNewspicksが安定的に成長していること。もう1つは資本政策が極めて巧みで、財務状況が安定していることです。

NewsPicksが事業別売上でトップに


《不破聡》

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