「音声」を活用してニュースルームがエンゲージメントを高めるための4つの方法

米ミズーリ大学のレイノルズジャーナリズム研究所は現地時間9月16日、ニュースルームが音声を活用してエンゲージメントを高めるための4つの方法を紹介しました。「音声レビューの活用」「ボイスメモによる専門家からの意見の獲得」「オーディエンスからの質問などの募集」「音声のみのイベント開催」に大別されています。

同研究所が公表した4つの方法の詳細は次のとおりです。

1.音声レビューの活用

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2019年末、英BBCラジオの代表的な映画番組「カーモード・アンド・マヨズ・フィルム・レビュー(Kermode and Mayo’s Film Review)」は、映画を見た感想を30秒の音声にまとめて送ってほしいとリスナーに呼びかけ、その中から選ばれた感想を放送しました。

リスナーに呼びかけたFaceBookの投稿(レイノルズジャーナリズム研究所の発表より)

最近では、新型コロナウイルスのロックダウンにより映画館に行く機会が減ったため、BBCラジオでは、自宅で見られる映画についてのコメントをリスナーに求める形式に変更しています。

このような音声レビューの活用は、ラジオ番組やポッドキャストにだけ適用できるのではありません。様々なトピックについてオーディエンスから寄せられた音声レビューをSNSやウェブサイトに掲載するなど、ニュースルームでも取り入れられます。

2.ボイスメモを活用して専門家からの意見を得る

ボイスメモを活用することで、意見を聞きたい相手が急いでいるときやほかの用事があるとき、電話やインターネットの接続状況が悪いときなどに役立ちます。ポッドキャスト番組「ザ・ライターズ・コープ・ポッドキャスト(The Writers’ Co-op Podcast)」の共同司会者であるジャーナリストのウーダン・ヤン氏は、Eメールでのインタビューに代わる手段としてボイスメモを使用できると述べています。

ウーダン・ヤン氏のTwitterの投稿(レイノルズジャーナリズム研究所の発表より)

ボイスメモは迅速かつ簡単に作成でき、結果的により新鮮な情報を得ることにつながります。ロードアイランド州にあるロジャーウィリアムズ大学のベルナルド・モッタ助教授は、Otter.aiのようなテープ起こしアプリを使えば、回答を入力する時間を短縮できると提案しました。さらに、ボイスメモを活用することで、従来のインタビュー方式を気に入らずインタビュー自体を敬遠していた人のアクセシビリティと参加率を高めることにもつながります。

3.オーディエンスに質問や反応を求める

メグナ・チャクラバルティ氏が司会を務めるラジオ番組「On Point」は、非営利公共放送グループのアメリカン・パブリック・メディアにより全米240局以上に配信されています。この番組では、ボイスメールやソーシャルチャネルでの参加をオーディエンスに積極的に呼びかけています。2021年1月には、米国のトランプ前大統領の支持者による連邦議会襲撃に関するリスナーからのメッセージをもとに、5分間の特別ポッドキャストを公開しました。

ここ半年程の間では、テレビ番組とポッドキャストの両方の機能を持つBBCの「Americast」が、リスナーが質問を投稿して司会者がそれに回答する「アメリカンアンサー(Americanswer)」と呼ばれる取り組みを実施しました。アメリカンアンサーでは、音声を含む複数の手段で応募でき、送信した音声が番組で使用される可能性もあります。

リスナーに質問を呼びかける投稿

4.音声のみのイベント開催

新型コロナウイルスのパンデミックにより、ニュースルームではオンラインイベントを開催する機会が増えたものの、Facebook LiveやZoomなどの画面越しの会話における疲労感は深刻な問題になっています。そこで、ClubhouseやTwitterの「スペース」などのプラットフォームで、音声のみのイベントを開催できるようになりました。

これによりニュースルームは、既存オーディエンスとつながり、新規オーディエンスを惹きつける新しい方法を手に入れました。オーディオはマルチタスクに最適で、動画と違い片耳で聞くことも可能です。イベントの音声はポッドキャストとして再利用・配信することもでき、エンゲージメントの機会をさらに増やせます。

また、米ニューヨーク大学のジェイ・ローゼン教授は、オーディエンスがニュース速報で注目する傾向のある写真や動画を活用するのも効果的だが、それだけでは不十分で、現時点では音声が十分に使われていないことが多いとの見解を示し

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Yuka Hirose
Yuka Hirose
ライター・翻訳者。大学で工学を学び精密機器メーカーで勤務ののち、2020年に独立。群馬県出身。

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