「古本市場」を運営する株式会社テイツーの業績が絶好調です。2022年2月期第3四半期の売上高は前期比5.4%増の189億5,200万円となりました。第3四半期の営業利益は前期比3.3%減の8億5,700万円となったものの、2022年2月期通期は前期比2.2%増となる9億5,000万円の営業利益を予想しています。
■テイツー業績推移(単位:百万円)
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リユース市場は比較的堅調です。リサイクル店を運営する株式会社トレジャー・ファクトリーは2022年2月期の売上高を前期比20.8%増の226億3,600万円、営業利益を652.2%増の8億400万円と予想しています。しかし、テイツーが特徴的なのは、競合他社と比較して営業利益率が圧倒的に高いことです。
■リユース企業直近通期営業利益率の比較
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テイツーの2021年2月期の営業利益率は3.7%、ブックオフグループホールディングス株式会社が2.1%、ブックオフのフランチャイジーである株式会社ありがとうサービスが2.4%、トレジャー・ファクトリーが0.6%です。
ただし、テイツーの営業利益率はもともと高かったわけではありません。2021年2月期から急伸したのです。
■テイツー営業利益率推移
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2020年2月期は1.2%でしたが、わずか1年で2.5ポイント上昇しています。
テイツーは、2020年6月に株式会社山徳を完全子会社化していました。 山徳はトレーディングカードやアイドルグッズを、「ebay」を通して海外100カ国以上に販売しています。ECで販売チャネルを拡大したのです。
この記事ではテイツーが買収に至った背景や事業内容、経営戦略を解説します。
目次
売上高から利益重視の経営スタイルに転換
古本市場は1989年岡山市に誕生しました。郊外のロードサイド型を得意とし、業績を拡大してきました。2008年2月期には現在の2倍近い450億円の売上がありました。このころはソフトを主体としたゲームが主流で中古市場は活況でした。2011年5月に「探検ドリランド」の前身となる「トレジャーハンター」がグリー株式会社からリリースされました。2012年2月にガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社がパズル&ドラゴンズを配信して大ヒットしました。このころから、ゲーム機とソフトの組み合わせよりもスマートフォンを中心としたダウンロード型の方が主流となります。
ゲーム販売への依存度が高かったテイツーは、業績悪化を前にしてインターネットカフェ「アイ・カフェ」を出店して事業を多角化。しかし、競合他社の相次ぐ参入によって経営状態が厳しくなり、2011年5月インターネットカフェ事業を同業の株式会社カジ・コーポレーションに売却しています。
売却後は売上よりも利益を重視するようになりました。テイツーは2018年2月期の売上高が前期比0.7%、2019年2月期が18.2%、2020年2月期が6.8%それぞれ減少しています。しかし、営業利益率は2018年2月期の0.6%から1.2%へと段階的に改善しています。このころ、利益率の高い古本を中心に本業立て直しに邁進しており、それがしっかりと数字に表れたと言えるでしょう。
テイツーはかつてEC事業を強化した時期がありますが、利益率が悪かったことを理由に、2018年2月期に撤退しました。ECは店舗運営にかかる賃料や人件費、電気代などの固定費がかからないため、利益率が高いと思われがちです。しかし、物流網を構築して安定的に商品を提供するためのコストは莫大です。また、中古市場に限らず競合店が多く、消費者は比較検討が容易なため、価格競争に陥りやすい特性があります。利益率を重視していたテイツーが撤退するのは当然でした。事実、撤退後の営業利益率は上昇しています。
Webマーケティングこそが重要となるEC事業
テイツーの藤原克治社長は、「(買収した)山徳社はマーケティング力に非常に長けた集団で、私は社内的には彼らは頭脳集団と評価しているのですが、当社が失敗して不採算事業だったEC事業は彼らの功績で利幅が高くなり、そちらが反映されています」と個人投資家向けのセミナーで語っています。実店舗を得意とするテイツー、ECを得意とする山徳がそれぞれの強みを活かすことができました。
売上高から原価を除いた売上総利益率(粗利率)は、買収後に大幅に改善されています。
■営業利益率の内訳(単位:百万円)
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