【メディア企業徹底考察 #60】AViC(エイビック)の新規上場はベンチャー投資の新たな形となるか?

インターネット広告とSEO支援の株式会社AViCが2022年5月27日に上場承認を受け、6月30日にグロース市場に上場します。 AViCは投資ファンド株式会社ミダスキャピタルの傘下にあり、その恩恵を受けて急成長している会社です。 ミダスキャピタルのスキームは、金融機関など…

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インターネット広告とSEO支援の株式会社AViCが2022年5月27日に上場承認を受け、6月30日にグロース市場に上場します。 AViCは投資ファンド株式会社ミダスキャピタルの傘下にあり、その恩恵を受けて急成長している会社です。

ミダスキャピタルのスキームは、金融機関など外部の資金を募ってファンドを組成する従来の投資ファンドと異なり、創業者や経営者が大半の資金をミダスキャピタルが組成したファンドに出資。出資後も継続的に筆頭株主として経営し、ミダスキャピタル傘下の企業群とのネットワークを活用しつつ成長させるという特異な手法をとっています。AViCのIPOはその好例と言える内容です。

投資ファンドともベンチャーキャピタルとも違う投資スタイル

AViCは2013年7月に設立された風外堂株式会社が前身。この会社はネット型リユース事業の株式会社BuySell Technologiesの代表取締役社長・岩田匡平氏の配偶者が設立したもの。2014年4月に岩田氏が全株を取得しました。同時にOWL株式会社へと社名変更しています。このころの主力事業はマーケティングコンサルティング業でした。 岩田氏は株式会社博報堂出身であり、自身の得意分野を生かしたベンチャー企業向けのマーケティング支援を行っていました。

2018年3月に現在のAViC代表取締役社長である市原創吾氏を割当先とした第三者割当増資を実施しています。岩田氏は2016年6月にBuySell Technologiesのコンサルティングを開始しており、2016年10月には取締役として経営に参画していました。

岩田氏はBuySell Technologiesの経営に集中するため、半ば事業承継のような形でAViCの経営を市原氏に任せ、エグジットを見越して株式を継続的に保有したものと考えられます。岩田氏は2017年10月にBuySell Technologiesの代表取締役社長に就任し、2019年12月にマザーズ市場(現:グロース市場)に上場させました。なお、ミダスキャピタルの出資1号案件はBuySell Technologiesです。

市原氏はサイバーエージェントの広告部門出身。経営を引き継いだ後は、デジタルマーケティングへと事業内容を変更します。広告運用とSEOコンサルティングサービスという2つの柱で事業を推進しました。

AViCの有価証券報告書では、ファンドの存続期間が2018年9月から2038年3月までとなっていることから、AViCの経営者が市原氏に切り替わった2018年にミダスキャピタルの出資を受けたものと考えられます。

通常、投資ファンドは資産運用会社などから資金を募ってファンドを組成し、その資金をもとに企業を買収。買収した企業の価値を高めて別の投資ファンドや事業会社に転売するか、IPOでリターンを得ます。超過収益分が投資家に還元される仕組みです。

しかし、ミダスキャピタルはスキームが全く異なります。ミダスキャピタルがファンドを組成するところまでは他の投資ファンドと同じですが、主な出資者はAViCの経営者である市原氏と創業者である岩田氏。市原氏はファンドを通して44.07%、岩田氏は27.80%の株式を保有しています。

■AViCの主な株主(上場前)

ファンドに出資をした市原氏と岩田氏は、株式を売却したことによる超過収益の10%を成功報酬としてミダスキャピタルに支払うという契約を結んでいます。

投資ファンドが出資をする際、対象企業の経営基盤を強固なものにするために役員を送り込むことがあります。しかし、ミダスキャピタルからAViCに派遣された役員はいません。

株式の売却時に手数料を徴収され、経営支援も受けられない。それであれば、ミダスキャピタルが組成したファンドなどに出資をせず、単独で株式を持ち続けた方が合理的だと思うかもしれません。

ポイントはミダスキャピタル傘下にある企業群のネットワークを活かせるというところです。


《不破聡》

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