「日経電子版」が成功した2つの理由とは?日経新聞・東氏に聞く

Media InnovationはメディアのDXについて考える「Media DX Conference 2022」を10月14日に開催します。本イベントに登壇する、日本経済新聞社の東氏に「日経電子版」の立ち上げから、どうして日経がデジタル変革に成功したのかについて聞きました。イベントの詳細はこち…

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Media InnovationはメディアのDXについて考える「Media DX Conference 2022」を10月14日に開催します。本イベントに登壇する、日本経済新聞社の東氏に「日経電子版」の立ち上げから、どうして日経がデジタル変革に成功したのかについて聞きました。イベントの詳細はこちらから(入場無料)

日本経済新聞社は2010年に有料サブスクリプション型の「日経電子版」を立ち上げて、デジタルシフトを推し進めてきました。新聞の発行部数が減少する一方で、デジタルの会員数を増加させる事に成功しています。

なぜ日経は日本の中でもいち早く有料課金のビジネスに乗り出し、成功を収める事ができたのか。「日経電子版」の立ち上げ当初から携わってきて現在は企画や戦略を取り仕切る、日本経済新聞社 デジタル編成ユニット 企画グループの東弘行氏にお話を伺いました。

東 弘行
株式会社日本経済新聞社 デジタル編成ユニット 企画グループ
2005年に日本経済新聞社へ転職。エンジニアとして、2008年から日経電子版の立ち上げメンバーとして、編集システム(CMS)などを開発。2010年のローンチ後は、電子版アプリやスマホサイト、紙面ビューアーアプリなどプロダクトの企画開発を手がけてきた。近年は、日経電子版の戦略立案などを担当。

―――ご経歴を伺えますでしょうか?

前職は大日本印刷で、2005年に日本経済新聞社に転職してきました。もともとエンジニアでインターネットのメディア構築や運用などの仕事をしていて、メディアにとても興味があったので中途の募集を見て転職してきました。最初は「NIKKEI NET」の運用サポートのような業務から入りましたが、2007年に新しい電子版に取り組むための準備室が立ち上がり、そこにアサインされました。

―――そこで「日経電子版」が生まれるわけですね

課金のサービスを始めるということだけが決まっていて、準備室には色々な部署からメンバーが集まって企画を議論していきました。私は技術部門でしたので、データベースの設計や業務設計、CMSや業務システムなどを担当しました。紙面ビュアーのようなものも構想段階からあり担当しました。実際の創刊は2010年3月23日でした。

―――2007年に準備室が立ち上がって、2010年に創刊なので、かなりの時間をかけたローンチだったのですね

実は準備室の前には、編集者が1,2年間デジタルを経験しようという取り組みもやっていて、当時の「NIKKEI NET」ではないサイトを立ち上げて、そこでデジタル経験を積んでから、「日経電子版」に取り掛かりました。コンテンツ、プロダクト、それから戦略と、あらゆる事を議論していて、終盤の意思決定会議は何時間もかけて議論をしていました。

これだけ時間をかけられたのは経営層が絶対にデジタルの課金サービスを立ち上げると腹を括っていたというのが大きいと思います。でも社内では必ず失敗すると言われてました(笑)。

―――新聞社による課金のサービスは必ずしも成功例ばかりではありません。その中で、失敗すると言われていたのを跳ね除けられた理由はどこにあると考えますか?

色々な要素があリます。コンテンツの進化や運用体制の構築などはもちろんですが、ひとつは開発を内製化したことだと思います。創刊直後に上司だった渡辺洋之さん(現・専務取締役CDIO ライフ&キャリアビジネス/情報サービス統括)から「iPhoneが絶対くるからスマホ版をやるんだ」と言われて、アプリ開発を担当しました。当初は外部の協力会社に委託する形だったのですが、どうもスマホの進化スピードについていけないということで、内製化に舵を切っていきました。

もう一つはFTの買収です。彼らはそもそも紙の部数が少なく、日経よりも先行してデジタルの課金ビジネスに成功していました。プロダクトの面でも、データ活用の面でも一歩先を行ってましたし、競合のウォール・ストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズなどを観察していて、彼らを通じてグローバルなメディアの在り方を会得できたと思います。率直な意見も沢山もらって、社内を大きくデジタルに動かしていく原動力になったと思います。

―――非常に納得感がありますね。それに加えて経営層の意思も大きいのでしょうか?

そうですね。伝統的に、上の人の思い切りの良さが日経にはあるのかなと思っています。「日経電子版」も腹を括ってやるんだ、という経営の意思がなければ実現不可能でした。これはDXを考える上でも重要な事だと思います。

また、コンピューターでの組版も日本の新聞社で一番早く開始しましたし、日経テレコンのサービスなど、テクノロジーに対しても積極的な社風は昔からありました。

なにより、経済・ビジネスが主戦場なので、ビジネスパーソンがiPhoneを使うようになる、インターネットが社会を変えていく、こういった事が自然と感じられたというのも大きかったと思います。

―――今後のチャレンジを教えてください

紙の部数は減っていきますので、デジタルで利益を確保するというのが私のミッションです。そのために必要なのはいかにメディアパワーを確保していくか、です。読者の方の可処分時間をどういただくか、会員の方のアクティブ率を上げてどう習慣化してもらうか、こういった事に取り組んでいます。

また、日経は伝統的に外部にコンテンツを出さない方針でやってきて、それが、独自コンテンツがあるという魅力に繋がってきたと思います。一方で、新しいお客さんとのタッチポイントには弱みがあります。YouTubeやTikTokなど新しいチャンネルはすぐにコンバージョンに繋がるわけではありませんが、将来を見据えて戦略的に取り組んでいく必要があると思います。

(10/16 20:50アップデート 最終段落が誤った内容が掲載されていました。お詫びして訂正いたします)

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Media DX Conference 2022 sponsored by pasture

・主催 Media Innovation (株式会社イード)
・協賛 pasture (エン・ジャパン株式会社)
・日時 2022年10月14日(金) 14:00~17:00 @ オンライン開催
・参加費 無料(要事前登録)
・会場 Zoomによるオンライン開催

当日のスケジュールや登壇者のプロフィールなどは特設サイトをご覧ください。

※参加にはMedia Innovationの会員登録(無料)が必要です

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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