【メディア企業徹底考察 #87】SEOが武器のオープンワーク、転職市場でも少ない広告費を維持できるか?

転職者に向けた会社の口コミメディア「OpenWork」を運営する株式会社オープンワークが、2022年11月14日に上場承認を受け、12月16日にグロース市場に新規上場します。想定価格は1株2,920円。合計17億5,100万円を調達する予定です。

調達した資金は人材強化と広告に充当し、事業を拡大する計画です。主力となるOpenWorkの伸びは限定的であり、今後の成長を担うのは転職を希望する人材に企業側がアプローチする「OpenWorkリクルーティング」になるでしょう。

オープンワークは利益率の高い会社ですが、中長期的には利益率の低下に苦心する可能性があります。

就職氷河期の終焉とともに誕生したOpenWork

オープンワークは2007年6月にヴォーカーズとして設立されました。2019年5月にオープンワークに社名変更し、メディア名もVorkersからOpenWorkに代わりました。会社の口コミメディアの登場は、転職市場が求職者にとって有利になっていることを如実に示すものです。

1992年から2000年代前半は就職氷河期と呼ばれ、有効求人倍率が1を下回る年が続いていました。企業側(買い手)に有利な時代でした。多くの求職者は会社や仕事を選ぶことができず、買い手有利の市況は労働環境が悪化するブラック企業の温床となります。

就職氷河期が終結を迎えたのが2005年。1月に有効求人倍率が1.01倍となって13年ぶりに求人が求職を上回りました。2006年からは一転して求人倍率が上昇し、売り手有利な市場となります。オープンワークの前身となるヴォーカーズの誕生は2007年。絶妙なタイミングでのスタートでした。

会社の口コミサイトの誕生により、求職者は会社の内情や待遇など実際の労働環境を知ることができます。採用市場は透明性が高まり、双方向でのマッチングが成立する世界となりました。

40億円超で持ち株を売却した創業者の手腕

創業者は増井慎二郎氏。パソナで事業開発を行った後に電通デジタルに移籍。2002年に金融業界の転職に特化したアンテロープキャリアコンサルティング株式会社を設立しました。2007年にヴォーカーズを立ち上げています。

オープンワークは2018年10月に経営コンサルティングを行う株式会社リンクアンドモチベーションに第三者割当増資を実施しました。

更に2020年1月にリンクアンドモチベーションが株式を追加取得して連結子会社化(2022年11月14日時点での保有比率56.98%)しました。このとき、増井慎二郎氏は保有していた163万株を40億7,500万円でリンクアンドモチベーションに売却しています。

増井慎二郎氏は、2021年9月にもリンクアンドモチベーションに20万株を5億円で売却しています。上場前の増井慎二郎氏の保有比率は32.77%です。

オープンワークの現在の代表取締役社長は大澤陽樹氏。2009年にリンクアンドモチベーションに入社し、第三者割当増資をした2018年10月にオープンワークに出向しました。2020年4月に代表に就任しています。

2021年12月期の売上高に当たる売上収益は、前期比5.1%増の15億3,500万円。経常利益は同36.1%増の3億2,400万円でした。2022年12月期の売上高は前期比28.3%増の19億7,000万円、経常利益は同69.4%増の5億4,900万円を予想しています。

※経常利益率の目盛りは右軸

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2020年は求人数が大幅に減少しました。パーソル総合研究所は、2020年11月の転職者の求人倍率が1.79倍となり、前年同月比で1.02ポイント下がったと報告しています。

※パーソル総合研究所「今後の労働市場動向について」より

オープンワークもこの影響を大きく受けていますが、2021年に入ってから緩やかに回復し、2022年からは再び成長軌道に乗りました。

[MMS_Paywall]

伸びしろが失われた口コミメディア

オープンワークの事業は大きく3つに分かれています。

・口コミメディア「OpenWork」
・求職者に対して応募勧誘のスカウトメールが送れる成果報酬型の「OpenWorkリクルーティング」
・社員の口コミデータをヘッジファンドなどに提供する「その他サービス」

事業別の売上高の推移を見ると、OpenWorkリクルーティングに力を入れているのがわかります。2022年12月期3Qのリクルーティングの売上高は2億4,300万円。前年同期間は1億3,000万円でした。1.9倍に跳ね上がっています。

オープンワークは上場後、リクルーティングに力を入れるとしています。しかし、この領域に力を入れると利益率が抑え込まれる可能性があります。

オープンワークの2022年12月期第3四半期の営業利益率は31.8%。この分野の競合で、口コミメディア「転職会議」を運営する株式会社リブセンスの同期間の営業利益率は6.6%でした。

リブセンスは市場が過熱しているアルバイト向けの求人も手掛けているので単純な比較はできないものの、オープンワークの利益率の高さには目を見張るものがあります。

実は2社で大きく異なるのが広告宣伝費。

リブセンスの2021年12月期の広告宣伝費は15億6,700万円で、売上高の37.5%を占めています。その一方でオープンワークの同期間の広告費は1億8,400万円。売上高の12.0%に留まっています。

費用対効果を引き上げている主要因がSEOでしょう。OpenWorkは採用が売り手市場に変化する2007年からメディアをスタートしていました。転職会議の本格リリースは2011年12月です。OpenWorkは先行者利益が働いたものと考えられます。メディアの名前を変更してもドメインがvorkersになっていることからも、SEOを重視していることがわかります。

「企業名+転職」で検索をかけると、トヨタ自動車で3位、マッキンゼーで2位、Googleで4位に表示されるなど、転職関連の良質なキーワードを獲得しています。これが収益の源泉になっていると考えられます。

OpenWorkは求職者の有料登録と、提携しているサービス企業からの紹介料の2つが収益源。SEOで上位表示ができている限り、一定の求職者が常に流入し、提携サービスへの送客が可能です。

しかし、OpenWorkリクルーティングに注力するとなると、求人を出している企業にピンポイントで求職者を送り込む必要があります。そうなると、SEOではなく別の広告で求職者をサービス内に呼び込み、マッチングしなければなりません。主なターゲットは、転職を希望する会社や業種が決まっておらず、漠然と転職を希望している人や現在の職場に不満を持っている人になるでしょう。

そうなると、コンバージョン率が低いディスプレイ広告や、サービスの認知拡大を目的とした公共交通機関、テレビ広告に頼らなければなりません。広告費が増加し、利益を圧迫する要因になるはずです。

上場後は利益と広告費の難しい舵取りが要求さ

2,779ファンいいね
226フォロワーフォロー
2,463フォロワーフォロー

【12月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

最新ニュース

関連記事