オーストラリアの市長、ChatGPTのコンテンツへ世界初の名誉棄損訴訟の準備・・・内部告発者を犯罪者扱い

昨年11月、メルボルンの北西120kmに位置するヘップバーンシャーの市長に選出されたブライアン・フッド氏は、2000年代初頭にオーストラリア準備銀行の子会社が関与した外国人贈賄スキャンダルにおいて、ChatGPTが自分を有罪として偽りの名前を出したと選挙民から聞いたこ…

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昨年11月、メルボルンの北西120kmに位置するヘップバーンシャーの市長に選出されたブライアン・フッド氏は、2000年代初頭にオーストラリア準備銀行の子会社が関与した外国人贈賄スキャンダルにおいて、ChatGPTが自分を有罪として偽りの名前を出したと選挙民から聞いたことから、不正確な情報で、自分の評判が汚されることを懸念しているといいます。実際、フッド氏は、自分が刑務所に入ったことがないだけでなく、そもそも贈収賄の目星を付けた内部告発者だと主張しています。

フッド市長は、OpenAIのChatGPTが、1999年から2004年にかけて起こった、オーストラリア準備銀行の事業体であるNote Printing Australiaに関わる贈収賄事件で有罪となった中にフッド氏が含まれていると主張した後、同様の告発を一般市民から聞かされました。実はその内容は事実と全く逆でした。フッド氏はオーストラリア準備銀行の子会社のNote Printing Australiaで勤務していたものの、通貨印刷契約を獲得するために外国公務員に賄賂を支払ったことを当局に通知した人物であり、罪に問われることはなかったと代理人弁護士は述べています。

弁護士によると、3月21日にChatGPTのオーナーであるOpenAIに懸念の書簡を送り、OpenAIに28日以内に誤りを修正するよう求め、そうでなければOpenAIに対して名誉毀損訴訟の可能性に直面するよう伝えたといいますが、今の所、サンフランシスコに本社を置くOpenAIからフッド氏の法的書簡への返答はないとのことです。

オーストラリアの地方市長は、ChatGPTが贈収賄で服役していたという虚偽の主張を訂正しない場合、OpenAIを訴えるかもしれないと述べていて、その場合は自動テキスト生成サービスに対する初の名誉毀損訴訟となります。オーストラリアの名誉毀損による賠償金は、一般的に40万ドル(269,360米ドル)程度が上限とされています。フッド氏は、支払額の決定要因である、彼に関する虚偽の情報にアクセスした正確な人数を知ることは出来ませんでしたが、中傷の性質から20万ドル以上を請求できるほど深刻であると代理人弁護士は述べています。

代理人弁護士のジェームス・ノートン氏は、「IT分野における人工知能や出版という新しい分野にこの名誉毀損法を適用するという意味で、画期的な出来事となる可能性があります」と述べています。それも「彼は選挙で選ばれた公人であり、彼の評判は彼の仕事の中心的役割です。」「フッド氏が、企業の不正行為に光を当てたという公的な記録を頼りに、自分の選挙民がこの資料にアクセスすることとは大きな違いです。」と述べています。

もしフッド氏が訴訟を起こせば、ChatGPTが脚注を付けないことでユーザーに誤った正確さを与えていると非難するだろう、とノートン氏は言いいます。そもそもアルゴリズムがどうやってその答えを導き出したのかということを、背景情報を持って知ることは非常に難しいからです。当然、次に誰が同じように誤情報の被害に遭うのかも分かりません。

《前田邦宏》

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前田邦宏

メディアイノベーション見習いスタッフ。海外調査の最新動向を担当。分野を問わず、調べ物が好き。

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