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今週のテーマ解説 AIの検索統合がメディアのトラフィックを大きく低下させる恐れ
米国アーカンソー州を拠点にし、2つの週間新聞を発行しているヘレナ・ワールド・クロニクルは、グーグルが反競争的な手段でパブリッシャーのコンテンツ、読者、広告収入を吸い上げているとしてワシントンDCの連邦地方裁判所に提訴しました。同社はサーチ・ジェネレーティブ・エクスペリエンス(SGE)やBardなどのAI技術が事態をさらに悪化させていると主張しています(TechCrunch)。
訴訟では最新のAI技術だけでなく、2012年から開始されたナレッジグラフ(検索結果の右側に企業名や人物名などの要約が表示される)もメディアのコンテンツを不当に利用することで構築されたと指摘。さらに、ウェブページから答えを抽出する強調スニペットなどもメディアのトラフィックからシフトさせるための仕組みだと述べています。
ウォール・ストリート・ジャーナルがSimilarWebのデータを元に検証したところ、グーグルはパブリッシャーにとって最大のトラフィック源で、実に40%ものトラフィックを依存しているということです。その上で、SGEが広範囲に適用されることになれば、グーグルからのトラフィックの20-40%が失われるだろうと指摘しています。
例えば、オンラインメディアの「アトランティック」がグーグルを検索に統合した場合にどうなるかをモデル化したところ、75%の確立で、AIがウェブサイトへのクリックを必要とせず、ユーザーの検索に答える事が分かったそうです。
グーグルの競合であるBingはOpenAIへの大規模な投資を活かして、検索結果に大胆にAIを取り入れています。この事が検索シェアに与える影響は小さいようですが(JBPRESS)、グーグルとしては対抗上、AIを取り込んでいくことに積極的にならざるを得ません。
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違う視点ですが、そもそもグーグル検索が適切な答えを返すものではなくなっている、という指摘もあります。The Vergeは、検索結果は「ゴミ」「悪夢」「本物とは思えない」といったものになっていて、その理由の一つに、高度に発展したSEOが結果を歪めている事を挙げています。さらにAIによる生成が低品質のコンテンツの量産を助けていますが、グーグルは十分に対処できていないようです。
グーグルは依然として検索エンジンとしての圧倒的なシェアを保持していますが、巷でよく言われるように、人々はグーグルではなく、YouTubeで、Twitter(X)で、TikTokで、Instagramでコンテンツを検索するようになっています。誰もがグーグルを使い、知識を探すための統一プラットフォームだった時代が終わり、分断化されたプラットフォームの時代になっています。自分たちが作ったコンテンツをどう届けるか、コンテンツにあった手段を模索する重要性が高まっているのでしょう。
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編集部からひとこと
先週の忘年会イベントにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。初めましての方も多く、新たな発見がありました。パブリッシャーだけでなく、メディアに携わる人の幅広いコミュニティになっていければと思いました。