GMV増加でnoteの営業利益が2倍に拡大、ココナラの株式取得で新たな展開にも期待【メディア企業徹底考察 #274】

noteの業績が堅調に推移しています。

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GMV増加でnoteの営業利益が2倍に拡大、ココナラの株式取得で新たな展開にも期待【メディア企業徹底考察 #274】
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note株式会社の業績が堅調に推移しています。

2025年11月期上期(2024年12月1日~2025年5月31日)は2割の増収で、営業利益はおよそ2倍に急拡大しました。2Q単体(2025年3月1日~2025年5月31日)のGMV(流通総額)は前年同期間比で2割増。Googleとの資本提携後はGMVが力強く伸びており、‎Geminiとの連携は奏功しているように見えます。

noteは2025年4月にココナラの株式を取得して筆頭株主となりました。新たな展開にも期待ができます。

5四半期連続で黒字化を達成

2025年11月期上期の売上高は前年同期間比22.0%増の19億7,000万円、営業利益は同95.7%増の2,300万円でした。今期通期の売上高を前期比21.1%増の40億1,000万円、営業利益を同13.5%増の6,000万円と予想しています。売上高の進捗率は49.1%。2024年11月期の通期予想に対する上期の進捗率は48.6%でした。堅調に推移しています。

決算説明資料より筆者作成(noteは2024年11月期第1四半期から連結決算)

noteの売上を支えているのがGMV。2025年11月期2QのGMVは52億500万円で、前年同期間比24.7%の増加でした。Googleとの資本提携を行ったのが2025年2月。GMVは2025年11月期1Q(2024年12月1日~2025年2月28日)に18.2%伸びました。2024年11月期に40億円台前半で停滞気味だったGMVがいっきに動いた瞬間でした。

決算説明資料より筆者作成

すでに上場している日本企業がGoogleから資金調達を行ったのはこれが初めて。Googleは第3位の株主です。生成AI技術の活用が提携の主な目的であり、noteは執筆支援機能として‎Geminiを搭載しました。これにより、文章の微妙なニュアンスを瞬時に変更するなど、ライティングにおける面倒な作業負担の軽減を図っています。情報を発信する側は執筆活動を続けやすくなったのです。

‎Gemini搭載後のnoteのテイクレート(プラットフォームの利用手数料)は17%前後で、ほとんど変化していません。つまり、ユーザーは徴収額が変わらないまま、利便性が向上したことになります。Googleは‎noteというプラットフォームから大量のテキストデータを吸い上げることができるはずで、‎Geminiの精度向上を図ることができます。それが結果としてnoteの収益性の向上に寄与しており、出資しているGoogleにとってもプラスに働くという好循環を形成しています。

ココナラ創業者から株式を譲受したことは何を意味するのか?

noteが利益を出した2024年11月期2Q単体の営業利益率は2.6%。2025年11月期2Qは1.8%でした。売上高は24.9%増加していますが、利益率は落ちています。これは主に人件費負担が重くなっているため。前期は利益を出すことを重視し、人員を抑制していました。2024年11月期2Qの人員数は154人で、前年比で29人少なくなっています。一方、2025年11月期2Qは165人。15人増加しました。

noteは金融・投資情報メディア「noteマネー」や、クリエイターの製作物を出版・配信プラットフォームなどに売り込みを行う「Tales & Co.」の立ち上げなど、新規事業に力を入れています。守りから攻めの経営局面に入っており、増員はその姿勢が形になったものと言えるでしょう。Googleからの出資を受けたnoteは、経営スタイルそのものが大きく変化したのです。

そうした中で発表したのが株式会社ココナラの株式の取得でした。9.3%を取得してnoteが筆頭株主となったのです。

株式を譲渡したのはココナラを創業した南章行氏。国内の有力な独立系投資ファンドであるアドバンテッジパートナーズを経て、ココナラの前身となる会社を立ち上げました。2020年に代表取締役会長に就任したものの、2025年1月に取締役を辞任しています。突然の退任の背景に、会社側は役員規定とコンプライアンス規定への違反があったと発表しました。

ポイントは個人の持株がnoteに譲渡されていること。Googleのような第三者割当増資ではありません。noteとココナラは、協業を推進して「新たな価値創出に取り組んでまいります」とコメントしているものの、どれだけの熱量で取り組みを進められるのかは不明確。少なくとも、Googleとの協業のようなスピード感には欠けるでしょう。

ただし、noteとココナラは事業シナジーが高そうな会社です。ココナラはスキルを取引するプラットフォームで、出品者はマーケティングや翻訳、就職サポートなど様々な無形商材を販売することができます。しかし、ココナラはマッチングサービスのため、出品者は基本的に依頼が入るのを待つことしかできません。もちろん個人的にnoteで情報を発信することができるものの、サービスは完全に分断されています。

noteとココナラの協業が進んでお互いがシームレスに繋がるようになれば、ココナラの出品者は潜在的な顧客を獲得するため、note活用への意識が高まります。ココナラの出品者は、noteという別の収益源を得ることができるかもしれません。

今回の株式の譲渡は南章行氏個人が行ったことですが、然るべき会社に移った印象があります。

IP創出企業になれるか?

足元で注目したい事業がTales & Co.。シナリオライターの丸戸史明氏がnoteで発表していた「今さらですが、幼なじみを好きになってしまいました」は、漫画版としてカドコミで連載を開始しています。

Talesは「小説家になろう」や「アルファポリス」のような小説投稿サイトとしての役割とはやや異なります。アプリゲーム『ヒプノシスマイク -Dream Rap Battle-』では開発元のオッドナンバーからシナリオ制作を受注しているように、コンテンツを作って世に送り出すためのサポート全般を担っています。その分、小説やマンガ、ゲームなど、柔軟な動きができると言えるでしょう。

noteは毎年「創作大賞」を実施しており、受賞した作品は書籍や映像化されています。このような取り組みから大ヒット作が生まれれば、IPの創出には弾みがつくはず。そして、ヒットIPを持つことは業績に大きなインパクトを与えます。「薬屋のひとりごと」が大ヒットしたIMAGICA GROUPがそうでした。

中長期的な取り組みとして期待ができます。

《不破聡》

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