イノベーション理論の歴史…「メディアのイノベーションを生む50の法則」(#02)

シュンペーターから始まったイノベーション理論の研究

Key Words
〇イノベーション=新結合
〇イノベーションの5つの定義
〇創造的破壊

イノベーションとは新結合=新しい組み合わせ

イノベーションとは何なのでしょうか。

「イノベーション」を世界で最も初めに理論化した学者は、ヨーゼフ・シュンペーターです。オーストリア・ハンガリー帝国の経済学者であるシュンペーターは、1912年、自身の著書『経済発展の理論』の中で、イノベーションとは新結合だと説きました。 

シュンペーターは、「新結合=新しい組み合わせ」こそがイノベーションであり、イノベーションがもたらす劇的な変化こそが経済発展の主要因となるとしました。 

シュンペーターは著書の中で、「過去の経験や知識を探るだけでは、なかなか良い商品・サービスは生み出せません」「もう一つ、大局的な創造力・提案力が必要です」と言い、駅馬車から汽車への変化のように、徐々に進展していく変化ではなく、非連続的に劇的に進歩する経済発展を後押しするもの、それがイノベーション=新結合であると、重要性を説きました。

新結合の5つの定義とアントレプレナー

シュンペーターはさらに、新結合の定義として、以下の5つのパターンを定義づけました。

  1. 新商品の開発――今までにない新しい製品やサービスを開発して、市場に投入すること。
  2. 新しい生産方法の開発――新たな生産ラインやバリュー・チェーンなど、新たなプロセスを生み出すこと。
  3. 新市場や販売先の開拓――既存市場のプレイヤーが参入しなかった新たな市場を創り出すこと。
  4. 原料などの新たな供給源の獲得――商品やサービスの元となる原材料や供給ルートに変革をもたらすこと。
  5. 新組織の実現――自社内や他社協業を問わず、今までにないチームを組織すること。 

これらのイノベーションを起こす起業家のことをシュンペーターは「アントレプレナー」と呼び、「イノベーションを遂行する当事者」であるアントレプレナーと普通の経営者とは全く違うとしている。 

また「イノベーション」と「アントレプレナー」と「銀行」が、経済発展を導く大切な3つの要素だと説いています。 

シュンペーターはさらに、イノベーションを妨げるハードルを、以下の3つにまとめています。

  1. 過去に体験や経験したことよりも洞察力や先を見通す力を必要とするが、体験や経験に頼りがちになってしまうこと
  2. 今までに立証や実証がされていない、まったく新しいことを始めることの困難や難しさ
  3. 今までにない新しいことを始めるがゆえに受ける、社会からの抵抗や人からの批判。

これらのハードルを乗り越えることができるアントレプレナーが、イノベーションを起こすとシュンペーターは伝えています。

資本主義の本質をなす「創造的破壊」

シュンペーターは、経済活動の中で、古く非効率なものを破壊し、イノベーションによって新しいサービスや商品を創造していく過程を「創造的破壊」と呼びました。この創造的破壊こそが、資本主義経済の本質をなし、これは人口増加や気候変動などの外部環境の変化から生まれるものではなく、アントレプレナーが起こす企業内部の変化から生まれるものだとシュンペーターは述べています。 

以降、イノベーションの研究は100年以上も続き、たくさんのイノベーターたちを世に排出するきっかけとなりました。

イノベーションをマネジメントするドラッガーの理論

Key Words
〇マーケティングとイノベーション
〇イノベーションをもたらす7つの領域
〇イノベーションの「成功条件」と「べからず」

マーケティングとイノベーションの顧客創造

『マネジメント』で有名な経営学者・ドラッガーは、企業が顧客を創造するために必要な機能は、「マーケティング」と「イノベーション」の2つしかないと記しました。マーケティングにより顧客が持つニーズに応えることは顧客の創造に寄与するし、イノベーションにより今までになかった価値を創造することで、顧客を作り出すことができるとしています。このマーケティングとイノベーションの両方をマネジメントしていくことにより、顧客を創造し続けていけるとドラッガーは伝えています。

またイノベーションを行う組織には、以下の共通した特徴があると言います。

  1. イノベーションの意味を知っている
  2. イノベーションの力学を理解している
  3. イノベーションの戦略を持っている
  4. 管理的な目標や基準とは別に、イノベーションのための目標と基準の必要を知っている
  5. マネジメント、特にトップマネジメントの果たす役割と姿勢が違う
  6. イノベーションのための組織は管理的な活動のための組織から独立させている

イノベーションとは、科学や技術そのものではなく、新たな価値や富や行動を生み出すものである。

イノベーションの機会をもたらす7つの領域

さらにドラッガーは、イノベーションの機会をもたらす7つの領域を、下記で説明しました。

  1. 予期せぬ成功と、予期せぬ失敗、外部の予期せぬ変化を利用する。それらにしっかりと気づき、分析する。
  2. ギャップを探す。業績のギャップ、認識のギャップ、価値観のギャップ、プロセスのギャップ。
  3. ニーズを見つける。プロセスのニーズ、労働力のニーズ、知識のニーズ。
  4. 産業構造の変化を知る。急速な成長、産業の規模が二倍になるとき、技術が合体したとき、仕事の仕方が急速に変わるとき。
  5. 人口構造の変化に着目する。
  6. 認識の変化をとらえる。
  7. 新しい知識を活用する。

数字が小さい方が、イノベーションの確率が高く、リードタイムも短いとドラッガーは言っています。そして、①~④は内部環境、⑤~⑦は外部環境にかかわるという構造になっています。

イノベーションを起こしうるタネは、自社にも社外にも、市場にも業界にも、様々なところに眠っており、企業努力によってイノベーションは起こすことができるとドラッガーは伝えています。

3つの成功の必要条件と3つの「べからず」

イノベーションを成功させるために必要な条件が3つあると、ドラッガーは言っています。

  1. イノベーションは、集中しなければならない。どんなイノベーターも、異なる分野で同時にイノベーションを行うことはない。
  2. イノベーションは、強みを基盤としなければならない。
  3. イノベーションは、経済や社会を変えなければならない。

さらにイノベーションの「べからず」についても、ドラッカーは語っています。

  1. 凝りすぎてはならない。成果は普通の人間が利用できるものでなければならない。
  2. 多角化してはならない。散漫になってはならない。 
  3. イノベーションを未来のために行ってはならない。現在のために行わなければならい。

シュンペーターが提唱したイノベーションを、ドラッガーは体系的に経営に取り込み、マネジメントの一機能として位置づけました。

クリステンセンが確立した破壊的イノベーション理論

Key Words
〇イノベーションのジレンマ
〇破壊的イノベーション
〇イノベーターのDNA

持続的イノベーションと破壊的イノベーション

クリステンセンはハーバード・ビジネス・スクールの経営学者で、イノベーション研究の学者の中でもっとも有名だと言っても過言ではありません。クリステンセンは、初めての著書『イノベーションのジレンマ』にて、破壊的イノベーション理論を確立させました。

イノベーションには「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2つがあると、クリステンセンは述べています。

  • 持続的イノベーション――すでにある商品やサービスを、より優れた性能やより使いやすい内容に改良していくもの
  • 破壊的イノベーション――すでにある商品やサービスほど優れてはいない性能の商品を売り出すことで、シンプルで使いやすく、安い価格のため、その市場を破壊するもの。こういった商品が新しい市場や下位市場でいったん認められると、そこから性能や品質の向上が始まり、既存市場でも認められ、既存の市場を破壊するというもの。

さらに破壊的イノベーションには、「新市場型破壊」と「ローエンド型破壊」の2種類があります。

  • 新市場型破壊――「無消費顧客」という今までその製品やサービスを購入していなかった層を新たに取り込む方法
  • ローエンド型破壊――安ければ性能がシンプルだったり悪くても購入する既存の顧客層を取り込む方法

中核事業や成熟事業には、こういったイノベーションにより新しい顧客を取り込んでいかなければいけないということです。

イノベーションのジレンマ、その失敗の理由

ではイノベーションのジレンマとは何なのでしょうか。イノベーションのジレンマとは、業界の偉大なトップ企業が、顧客の意見に耳を傾け、新技術に投資をしていても、「正しく行うが故に」イノベーションが生まれずに、市場で失敗してしまうというものです。なぜでしょうか、とても矛盾しているように感じますが、さまざまな業界でイノベーションのジレンマが起きています。

失敗の理由として、クリステンセンは以下の3つを挙げています。

  1. 「持続的技術」と「破壊的技術」は戦略的に重要な違いがあるということ。「持続的技術」は製品の性能を高めるものに対し、「破壊的技術」とは、少なくとも短期的には製品の性能を引き下げる効果を持つイノベーションだからです。
  2. 技術の進歩のペースは、市場の需要が変化するペースを上回ることが多いから。技術アプローチの関係性や競争力は、時間とともに変化します。
  3. 成功している企業の顧客構造と財務構造は、新規参入企業とは違うため。安定した企業が破壊的技術に投資するのは合理的でないと判断し、タイミングを見逃してしまうからです。 

優良な企業が、優良がゆえにユーザーの声を聞きすぎて、その声を商品やサービスに反映し、収益性のある事業に集中的に投資して「正しい経営」をするがあまり、企業の衰退に導いてしまうというショッキングな内容です。

イノベーターが活用する4つの行動スキル

クリステンセンは著書『イノベーションのDNA』の中で、破壊的イノベーターは次の4つの行動スキルを頻繁に活用していると述べています。

  1. 質問力
  2. 観察力
  3. ネットワーク力
  4. 実験力

破壊的イノベーターは、現状に異議を唱えたりリスクを取るなどイノベーションに取り組む勇気があり、上記の4つの行動スキルを活用し、斬新なインプットを組み合わせることによって、革新的なビジネスアイディアを生んでいると、伝えています。

(以下、第3回に続く)

メディアのイノベーションを生む50の法則

第1回:メディアの変遷と未来
第2回:イノベーション理論の歴史
第3回:「左脳」×「普遍性」
第4回:「右脳」×「普遍性」
第5回:「左脳」×「時代性」
第7回:その他の領域 part1
第8回:「左脳」×「普遍性」 part2
第9回:「右脳」×「普遍性」 part2

第10回:「左脳」×「時代性」 part2
第11回:「右脳」×「時代性」 part2(10/19ごろ公開)
第12回:その他の領域 part2(10/26ごろ公開)

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出村大進http://networkingevent.sakura.ne.jp/wp/
株式会社小学館マーケティング局。 毎月開催するメディア・マスコミ業界中心の勉強会&交流会「一冊会」を主催。 早稲田大学大学院経営管理研究科卒業。石川県生まれ。

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