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左脳×普遍性から考えるpart2…「メディアのイノベーションを生む50の法則」(#08)

【法則16】マーケティング発想がメディアの新たな顧客創造と価値を生む

Key Words
〇4P
〇価格弾力性
〇マーケティング4.0

マーケティングミックスがメディアを強くする

新たな顧客を創造するためには、マーケティングの発想は欠かせません。ドラッガーは、企業が顧客を創造するために必要な機能は、「マーケティング」と「イノベーション」の2つしかないと記しています。「マーケティングの狙いは販売を不要にすることだ」とも述べており、マーケティングを駆使すれば、製品やサービスがひとりでに売れると伝えています。

「良いコンテンツを作れば、ユーザーは自然とついてくる!」や「時代の先を作る我々は、お客の意見を聞いていてはいけない」、さらには「顧客のために作るのではなく、文化のために作るのだ」と考えているマスコミの方は多くいますが、顧客発想のマーケティングにはイノベーションのタネが多く埋まっているので、ぜひ紹介したいと思います。

マーケティングとは、顧客のニーズを察知して、そのニーズを満たすために製品やサービスを提供し、自社の利益を上げる一連のプロセスのことを指し、よく「4P」などのフレームワークで表現されます。

  • 製品 Product
  • 価格 Price
  • プロモーション Promotion
  • 流通 Place

これらの4つのプロセスを顧客目線に立ってミックスして行うことがマーケティングであり、決して宣伝だけや販売だけのことをマーケティングと呼ぶのではありません。ニーズに沿った製品を作ることも、マーケティングの一部なのです。コンテンツを作る部署とマーケティングの部署がまるで別会社のように離れているメディア企業には、この4Pマーケティングの発想が足りていないように感じます。

出版社を例に挙げてみます。コンテンツの力が強かった時代は、マーケティング発想の「製品」作りというよりは、作家や編集者が面白いと思う本作りがメインでした。「価格」も、ニーズやウォンツに応えてではなく、原価の積み上げや過去の実例に合わせたもので計算をしています。「流通」も書店一択で、新たな流通先の開発はほとんどしていません。「プロモーション」も読者のニーズにこたえてというよりは、前もって決められた予算を消化する感じでしょうか。

しかし、メディアの力が弱くなっている今、しっかりと顧客目線に立ったマーケティングに変えていかなければいけませんし、今までマーケティングやビジネスに疎かったメディア業界だからこそ、新たなイノベーションの可能性が埋まっていると感じています。

価格弾力性でメディアユーザーのニーズを反映

特に4Pの「価格」に関しては、メディア業界ではマーケティング発想が特に必要だと感じています。漫画と言えばだいたいいくら、単行本と言えばだいたいいくらと、出版物の価格はマーケティング発想で決まっているというよりは、原価の積み上げで決まっていることが多くあります。

しかし、需要の価格弾力性から考えると、コンテンツ力の強いメディアの製品はもっと価格にユーザーのニーズを反映させるべきです。価格弾力性とは、価格を上げたり下げたりする変化率に対し、需要がどれほど変わるかの比率のことです。ミネラルウォーターなどのライバルが多い商品は、価格を少し上げただけで需要が大幅に減ります(弾力性が大きい)し、唯一無二の商品であれば価格を大きく上げても需要はあまり減りません(弾力性が小さい)。

漫画のコミックスや単行本などの価格弾力性が小さいものは、価格弾力性をしっかりと計算し、もっと価格に反映するべきだと感じます。さらに出版物は、雑誌の付録やコミックスの特典などを付けて、付加価値を付けて価格弾力性を小さくすることがしやすい製品でもあります。

マーケティングの対象は自己実現へと拡大

時代の移り変わりとともに、マーケティングも形をどんどんと変えていっています。現代マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラー教授は「マーケティング4.0」を発表し、マーケティングの4段階の変化を説明しています。

  • マーケティング1.0――1900〜1960年代。産業革命。生産主導、製品中心のマーケティング。
  • マーケティング2.0――1970〜1980年代。情報技術。消費者志向のマーケティング。
  • マーケティング3.0――1990〜2000年代。ニューウェーブの技術。社会貢献、価値主導のマーケティング。
  • マーケティング4.0――2010年代〜。デジタル時代。顧客の自己実現をかなえるマーケティング。

「より安くすれば売れる」とマス市場に対して大量に製品を供給していた「1.0」から、商品も情報も十分に行きわたり、売り手主導から買い手主導に変化した「2.0」、さらに製品の機能的・感情的充足だけでなく、社会貢献などの精神的充足を求める「3.0」、顧客の自己実現をかなえる「4.0」と、マーケティングも時代とともに変化を続けてきました。

メディアのコンテンツが、作り手主導のマーケティングを行っているのであれば、「1.0」のまま止まっていることになります。顧客のことをしっかりと考えた「2.0」へ、さらには社会貢献やユーザーの自己実現をかなえる「3.0」「4.0」のマーケティングへ進化していくことを願っています。

【法則17】5フォースで外部環境を分析し業界全体からイノベーションを生む

Key Words
〇5フォース分析
〇競争要因から戦略立案

5つの競争要因から未来の戦略を立案する

メディアのビジネスモデルは何十年から何百年も変わらずに続いてきました。そうなると、関係各社や競合もマンネリ化していて、新しい発想や着眼点が生まれにくくなっています。どこにイノベーションのタネが眠っているのか、現在の環境の変化を考えるために5フォース分析は非常に助けになります。

5フォースとは、企業の外部環境を分析する際に使うフレームワークで、業界の競争状態を左右するものを「5つの要因」に分けて、分析していく手法です。35歳という最年少でハーバード・ビジネス・スクールの教授となったマイケル・ポーターが、著書『競争の戦略』の中で理論を提唱し、広く知れ渡りました。

民法放送局を5フォース分析してみましょう。

  • 競争要因1:新規参入――プラットフォーマー、GAFA、Netflix、DAZN、など
  • 競争要因2:売り手――コンテンツホルダー、番組制作会社、タレント事務所、など
  • 競争要因3:買い手――広告主、視聴者、など
  • 競争要因4:代替品――SNS、Youtube、ネットニュース、など
  • 競争要因5:競合――NHKを含めなければ、放送免許を持つ民法5社しかない

【新規参入】の環境変化は、言わずもがなですが、激動といっていいでしょう。AmazonPrimeやNetflix、DAZN、ディズニープラスにとどまらず、U-NEXTやdTVなど、国内外の強力な企業が新規参入をし、業界に脅威を与えています。

そうなると【売り手】の環境も変化し、漫画原作を持つ出版社や、番組制作プロダクション、タレント事務所などは、どこの企業と組むのが一番いいのか、交渉をしてきます。現に、Netflixが高額で漫画原作権を購入したり、ディズニーが有力映像制作会社を買収したりしています。

【買い手】も費用対効果を鑑みて広告を出稿するため、高額だったテレビ提供だけでなく、ネット広告も含めて選択肢を増やして選び始めました。テレビ広告費は2007をピークに下降傾向で、代わりにインターネット広告費がテレビ広告費を抜いて、四マス媒体の広告費でトップになりました。

【代替品】も、SNSの映像やYoutube、ネットニュースに視聴時間を取られていますし、これからはVRコンテンツなども脅威になってくるでしょう。

【競合】も、huluの日本事業を日本テレビが買収したり、サイバーエージェントのAbemaTVとテレビ朝日が共同事業を開始したり、NewsPicsのユーザベースがTBSと資本業務提携を実施したりするなど、ネット企業との提携合戦が激化しています。

民法放送局の勝ち筋とイノベーションのタネ

すべての5要因において脅威にさらされている激動のテレビ業界ですが、勝利の道筋はどこにあるのでしょうか。私は下記に勝ち筋とイノベーションのタネが眠っていると考えています。

  • 4K8K
  • 5G
  • グループ会社の強み
  • 海外輸出
  • テレビ版radiko
  • VR

いまだコンテンツ産業で市場規模が一番大きいのは、動画の「テレビ放送・関連サービス」です。そのコンテンツ力を生かし、さらに8Kや5G、VRなどの新技術で発展させ、スマホ視聴者や海外の人に届けることができれば、まだまだテレビ局はコンテンツ企業として拡大していけると考えています。

【法則18】データ・ビジネスを組織まで落とし込み新たなマネタイズを生む

Key Words
◯データ・マネタイズ・マトリクス
〇5つのマネタイズ方法
◯集計からToDoまでワンストップ

メディア企業が活用しやすいデータ・ビジネス

続いて、左脳×普遍性の最終項として、データの活用による事業開発やマネタイズについてご紹介します。

メディアはこれまで長い間、コンテンツや記事を活かしてユーザーや読者を集めて、そのユーザーにコンテンツで課金をしたり、広告にしたりと、スキームを活かしてビジネスをしてきました。このビジネス・スキームは、主戦場がオフラインの本やパッケージから、オンラインのデジタルデバイス環境に移ってきた昨今も、まったく変わりません。これまでリアルでおこなってきた読者アンケートやタイアップ広告、調査などと同じように、記事やコンテンツに紐づく様々な情報をデジタルでもリアルでも収集でき、さらにコンテンツ課金や広告も、デジタル・リアルの両面で活用できるようになりました。デジタルが発展した今だからこそビジネスがしやすい時代になったと言え、メディア企業こそデータ・ビジネスをフルに活用できる業種と言えます。 

ではメディア企業は、どのようなデータを収集=インプットして、どのように活用=アウトプットしていけばいいのでしょうか。近年、データ・ビジネスの領域は分かりやすく体系化されていますので、要点を押さえてすぐに使えるようなフレームワークをご紹介します。

メディアのデータ・マネタイズ・マトリクス

まずはどのようなデータを収集すればいいのか、「データを取る」そして「取ったデータを使わせてもらう」対象を考えます。利用したいデータが何かをおさえていくということです。

  • 1つ目は、メディア内のユーザーの会員情報や個人情報です。この場合のユーザーとは会員システムやファンクラブ、読者会、モデルやインフルエンサー、有識者など集めているユーザー情報全てを指しています。そのユーザーの情報を活かしたマネタイズを考えていくわけです。
  • 2つ目は、コンテンツです。メディアの場合は記事やコンテンツのデータそのものや記事を利用して取得できる情報です。
  • 3つ目は、ビジネスPVやトラッキング数といったそのメディア内のアクセス情報や部数であったり、購買履歴、デジタルメディア内で取れる情報のどれを使うかを考えていきます。
  • 4つ目は、イベントや紙での読者アンケートなどリアルで取れる情報です。メディア企業によっては、最後のリアルの部分で催事の場所であったり実店舗等を持っている会社さんもいらっしゃると思いますので、その場合は細分化して考えることができるでしょう。

メディア企業が活用できる5つのマネタイズ方法

次にデータをどのように活用すればいいのか、アウトプット方法を考えます。データのマネタイズ方法は、既に定式化されています。

  • 1つ目は、内部施策としてのメディア内企画およびキャンペーンです。こちらは厳密には運営の中で行うグロース施策に当たるので事業ではありませんが、活かすことで更にユーザーを増やしたりアクティベーションを高めたりしてそのメディアの価値を上げていくということです。
  • 2つ目は広告です。アドネットワークやセグメント配信のサービス、メルマガやプッシュなどデータを活かした皆さんにもなじみのある広告ビジネスです。データが取れる対象からできる新商品がないか今一度検討してみるのはいかがでしょうか。
  • 3つ目は横展開です。タイアップ広告ではない取材記事を企業へ広告利用の目的で貸与したり、実際の映像や音声などではカットだった部分を再編集してSNSに出したり、そういった本丸の運営の中で出てきた資産を、そのまま他のチャネルや企業へ渡すことでデータ・ビジネスをしていくということを指しています。近年では、ノアドットなど記事の提供環境を整えることで、その記事をキュレーション的に配信できるようにするだけでマネタイズができる場合があります。
  • 4つ目は、インタビューおよび調査、コンサルティングです。これらは性質が違うものに見えますが、ユーザーまたは記事取材を通して取得したデータからわかる情報を更に分析して、その示唆でマネタイズを行っていくというものです。海外では既にそういった最新のデータやトレンドを専門で情報提供するイノベーションリサーチの企業が多数存在しており、それに記者がリサーチャーを兼任して、情報提供をしていることが多々ございます。
  • 5つ目は、新規事業およびサービス開発です。データを分析して出した示唆やそれを活かして、事業開発を行っていくということです。一般化するのは難しいですが、読者の情報を使って新しい事業やメディアを開発したり、その情報を活かしたファンドビジネスもできたりするかもしれません。別の業界やサービスにいくこともあるのでスキル面での補填が必要になる側面はあるかもしれませんが、メディアで集めているデータを新しい事業のために有効に使っていくことができるでしょう。

これらのインプット4つとアウトプット5つをマトリクスにして、一つ一つの方法を考えたり、さらにその手段同士をつなぎ合わせたりすると、新規事業や新しいマネタイズ方法が生まれてきます。

データ・ビジネスのための分析のコツ

データを活用するときは、インプットとアウトプットを掛け合わせて、どういったデータ・ビジネスができるか手段を選んでいくことが重要だと分かったと思います。しかし、闇雲にその手段を実行すれば成果が得られるかというと、そういうわけではありません。データ・ビジネスの成功のポイントは、「最初の集計から、示唆を出して、打ち手を考え、最後に実行するまで、いかに揃えるか」です。

お金になるデータの分析は、次の流れがワンストップで揃っていることが重要です。

  • 【STEP1】集計(データを集めて、表やグラフなどに落とす)
  • 【STEP2】結果(集計したデータの上下や傾向などをそのまま明文化する)
  • 【STEP3】原因(データの結果を分析して要因を明らかにする)
  • 【STEP4】仮説(原因を基に改善したり、活用したりする仮説を構築する)
  • 【STEP5】打ち手(その仮説にフィットする施策案を出す)
  • 【STEP6】実行計画(打ち手を実施に落とす)

例えば、あるビジネス系のメディアが、「読者」に「WEBアンケート」を実施して、そのデータを「経済調査パネル」にして、調査会社と業務提携をしてマネタイズをしたいと考えたとします。ただ、そのビジネス系メディアの組織の中に、集計したデータをしっかり管理できる人や部署がなかったら、パートナーとなった調査会社は不安になります。さらに、仮にメディア側でデータ集計ができて、その結果がある程度可視化できたとしても、それが何の役に立ってどれくらい意味があるか理解していないと、調査会社側から今度はもし貴重なデータが集まっていても足元を見られることもありうるかもしれません。

このようにデータ・ビジネス事業を考える上でも、【STEP1】~【STEP6】を組織内でワンストップでできる知識を、最低限整えていく必要があります。

では、難しいデータサイエンスを内製化する必要があるのかというと、そういうわけではありません。基本的なExcelでの集計と関数の一部さえ使えれば何も問題ないですし、多変量解析までできたらむしろ充分すぎるでしょう。自社のマーケティング用であったり、純粋な基礎数学向けのものが多いですが、基本的な書籍も多数出ていますので、そういったもので勉強しておくだけでだいぶ要点が押さえることができます。

こういった体系立てて考えることができにくいデータの取得環境や、そのデータ・ビジネスに対してアレルギーを持ってしまわないような組織風土を作っていき、この最初から最後の工程までをデータから導き出して行うことが、データを生きた資産にするキーになります。

メディアの性質とデータ・ビジネスとの相性

メディアがこれまで長い間で作り上げてきた、コンテンツとユーザーを生かしたビジネス・スキームこそ、主戦場がオンラインのデジタルデバイス環境に移ったとしてもまったく変わりませんし、むしろデータがとりやすくビジネスもしやすい時代になりました。

今こそ、改めてデータを集めて、その上で展開する事業やサービスを、今回の法則に沿って今一度作りだせないか考えてみるのはいかがでしょうか。

(以下、第9回に続く)

メディアのイノベーションを生む50の法則

第1回:メディアの変遷と未来
第2回:イノベーション理論の歴史
第3回:「左脳」×「普遍性」
第4回:「右脳」×「普遍性」
第5回:「左脳」×「時代性」
第7回:その他の領域 part1
第8回:「左脳」×「普遍性」 part2
第9回:「右脳」×「普遍性」 part2

第10回:「左脳」×「時代性」 part2
第11回:「右脳」×「時代性」 part2(10/19ごろ公開)
第12回:その他の領域 part2(10/26ごろ公開)

以下、続く。

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出村大進http://networkingevent.sakura.ne.jp/wp/
株式会社小学館マーケティング局。 毎月開催するメディア・マスコミ業界中心の勉強会&交流会「一冊会」を主催。 早稲田大学大学院経営管理研究科卒業。石川県生まれ。

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