各国のインド大使館が拡散する「偽ファクトチェックサイト」の正体

5月28日、フェイクニュースに関する調査を行うDFRLabは、カナダ拠点のPR会社 PressMonitorが運営する偽ファクトチェックサイトIndia Vs Disinformation (IVD)の記事が、各国のインド大使館のSNSアカウントを通じて拡散されていることを報告しました。確認されたツイッターアカウントは52件で、リツイートされた記事は430件にも上ると伝えられています。さらに、IVDの記事の出典元となるIndia News Network(INN)がPressMonitorの母体企業によって運営されていることがわかり、ニュース発信とそのファクトチェックが実質同一メディアで行われていたことも判明しています。

インド政府を擁護する「India vs Disinformation」

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今回、DFRLabが注目したファクトチェックを目的としたサイトIVDは、カナダに拠点を持つPress Monitorによって運営されています。同サイトの目的について、「世界最大の民主主義に関する確かな情報を提供するオンラインニュースポータル」と述べていますが、その実態は、インドやその政府に不利な報道に反論することが中心となっているようです。実際、ファクトチェックの情報元は後述するIndia News Network(INN)に掲載された偏向ニュースがほとんどとなっています。

IVDはまた、SNSを通じてその偏向記事を拡散させており、特にツイッターやフェイスブックがそれに利用されています。調査の中、DFRLabはSNSに関して奇妙な事実を発見しました。比較的新しいサイトであるにも関わらず、IVDの記事をリツイートしたインド大使館・領事館の公式アカウント数が50を超えていたのです。政府公認のアカウント192件のうち、52件がリツイートを行っており、その合計は430回を超え、個別には最も多いスウェーデンの88回、メキシコの29回と続いています。また、リツイートされた記事はテロを支援するパキスタンへの批判など外交的な内容が主となっているようです。この不自然なリツイートはIVDとインド政府に何らかのつながりがあることを示していると考えられます。

偽ファクトチェックの情報元India News Network

IVDが掲載する記事の出典元のほとんどはIndia News Network(INN)であり、このサイトでもインド政府に有利な内容の偏向記事が多く掲載されています。記事の内容はインド政府による政策決定で政府側を擁護したり、中国やパキスタンとの外交問題について一般市民の考え方を操作するようなものがあるようです。ここでIVDINNを比較してみますと、ほとんど同じサイトであることが分かります。このように、本質的には1つの発信元であるにもかかわらず、情報元が独立したメディアにあると見せかけることで、記事の信憑性を高めようとしていると考えられます。

INNの概要ページでは運営会社はBusiness News and Information Services(BNI)というインドの会社となっており、Press Monitorの関与を見つけることができません。しかし、DFRLabは2つのサイトの画像のホスト先が、同じAWSアカウントであること、同じグーグルアナリティクスコードがシェアされていることを見つけています。したがって、同じ運営会社が関わっていることは明白と言えるでしょう。

運営会社Press Monitorの素性

IVDとINNの2つを同時に運営している疑いのあるPress Monitorですが、同社の顧客紹介ページにインド大使館や議会など同国の政治機関がリストアップされています。このことからIVDとの関連性が疑われましたが、DFRLabへは、メディア監視サービスで関連しているのみでIVDとは無関係と回答するのみでした。また、同社のホームページに、Press MonitorはBusiness News and Information Services(BNI)の一部であることが明言されており、IVDとINNが実質同じ母体によって運営されていることは明白と言えます。同社の代表であるAbhay Aggarwal氏のLinkedInに掲載された経歴にも、BNIの代表を兼務していたことが書かれていましたが、これは現在は削除されているようです。

会社の素性だけでなくIVD以外の活動についてもDFRLabは言及しています。同調査によれば、Press Monitorは、使用可能性の高いドメインをあらかじめ確保しておき、使用者に高額で販売する「サイバースクワッティング」を行っていることが判明しました。インド与党の主要戦略に関連した名称のドメインで同活動を行っていることについて、DFRLabに対して同社代表は認めています。また、中国やインド系イスラム教徒を非難するJigyasa Onlineというサイトが同社のサーバーにホスティングされていることも発覚しましたが、このページとの関連性は否定しています。

DFRLabによれば、今回のように一見普通に見える企業がフェイクニュースをクライアントへ提供する事例は増加傾向にあるとのこ

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