トムソン・ロイター財団編集長が語るエンゲージメントの教訓・・・オーディエンス志向のニュースルームとは

今年行われたリスボンウェブサミットにおいて、トムソン・ロイター財団で編集長を務めるヤシル・カーン(Yasir Khan)氏がWNIP(What’s New in Publishing)に語った内容が発表されました。ニュースルームに20年勤めて得たエンゲージメントに関する教訓が紹介されています。エンゲージメント獲得のための前提、獲得すべき読者、成功のための指標についてが語られるとともに、自身のアルジャジーラでの実体験をもとにしたオーディエンス志向のニュースルームを作るためのアドバイスが述べられています。

エンゲージメントにおける終点とは

カーン氏は、カタールに本社を置く衛星放送局アルジャジーラ、カナダのCBCを経てトムソン・ロイター財団の編集長となりました。20年ものキャリアを積んだ同氏によれば、インターネットの普及は新聞やテレビなどのマスメディアを良い方向に変えたと言います。それは、「歴史上初めてマスメディアがオーディエンスの声に耳を傾けたから」です。

今回、長年のキャリアを持つ同氏はオーディエンスからのエンゲージメント獲得に関する教訓をWNIPに語りました。同氏によれば、オンライン上でクリックが行われたことがエンゲージメントの終点ではなく、貴重な時間を割いて無数の選択肢から選んでくれた人物こそが終点であると言います。

獲得すべき読者、成功判断のための指標

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オーディエンスのエンゲージメントを獲得するために重要となるのは、まず、パブリッシャーがオーディエンスに何を求めているのかを決めることです。その上で、どのようなオーディエンスを獲得すべきかという問いにカーン氏は、多くの人数をフラットに獲得するよりも少数でもロイヤリティの高い層を獲得すべきと答えます。

実行した戦略が成功したかどうかを判断するためには、適切な指標が必要です。同氏によれば、その指標は様々な種類ものから構成されている必要があり、それらの重み付けは戦略に応じて変化しなければならないと言います。また、将来的に機能するものに目を向け続けなければならないため、編集部には指標を考案する専門家がいるべきとも言います。

オーディエンス志向のニュースルーム

オーディエンス志向のニュースルーム構築のためには、オーディエンスがどのような層で、かつ何を求めているか、そして今いるオーディエンスは自分たちの求めている層なのかを見極める必要があるとカーン氏は言います。

オーディエンスの求めているものについて、カーン氏は、例えば多くの若者向けのコンテンツは若者ではない人々が作っていると指摘します。そういった制作者は若者がなぜ視聴しているのかや、どのように消費しているかを把握していません。そうした事実から同氏は、自身のアルジャジーラでの成功事例を引き合いに出し、制作者がオーディエンスと同年代かつ求められるコンテンツに精通していることが成功要因であると述べています。

同氏が語るアルジャジーラでの成功事例とは、以下の内容です。まず、アルジャジーラがデジタル配信を開始した当時は、オーディエンスの85%が男性でした。配信される内容も戦争や飢餓問題が多く、それが結果的に男性を惹きつけている状況であったと言います。同氏はこの状況から、女性オーディエンスの割合を少なくとも50%にする必要があると考えました。

女性オーディエンスを増やすために同氏が行ったことは、まず複雑なヒューマンストーリーのコンテンツを増やすことでした。そして、女性問題だけを取り上げるのではなく人間の問題全般を取り上げるようにしました。さらに、「国際的で、女性が半数を占めるオーディエンス」を実現するため、制作チームも同様に国際的で女性が半数を占めるものにしたと言います。こうした施策により、同氏が去る頃には45%が女性オーディエンスになっていました。

最後に、カーン氏は以下のように述べ、実行の重要性を強調しました。

「デジタル戦略で重要なのは、常に実行しなければならないことです。一度だけ実行して、それで終わりというわけにはいきません。世界最高の戦略を持っていても、うまく実行できなければ破滅してしまうの

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