ぴあと朝日が作るデータとコンテンツを融合した新しいパブリッシャー像とは? 崎川副社長に聞く

Media InnovationはメディアのDXについて考える「Media DX Conference 2022」を10月14日に開催します。本イベントに登壇する、ぴあ朝日ネクストスコープの崎川真澄取締役副社長に、新しいパブリッシャーで目指す姿や、これまでの外資系メディアで経験してきたDXについてお話を伺いました。イベントの詳細はこちらから(入場無料)

チケット販売のぴあと、朝日新聞社の合弁会社である、ぴあ朝日ネクストスコープ。日本のパブリッシャーではいち早く自社データを活用したデジタルマーケティングで成功してきたぴあと、多数の媒体と顧客基盤を抱える朝日新聞社がタッグを組んだ新しいパブリッシャーです。

同社の取締役副社長に就任した崎川真澄氏は朝日新聞社で広告営業を長く経験し、「ハフポスト日本版」を展開するザ・ハフィントン・ポスト・ジャパンの取締役CEO、同社がBuzzFeed Japanと合併した後はCRO(Chief Revenue Officer)を務めてきました。外資でメディアのDXを推進し、次はデータを軸にした新しいパブリッシャーに挑戦する崎川氏にお話を伺いました。

崎川 真澄
ぴあ朝日ネクストスコープ株式会社 取締役副社長
朝日新聞社で、長く広告営業(勤務地:東京・福岡・NY・大阪)および朝日IDを利活用したデータマーケティングに携わったほか、経営企画室に3度在籍しグループ企業関連業務などを行う。その後、ハフポスト日本版CEOおよびバズフィードジャパンCROとして外資系メディアのビジネスグロース及びPMIなどのマネジメントを経験。

―――まずご経歴を伺えますでしょうか?

朝日新聞社に入社して、25年以上広告局の営業現場で仕事をしてきました。その後、経営企画や新規プロジェクトの立ち上げなどに取り組むようになり、今の「朝日ID」の立ち上げにも携わりました。

2017年に「ハフポスト日本版」を運営するザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン(本国と朝日新聞社の合弁だった)の取締役CEOに就任して、経営の側からメディアに携わるようになりました。2021年には本国でハフポストがBuzzFeedと合併した事に伴い、日本法人もBuzzFeed Japanに統合され、そこではCRO(Chief Revenue Officer)を務めましたが、今年退任しました。

―――次のキャリアは、ぴあと朝日新聞社の合弁となった、ぴあ朝日ネクストスコープとなりました。どのような経緯で両社はタッグを組んだのでしょうか?

実はぴあと朝日は2000年頃から新聞紙面での共同の記事広告を展開してきました。エンタメ系の情報発信で、朝日新聞だけでは実現できない広告タイアップを展開してきました。一方で時間が経ち、主戦場はデジタルマーケティングになってきました。この領域でも協業ではないか、というのが最初のきっかけとなります。

ぴあはチケット販売で得られた顧客情報を活用して、先端的なマーケティングソリューションを提供してきました。日本のパブリッシャーの中で、このように上手くデータを活用してビジネスを構築できているのは、ぴあや講談社など数社しかありません。そのぴあがデジタルマーケティング部門をカーブアウトして設立した会社に朝日新聞社から出資して合弁としたものです。

オープンしたばかりの、ぴあ朝日ネクストスコープの公式サイト

―――新会社はどんな事を実現するのでしょうか?

ぴあ朝日ネクストスコープは、デジタルマーケティングの専門家、コンテンツマーケティングの専門家、営業チームからなる40名弱のチームで、数名が朝日新聞社から出向で加わっています。「hapimamaハピママ」「ウレぴあ総研 ディズニー特集」「mimot.」「うまいめし」「MEDERY.」というバーティカルメディアも抱えますし、今後は、朝日新聞社が持つ30超のメディア群も活用できますし、約3000社の取引のある広告主へのアプローチも可能です。

自社のバーティカルメディアに加えて、ぴあのチケッティング、朝日新聞社の催事やECサイトなど、様々なアセットを活用して、データを軸としたデータマーケティングと、コンテンツを軸としたコンテンツマーケティングの掛け合わせで広告主のキャンペーンを支援する製品を提供していきたいと考えています。

「朝日ID」の立ち上げに携わったのはもう7年も前ですが、朝日新聞社の戦略の中核になってきました。パブリッシャーのデータ活用はハフポストやBuzzFeed Japanの時代にも取り組みたい領域だったのですが、GAFA支配からの脱却、クッキー規制、Web3など様々なテーマが交わる最先端で仕事をできるのを嬉しく思います。

―――データに強みを持つ新しいパブリッシャーが誕生したというイメージですね。とてもわくわくします。ところで、これまで経営に携わってこられた「ハフポスト日本版」や「BuzzFeed Japan」が日本でも成功してきた背景をどう捉えていますか?

大きいのは2010年代のデジタルメディア勃興の時代の波に乗ったということだと思います。スマホでの情報発信が盛んになり、旧来型のパブリッシャーでは飽き足らない優秀な編集やビジネス人材が沢山デジタルメディアに流れ込んできました。2つのメディアの成功という観点では、ダイバーシティやLGBTQ、サステナビリティなど新しい流れを、ソーシャルを巻き込みながら日本に作っていけたのが良かったと思います。

ビジネス的には「三位一体経営」と私は呼んでいますが、編集部とビジネス部門、それから”真ん中チーム”という両方にまたがる部門の三者が協同しながらユーザーとクライアントの双方に価値のあるコンテンツを作っていくというモデルが上手く機能したと思います。ネイティブアドのブームという後押しも受けましたし、コロナ禍ではイベントのオンラインシフト、動画へのシフトにいち早く対応できました。

―――DXを推進する上で、外資系ならではの違いはあったりしたのでしょうか?

やはり日本の大手メディアでは幹部と現場では距離感があると思います。外資系メディアは表面的かもしれませんが、フラットな関係性で仕事をしています。オールハンズという全社員集会なども頻繁にあり、スタッフが創業者に対して平場で苦言を呈するような場面も見かけます。

一方で根回しや事前調整のような文化は当然ありませんので、本国からある日突然「これをやってください」という場面もよくありますし、解雇規制が緩いことから、リストラが頻繁にあり、とても流動性が高い職場になります(本国は)。DXという観点で言えば、強力なリーダーシップで運営されているという点では変化を促しやすい環境ではあるかもしれません。

―――メディアがDXを推進するためには何が必要でしょうか?

どういったデジタルメディアになっていくかという点で今後の編集者に必要なのは「マーケティングとテックの素養」だと思います。有形の紙媒体と異なり、デジタルメディアは読まれなければ価値はゼロです。新聞の時代のような一方通行ではなく、読んでもらうためにどう仕掛けるか、という観点が必要です。コンテンツ作りにも届け方にもテクノロジーが必要不可欠ですので、その素養も必要不可欠です。

組織としてはトライアル&エラーのカルチャーが必要でしょう。何が正解か分からない時代です。失敗しながらもトライして、キャッチアップしていく姿勢が大事です。「三位一体経営」は編集とビジネスの壁は存在しながらも”同じ空を見る”事を志向しています。編集会議に広告担当者も出席します。それぞれの見地から意見を戦わせて、その中で思わぬ発想が生まれ、よいコンテンツ作りやビジネススキームの開発に繋がると確信しています。

◆ ◆ ◆

Media DX Conference 2022 sponsored by pasture

・主催 Media Innovation (株式会社イード)
・協賛 pasture (エン・ジャパン株式会社)
・日時 2022年10月14日(金) 14:00~17:00 @ オンライン開催
・参加費 無料(要事前登録)
・会場 Zoomによるオンライン開催

当日のスケジュールや登壇者のプロフィールなどは特設サイトをご覧ください。

※参加にはMedia Innovationの会員登録(無料)が必要です

2,779ファンいいね
226フォロワーフォロー
2,462フォロワーフォロー

【12月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

最新ニュース

Manabu Tsuchimoto
Manabu Tsuchimoto
デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

関連記事