【メディア企業徹底考察 #90】コロナ後のグルメメディア業界は食べログの一人勝ちが濃厚に

グルメメディアの明暗が分かれました。株式会社カカクコム食べログが増収、ぐるなびRettyは減収が続いています。

新型コロナウイルス感染拡大で外食産業は一変し、グルメメディアも大打撃を受けました。株式会社ぐるなびRetty株式会社は、アフターコロナを見据えてテイクアウトやデリバリー需要を獲得しようとサービスの幅を広げましたが、期待通りの成果が出ていません。ぐるなびはテイクアウト・デリバリー事業から撤退しました。

飲食店と消費者から支持を得ている食べログ一人勝ちの様相を呈してます。

加盟店の減少が止まらないぐるなび

ぐるなびの2023年3月期上半期の売上高は58億6,500万円。前年同期間比3.9%の減少となりました。四半期ごとの売上高の推移を見ると、2021年10-12月を境に減少へと転じています。

※各社決算説明資料より

ぐるなびはかつて食べログよりも稼いでいるメディアでしたが、コロナ禍で力関係は逆転しました。Go To Eatキャンペーンが実施された2020年10-12月の売上高は、食べログが大幅に上回っています。食べログとぐるなびは同じグルメメディアですが、サービスの特性やターゲットが明確に異なります。その違いが売上差に表れました。

2つのメディアが誰をターゲットとしているのかは、テレビCMのキャッチコピーによく表れています。食べログが220年2月に放映したCMでは、「お店探しは食べログアプリ」と銘打っています。2019年4月のぐるなびのテレビCMでは「幹事、やったもん勝ち」というメッセージが流れます。

幹事向けに宴会需要を獲得していたぐるなびは、需要が消失した影響を真正面から受けているのです。その一方で、飲食店探しのメディアという地位を獲得した食べログが強みを発揮しました。

外食産業はコロナ禍から立ち直っていないようにも感じられますが、需要そのものは回復しています。日本フードサービス協会の36,000店超を対象とした売上データの調査によると、2022年11月の売上高は前年同月期107.2%。コロナ前の2019年比で100.7%となりました。

※日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」より

飲食店は客足が戻った店と、戻らない店の差が開いているのです。好調なのが洋風ファーストフード。11月は2019年比で125.8%となりました。出遅れているのが居酒屋で58.3%。2019年と比較して6割の水準にも届いていません。

ぐるなびはメディアの売上高を支える、固定課金サービスの利用店舗の減少に悩まされています。コロナ禍での食べログ・ぐるなびの減少ペースは似通っていましたが、ぐるなびがテイクアウト・デリバリーサービスを開始したことで、店舗数は一時的に増加しました。しかし、サービス終了で大きく加盟店数を落としています。

※各社決算説明資料より

店舗数の減少に歯止めがかかる様子はありません。

進行する食べログの寡占化

グルメメディア業界が抱えている最大の課題は、利用者が減少していることです。下のグラフは総務省の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」において、グルメ情報を得るメディアを調査した結果の中から、Webの情報源を抜き出したもの。専門情報サイトはコロナ禍で1.2ポイント減少し、2021年も0.1ポイント数字を落としました。

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テーブルチェックの「グルメサイト意識調査」によると、飲食店が集客マーケティングで最も効果が感じられるツールの第1位が食べログで26.3%。次いでInstagramが22.6%となっています。食べログの飲食店からの信頼度は突出しています。今後、消費者のグルメメディア離れは加速し、飲食店からの信頼が厚い食べログの寡占化は進行するものと予想されます。

新興グルメメディアを取り巻く環境は一層厳しさを増しています。その影響を受けているのがRetty。一時は固定課金店舗数が1万を超える時期がありましたが、2022年9月末は7千を割り込みました。

Rettyは食べログの弱点だった口コミの信頼性を、実名登録によって克服したグルメメディア。食べログと同じ土俵で戦っているために市況の悪化の影響を著しく受けることはありませんが、後発メディアで利用者数が少なく、飲食業界での存在感を発揮しきれていません。

2021年にRettyは従量課金制のサービスを開始しました。飲食店に予約が入ったら、一定の手数料を徴収するというものです。上のグラフ(青)を見るとわかる通り、従量課金の店舗は増加しています。

しかし、Rettyの従量課金制は自らの首を絞めるものにもなりかねません。

従量課金の店舗が増加しているのは、固定課金の解約を阻止する役割を果たしているのでしょう。解約されるのであれば、従量課金サービスに移行してもらうというものです。従量課金で収益性が高められるのは、大手グルメメディアと肩を並べるほどに成長した場合。ぐるなびですら固定の広告掲載料の他に、従量課金制であるWeb予約手数料を徴収していますが、黒字化は果たせていません。

なお、Rettyは2022年9月期に8億5,900万円の純損失(前年同期は3億5,800万円の純損失)を計上しています。2023年9月期は5億4,600万円の純損失を予想しており、業績が回復する目処はたっていません。

従量課金制は飲食店にとってメリットが大きいものですが、Rettyには解約阻止以外のメリットが見当たりません。従量課金の店舗が増えるほど、Rettyの収益性は悪化する可能性があります。

経済圏拡大を狙う楽天・Yahoo!との相乗効果が生まれない

ぐるなびとRettyは事業拡大の道を見失い、需要回復を粘り強く待っているように見えます。それは2社が行っている資金調達に見ることができます。

ぐるなびは2022年12月に株式会社オプティムを引受先とする第三者割当増資を行うと発表しました。オプティムに対して779,300株を割り当てて3億円を調達するというもの。オプティムは佐賀県に本社を置くIoTなどのサービスを提供する会社で、ぐるなびとは飲食店の混雑状況を把握する「飲食LIVEカメラ」で協業しています。つまり取引先の一つです。

ぐるなびは楽天グループ株式会社と資本業務提携をしており、楽天は16%超の株式を保有しています。ぐるなびの代表取締役社長は杉原章郎氏。杉原氏はかつて楽天の常務執行役員を務めました。本来、ぐるなびの苦境は楽天が救済するのが筋。2社に高い相乗効果が表れているのであれば、グループ会社化も視野に入れるはずです。

楽天とぐるなびの提携の目的は、楽天ポイントの利用拡大にありました。しかしその成果は出ず、楽天が追加で出資をするメリットがないと判断されたのでしょう。

また、楽天はモバイル事業の先行投資で大赤字を出しています。ぐるなびの救済どころではないというのが本音かもしれません。一時は資本提携でぐるなびの勢力拡大が期待されましたが、2社の取り組みは空中分解してしまった印象を受けます。

Rettyは株式会社じげんと代表取締役社長平尾丈氏に対して第三者割当増資を実施。6億8,500万円を調達しました。これにより、平尾丈氏の持株比率は18.76%まで高まりました。

Rettyは上場後もYJキャピタルが13.42%を保有し、親会社のZホールディングス株式会社が上場時に8億円分の売出株を取得。保有比率は3.40%まで高まりました。2社の合計で17%近く保有していましたが、第三者割当増資によって比率を下げました。平尾丈氏の存在感がいっきに高まりました。

Rettyはかつて食べログを脅かす存在になるのではないかと言われていたメディア。Zホールディングスもそれに期待していたはずですが、出資をしなかったということは、もはや拡大は望めない(出資するメリットがない)という判断なのでしょう。

じげんは求人やアフィリエイト系メディア運用に強みを持っており、数多くのサイトを展開しています。Rettyはその中のメディアの一つとなり、粛々と事業を展開することになるのかもしれ

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