【メディア企業徹底考察 #96】投資ファンドがWOW WORLD GROUPをTOBで非上場化へ、企業価値向上の青写真は?

マーケティング支援のCRM「WEBCAS」や、Webサイト構築のCMS「Connecty CMS on Demand」を提供する株式会社WOW WORLD GROUPが、投資ファンドの日本成長投資アライアンスに買収され、非公開化される見込みです。

2023年2月1日から3月15日までにTOBを実施。TOB公開前の終値1,053円に42.64%のプレミアムをのせた1株1,502円で買い付けを行い、下限を66.6%に設定しています。WOW WORLD GROUPはTOBに賛同し、投資家に対して応募を推奨しています。

マーケティングや営業支援ツールは伸び盛りの市場ですが、WOW WORLD GROUPの株価は低迷していました。プライム市場の上場維持基準にも適合しておらず、非上場化で企業価値を高めます。

CMS事業が利益の下押し要因に

WOW WORLD GROUPは1995年4月に設立されたエイジアが前身。ホームページ制作を行っていました。1999年5月にWEBCAS事業を本格的に行い、2001年10月にメール配信システムをリリースしました。2005年10月にマザーズ市場に上場。2016年8月に東証二部、2017年12月に一部に市場変更しています。

2018年9月にベビー服のECサイト「ままちゅ」を譲受。2020年10月にCMSのコネクティを買収しています。

2021年7月にWOW WORLDに社名変更し、2022年10月にWOW WORLD GROUPを設立してWOW WORLDを完全子会社化しました。

WOW WORLD GROUP(WOW WORLD)の2022年3月期の売上高は前期比20.2%増の28億3,300万円でした。2023年3月期は同5.9%増の30億円と予想しています。WOW WORLD GROUPは2桁成長を続けていました。今期の売上予想が1桁に留まっている要因に、ままちゅを含む子会社5社の清算を2023年1月11日に決議したことがあると考えられます。

有価証券報告書より(2022年3月期まではWOW WORLD、2023年3月期の予想はWOW WORLD GROUPのもの)

2021年3月期から営業利益率が下がっています。収益性が悪化した背景にコネクティ買収の影響があります。WOW WORLD GROUPは先行投資として、コネクティの社員数を大幅に引き上げました。

コネクティはドトールやロッテ、ソニーミュージックなどのWebサイト構築を手掛けています。大手企業を中心に案件を獲得し、Webサイト構築の2023年3月期第3四半期の売上高は4億4,000万円で全体の2割を占めています。WOW WORLD GROUPはCMS領域の成長に期待をかけていました。

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しかし、規模の大きいWebサイトの構築案件は開発にかかる人件費の負担が重いだけでなく、外注費も発生します。WOW WORLD GROUPは主力事業WEBCASの伸び悩みが鮮明になり、CMS領域に進出したものの利益率が悪化しました。

また、売上規模も小さく、株価は低迷していました。時価総額は40億円台前半で推移していました。

株価は新株予約権の権利行使価額を下回る日が続く

プライム市場は時価総額100億円以上が求められ、基準に達さない企業には現在、経過措置が設けられています。東京証券取引所は2023年1月25日、2025年3月以降に経過措置を撤廃し、基準に達していない銘柄は監理銘柄・整理銘柄に指定したうえで6カ月間に改善されない場合は上場廃止するという案を明らかにしました。

WOW WORLD GROUPのようなプライム市場の銘柄は、スタンダード市場を選択して上場維持を行う可能性が高いものの、降格に近い扱いで不人気銘柄化するのは避けられないでしょう。

今回、TOBを仕掛けるのは日本成長投資アライアンスですが、実は2020年6月に新株予約権が割り当てられています。発行価額は1,485円で、行使価額は1,305円というもの。新株予約権の行使期間は2026年6月までに設定されています。

権利を行使すると日本成長投資アライアンスは15.35%の筆頭株主となりますが、権利を行使しておらず、2023年1月31日の段階では新株予約権を保有しています。

WOW WORLD GROUPの株価は2020年10月に2,932円の高値をつけますが、2022年後半は1,000円を下回る日が続いていました。

仮にTOBを行わず、プライム市場からスタンダード市場へと移行すると、株価の低迷が続く可能性があります。権利が行使できず、最悪のケースでは新株予約権が紙くずになります。今回のTOBの背景の一つに、プライム市場の上場基準に適合できないことがあると考えられます。

プライム市場に上場している銘柄で、時価総額が振るわない企業は珍しいわけではなく、化粧品のECマーケティングを行う株式会社ピアラ(時価総額40億円)、マンガアプリのand factory株式会社(時価総額40億円)などがあります。その他、プライム市場の上場基準に満たない銘柄は15%程度あると言われています。

TOBで非上場化した後は5年程度で再上場か

日本成長投資アライアンスは2022年8月、アンケートプラットフォームサービスの株式会社マーケティングアプリケーションズの過半数の株式を取得していました。日本成長投資アライアンスは、WOW WORLD GROUPとマーケティングアプリケーションズの2社を経営統合するか、マーケティングアプリケーションズをWOW WORLD GROUPの傘下に入れて企業価値向上を図るのではないでしょうか。

マーケティングアプリケーションズは2020年6月期に3億円程度の純利益を出しています。2006年設立のスタートアップですが、安定的に利益を出している会社です。

提供しているサービスもシナジー効果の高まるものが多くあります。例えば、WOW WORLD GROUPのマーケティングツールと、マーケティングアプリケーションズのアンケートツールを組み合わせ、消費者や顧客からデータを取得し、マーケティング施策に活かすことができます。

投資ファンドの投資期間は3~5年が平均的な水準。2028年を目処に企業価値を高め、IPOまたはM&Aによるエグジットを行うと予想できます。日本成長投資アライアンスは今回のTOBに最大で75億円を投じます。規模が比較的大きいことからIPOを狙うのではないかと考えら

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