メディアとプラットフォームの関係、公取委のレポートに注目が集まる【Media Innovation Weekly】9/25合

9月21日、公正取引委員会が「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書」というレポートを発表しました。

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今週のテーマ解説 メディアとプラットフォームの関係、公取委のレポートに注目が集まる

9月21日、公正取引委員会が「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書」というレポートを発表しました。実に150ページ以上に渡る長大なレポートでは、メディア企業(ニュースメディア事業者)と、コンテンツを配信しているニュースプラットフォーム事業者との間の取引関係の実態について過去にないレベルで明らかにされ、具体的な数字が開示されています。今回はこのレポートについて解説したいと思います。

プラットフォームは巨大なリーチを誇りインターネットにおける入り口となっています。メディア企業からプラットフォームに対しては、ニュース記事の使用許諾を行い、それに対して許諾料が支払われています。また一般的にはメディア企業が運営するサイトへのリンクが提供され、PVという点でも還元があります。ただし、許諾料はプラットフォームが得ている広告収益と比較すると少額と見られ、許諾料はブラックボックスで企業間の格差もあると言われます。

世界的にプラットフォームを提供する企業による市場の独占的な支配に対してメスが入れられていますが、公取委も遅ればせながら2021年2月に公表した「デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書」の中でメディア企業とニュースプラットフォーム事業者(ヤフーやLINEなどのポータルサイトや、グーグル等の検索サイト)の間での取引条件の明確かお、適切な交渉の実施等が競争政策上望ましいと結論づけました。一方で、公取委はその後も「実質的な改善が進んでいない」として、「より実効性のある提言を行うことを目的に」今回の調査を実施したということです。

レポートは、新聞協会・雑誌協会・民間放送連盟に加盟の319社を対象にしたウェブアンケートや、一般ユーザーに対するウェブアンケート、ニュースプラットフォーム事業者に対するヒアリング調査を元に制作されています。協会加盟社が対象であることからここにはウェブ専業の企業は基本的に含まれておらず、デジタルメディアのみを運営する企業においては、より厳しい取引実態があるものと見られ、それを前提に読み解く必要があります

プラットフォームに依存するメディア企業

新聞や雑誌の部数がここ十数年減少傾向にあるのは周知の通りですが、伸ばそうと試みてきたデジタルにおいてはニュースプラットフォームへの依存が多い事がアンケート調査から明らかになっています。自社ウェブサイトへの流入割合で放送事業者は94.4%、新聞は89%をニュースプラットフォームに依存していて、交渉の上では非常に弱い立場に置かれている事が分かります。

さらに、ニュースメディア事業社における収益のうち新聞では23.8%をニュースプラットフォーム事業者からの許諾料が占めています。新聞では57.5%のデジタル広告収入も、約9割の送客をニュースプラットフォーム事業者から受けている事から、収益の約8割をニュースプラットフォーム事業者に依存している計算になります。

そのニュースプラットフォーム事業者ですが、レポートでは7社を対象にしていて、以下は①最も取引額の多いプラットフォーム ②2番目に取引が大きい ③3番目に取引が大きい という点を訪ねたものです。やはりヤフーが最も大きく、次いでスマートニュース、LINEという順になっています。ヤフーとLINEは経営統合を目前に控えていて、この点でも警戒感があります。取引金額(44p)ではヤフー、LINE、スマートニュースという順でした。

許諾料は1000PVあたり124円が平均

更に突っ込んだ情報が報告されているのはニュースプラットフォーム事業者に対する許諾料の項目です。許諾料は (1)固定での支払い (2)広告収益のレベニューシェア (3)PV比例 (4)独自の指標を使った支払い といった方式があるとレポートでは伝えています。一部のプラットフォームでは許諾料は支払わず、メディア企業の運営するサイトへのリンクを対価としているプラットフォームもあります。

具体的な金額については1000PVあたり平均で124円だということです。これは業種別で異なり、新聞や放送は高く、インターネットメディアは低いというのが鮮明です。前述の通り、対象となっているのは新聞協会や雑誌協会の加盟社であり、インターネットメディア専業においてはこれよりも低いというのがレポートには触れられていない実態です。

レポートではメディア企業が運営するサイトでの1000PVあたりの広告単価も記載があり、2021年度は351.6円となっています。それと比較してニュースプラットフォーム事業者から得られる許諾料は124円となっていて、改善の余地があります。

許諾料については契約締結時には43.8%の企業が「不満があった」と回答。さらに現在では62.9%が「不満がある」と回答。実態が明らかになるにつれ、不満が募る構図が明らかになっています。不満の内容は「対価が低い水準にある」(86.4%)、「対価の算定基準が不明確である」(70.1%)が大きなものとなっています。プラットフォームからは、「ニュースによって得られた広告収益」や「メディアに対して支払った総額」が開示される事が交渉にとって不可欠だという認識が示されています。

メディア企業はどのように交渉すべきか

報告書では「ニュースコンテンツの利用におけ る公正性・透明性を高めるとともに、公正な競争環境の確保を図ることは、 インターネットを介したニュースコンテンツの流通における公正なビジネ ス環境の整備に資するとともに、消費者が質の高いニュースコンテンツを 持続的に享受することができる環境の整備にも資する」と指摘。両者間では協議や意思疎通が十分に行われていないとして、交渉を通じた解決への取り組みが期待される、としています。

交渉については、ニュースメディア事業者が他の事業者と共同して実施しても独禁法上問題とならないと指摘。さらに海外では個別に交渉を行うのではなく、著作権管理会社が一括して取引条件を交渉する事例が見られるとして、こうした方法も独禁法上問題にならないと述べています(音楽におけるJASRACのような取り組みが想定されます)。

また、公取委としてはニュースプラットフォーム事業者との交渉に際して、独禁法上問題になるか否かについて相談を受け付けているとして、「インターネットを介したニ ュースコンテンツの流通における公正なビジネス環境及び消費者が質の 高いニュースコンテンツを持続的に享受することができる環境の実現に向けた取組を後押ししていくためにも、本報告書等の内容に照らしつつ、 関係事業者等との意思疎通を重ねながら積極的に相談への対応を行っていく」としました。

◆ ◆ ◆

今までになく踏み込んだ内容となった報告書。今回の記事では触れられなかった部分でも具体的な双方の見解について詳細が記されていますので、ぜひ本文をご確認ください

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突然秋のような気配が出てきました。雨が降る度に秋らしくなる、今年もそんな季節のようです。今週末の金曜日、「生成AIの活用と課題」と題したセミナーをオンラインで開催します。色々と気になるテーマに触れていきますので、ご都合の良い方はぜひご参加ください。

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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