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「日経電子版」は10周年、日本経済新聞社はどうデジタルファーストを実現したのか?

9月25日に開催する半日間のオンラインカンファレンス「Publishing Innovation Summit 2020」では、世界の先進事例を元にパブリッシャーの未来について議論します。

世界でもデジタル化を成功裏に実現した代表格とも言えるのが、日本経済新聞社です。10周年を迎えた日経電子版はビジネスパーソン以外にも読者層が広がり、有料会員数が70万人を突破しています。

その成功には紙面中心の新聞社のあり方を、デジタルファーストに転換していった努力がありました。「Publishing Innovation Summit 2020」では執行役員 編集局ニュースエディター 論説委員を務める山崎浩志氏に「日経新聞のデジタルファーストへの取り組み」として講演いただきます。

イベントに先立って山崎氏にデジタルファーストの基本的な考え方を聞きました。

山崎 浩志(株式会社日本経済新聞社 執行役員 編集局ニュースエディター 論説委員)
1987年、日本経済新聞社入社。主に霞が関官庁、金融業界などを担当。パリ支局に4年間駐在。経済部長、電子編集本部長、デジタル編成ユニット長などを経て現職。休みの日はハンドクラフトで皮財布をつくるか、ゴルフに行くか、配信ドラマをまとめてみるか。

―――これまでのご経歴を教えてください

大阪配属で記者の仕事を始め、1年間の留学を挟んで5年間、大阪編集局に席を置いていました。その後、東京に移り、主に霞が関の官庁や金融機関などをテーマに取材をしてきました。海外勤務を除くと、基本的には経済部というところでほとんどの記者生活を送ってきましたが、日経電子版が立ち上がってから2年ほどたった2012年に初めてデジタル部門に異動。編集局とデジタル関連部門を行ったり来たりしています。

現在は編集局にいますが、ここ数年で編集とデジタルの垣根はなくなってきました。新聞をつくる人、デジタルを担う人という違いが意識されなくなってきたので、どこにいてもコンテンツの内容やクオリティとその発信のあり方、読者の増やし方について考えています。

―――今のご担当、取り組まれている事を教えてください

日経の編集局が日々発信するニュース、読み物などについてデスクや現場と日々熱い議論を交わしています。紙の新聞だけをつくってきた時代とデジタル技術を駆使できる今の時代では、コンテンツの作り方、読者との向き合い方も違います。伝える情報の内容だけではなくて、伝え方も含めて編集局の仕事のあり方を日々考える担当といったところです。

―――日経新聞がデジタルファーストに転換できた理由をどのように捉えられていますか?

他の新聞社と違って日経は経済やビジネス情報に軸足を置いたメディアです。経済にかかわる政策、経済の真ん中にいる企業、それを映し出す市場の動きなどを緻密にフォローして発信してきました。分刻みで動く経済情報を伝えるには朝夕刊という紙媒体だけではなく、24時間対応できるデジタルが役に立ちます。そのためのデジタル対応に動いたのもかなり早く、今の電子版の原型が動き出したのは20年ほど前です。

1500人近い規模の編集部隊で組み立てる経済・ビジネス情報の厚みは、日経の特性を打ち出す強みです。長く続けてきた紙の新聞から電子媒体へのシフトは簡単ではありませんが、わたしたちの持つ独自性はメディアとして生き残る武器になるとの判断がデジタルファーストを進める原動力になっています。とはいえ一人ひとりの記者がデジタルファーストを基本とできるまで数年の時間がかかっています。そしてデジタルファーストの編集組織が完成したわけでもなく、今なお挑戦が続いています。

―――新型コロナウイルスによって加速した面もあるのでしょうか?

新型コロナが広がる中で社会の動き方が大きく変わっています。在宅が増えたことで、スマホやタブレットでニュースにアクセスする人が増えました。記者の動き方もデジタル主導になりました。コロナという感染症の拡大でヒトやモノとの接触は減る傾向が続きそうです。社会生活全般でデジタルの存在感が高まるはず。3年で起きるはずだったことが一気に起きているというのは、メディアの動き方にも当てはまります。コロナをきっかけにデジタル化の勢いが増すと考えています。

―――今のメディアの課題と、逆にチャンスだと感じている点を教えてください

既存のメディアは非常に強力な編集部隊を持っていて、優秀な記者や編集者をたくさん抱えています。その大きさと厚みゆえに長く培ってきた報道のやり方を軌道修正するのは容易ではありません。ジャーナリズムという最も大事な部分と、それを届ける新しい手段の折り合いを手探りしているのが新聞社に代表される大手メディアだと思います。読者第一というのは簡単そうで難しい。公平公正な報道姿勢を守りながら、変わり続ける読者ニーズに応える道を増やしていかないといけないと思います。その意味で、こうした激動期には存在感を大きく伸ばすチャンスもたくさんあるのではないかと思います。守ってきたモノを壊す勇気も要りますが。

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Manabu Tsuchimoto
Manabu Tsuchimoto
デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

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