2021年の”パブリッシャーVSプラットフォーム”を総ざらい・・・レポート「Media Moments 2021」

メディア界のニュースや見解を紹介している「Media Voices」と「What’s New In Publishing」は、2021年のメディア業界の動向をまとめたレポート「Media Moments 2021」を発表しました。前回のサブスクリプション編に続き、今回は、プラットフォーム編をご紹介します。

2021年は、FacebookやGoogleなどの「プラットフォーム」と、コンテンツを提供する「パブリッシャー」の関係はあまり良好ではありませんでした。メトリクスの不正表示やフィードにおけるパブリッシャーコンテンツの優先度に関する様々な争いがあった他、米国でフェイスブックのツールを利用したクーデター未遂事件が発生し、ニューズ・コーポレーションなどのメディア企業がコンテンツへの支払いに関してオーストラリア政府に圧力をかけるなど、全体的な状況は大きく揺らいでいました。

フェイスブックにとっては波乱の年に

2021年、フェイスブック社の内部告発のニュースが世間を大きく騒がせ、現在でも同社は批判の渦中にいます。内部告発者であるフランシス・ハウゲン氏による内部資料の大量リークにより、同ブランドは回復不能なほどのダメージを受けた可能性がある、とレポートは指摘。その被害は、英国政府が発議したオンライン安全法案における規制の議論に波及するほどでした。10月下旬にフェイスブックは「メタ」へ改名しましたが、これは過熱する批判を紛らわせるためのものだとも言われています。

Instagramが若いユーザーの精神面に害があることや、1月6日の国会議事堂での暴動の際にフェイスブックが安全対策を実施するのが遅れたことまで、数多くの暴露が文書化されていました。その中でも特に印象的だったのは、フェイスブックが公共の安全性よりも自社の利益を優先していることを暗に示していたことだと述べられています。

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大きなダメージを受けた同社に対して、出版社らは協力して情報を調査・発信し、フェイスブックとそのオーナーであるマーク・ザッカーバーグに圧力をかけました。この10月、フェイスブックはニュースキュレーションの新しい製品を導入すると発表し、標準のニュースフィードよりも多く、パブリッシャーにトラフィックが送られるようにしました。また、ニュースレターサービス「Bulletin」を開始し、ローカルジャーナリストに支払いを行うなど、ニュースメディア業界への貢献しようと取り組んできました。

しかし同社にとっては不運なことに、10月に発生した6時間の全社的な障害で、ニュースサイトのトラフィックが増加し、パブリッシャーのリーチに与える影響について議論が巻き起こったとのことです。

グーグルへの支払い圧力

2月、グーグルとフェイスブックがオーストラリアの出版社にニュースの代金を支払うことに合意し、長らく続いていた問題が新たな局面を迎えました。これは出版社にとっての勝利であると最初は歓迎されましたが、しかし実際には、最大手の出版社が利益を得るだけで、インターネットの価値連鎖を根本的かつ故意に誤解しており、出版社の客観性に疑問を投げかけた、と述べられています。今年の後半にフランスがフェイスブックと同様の契約を締結したように、これは世界中で同様の取引が行われる「危険な前例」となりました。

グーグルはまた、イギリスの右派系メディア「ザ・サン」と「メール・オンライン」から、検索結果を埋没させていると非難されました。

その他のプラットフォーム

デュオポリー(グーグルとフェイスブックの2社による独占状態)の他に、アップル社は徐々にパブリッシャーにとってより居心地の良い場所になりつつある、と指摘されています。アップルのニュースアプリは、アプリストア外でも支払いできるようになり、全体的な収益のシェアを拡大し、より良いユーザーデータを提供できるようになったとのことです。Apple News+は、始めこそ混乱を巻き起こしていたものの、今では米国の雑誌出版社にかなりのトラフィックを送っているようです。

今後の展望について

現在、Facebookは高年齢層向けのプラットフォームと見なされていることから、若年層へリーチしたいパブリッシャーは今後、TikTokやSnapchatなど他のプラットフォームに力を入れることが予想されています。それと同時に、自社のウェブサイトやアプリを通して自社製品を公開するケースが増え始めており、プラットフォームへの依存が減っていくことが予想されています。

フェイスブックの内部告発は、新しく生まれ変わった「メタ」にも暗い影を落としており、同社には新たなルールや規則を支持するよう圧力がかかっていると述べられています。また、フェイスブックとグーグルは、今後もパブリッシャーへの直接支払いを進めていくと思われますが、これは長期的に見ると悪い影響の方が大きいと予想されています。

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【12月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

デジタルメディアの生き残りを賭けた戦略の中で世界的に注目を集めているサブスクリプション。月額の有料購読をしてもらい、会員IDを軸に読者との長期的な関係を構築。ウェブのコンテンツだけでなく、ポッドキャストやニュースレター、オンライン/オフラインのイベント事業などメディアの立体的なビジネスモデルをサブスクリプションを中核に組み立てていく流れもあります。

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