高まるプライバシーへの関心、データ活用法の見直しが必要・・・レポート「Media Moments 2021」

メディア界のニュースや見解を紹介している「Media Voices」と「What’s New In Publishing」は、2021年のメディア業界の動向をまとめたレポート「Media Moments 2021」を発表しました。前回のメディアの信頼性に続き、今回はデータとプライバシー編についてご紹介します。

この数年間は、広告業界にとって最も大きな変革期であったとレポートでは述べられています。ますます厳しくなる個人情報保護規制と、プラットフォームからの様々なアクションの結果、ユーザーへのトラッキングが無くなりつつあります。今、パブリッシャーたちは、データの使い方を真剣に見直すことを余儀なくされています。

プラットフォームが力を発揮

アップルはユーザーのプライバシーに配慮し、9月にリリースされたiOS15では、ユーザーが自分のデータの使用方法をよりコントロールしやすくするための機能をいくつか導入しました。特に4月に実施されたアップデートでは、iPhoneユーザーに、広告ターゲティングの目的でアプリ間で追跡されることに同意するかどうかを尋ねるようにしました。

これに同意しているユーザーはわずか4%のようで、この動きにより、アップルの広告事業のシェアは半年で3倍になり、Facebook、YouTube、Twitter、Snapchatの広告収入は100億ドル近くになったとのことです。同社は現在、2021年に50億ドル、3年以内に年間200億ドルをデジタル広告から稼ぐと予測されており、アップルを世界第4位の広告事業者に押し上げています

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一方グーグルでは、「Chrome」ブラウザの当初サードパーティークッキー廃止が2022年初頭に計画されており、2021年はその準備に費やされるはずでしたが、代替案について合意が得られなかったため、この計画を2023年まで延期すると発表しました。Chromeのプライバシーエンジニアリングディレクターのビナイ・ゴエル氏は、「これを正しく理解するためには、エコシステム全体で時間が必要であることが明らかになった」と語っており、この猶予は広告主には歓迎されましたが、緊急性はやや薄れました。

サードパーティクッキーに代わるグーグルのソリューション「FLoC(Federated Learning of Cohorts)」は、よりプライバシーを重視したアプローチで、ユーザーをグループ分けし、個人を特定できる情報を使用することなく、類似した行動に基づいて群れ(コホーツ)としてで扱うものです。

初期のテストでは、クッキーベースの広告に費やしたドルあたりのコンバージョンが95%に達したようですが、5月、DuckDuckGo、Firefox、GitHubは、グーグルのFLoC APIをブロックすることを発表しました。グーグルはプライバシー・サンドボックスを通じて代替技術の開発を続けていますが、どの代替技術についても業界の合意を得ることは難しいと言われています。

自分で作る

巨大なテクノロジー企業の争いに巻き込まれたパブリッシャーは、独自の取り組みを強化しています。今年発表されたファーストパーティーデータ活用ソリューションは増え続けており、News UKのNucleus、Vox MediaのForte、ForbesのForbesOne、Penske MediaのAtlas Data Studioなど、数え切れないほどです。

アドテクノロジーは、グーグルのFLoCモデルに同意していないかもしれませんが、それでもパブリッシャーは、ファーストパーティデータ戦略の一環として、独自のコホートモデルを開発することを止めないようです。
2020年末、Insider Inc.は、個人を特定できる情報を必要とせず、サイト上の読者の行動データを使用してオーディエンスセグメントを構築するオーディエンス・データ・プラットフォーム「SÁGA」を発表しました。
その結果、同社は2021年、ファーストパーティデータによる収益を200%伸ばし、上位20社のうち19社の広告主が契約を更新しているとのことです。

教育が課題に

サードパーティクッキーが最終的に廃止された場合、パブリッシャーは多くの忍耐力を必要とすると言われています。GDPR(EU一般データ保護規則)のような他の変更と同様に、広告業界の多くは代替手段を見つけるのを後回しにしており、パブリッシャーは、各自の環境の価値についてしっかりと準備する必要があるとのことです。

米国メディア会社のVox Mediaは、自社のファーストパーティデータソリューションであるForteを試験的に提供しており、CROのライアン・ポーリー氏は、それに対して抵抗のあるクライアントに対しても、無料で比較してみることを勧めていると語っています

米国経済雑誌のForbes(フォーブス)は、ファーストパーティデータソリューションのForbesOneが、潜在的な収益の損失から同社を守るだけでなく、ブランド全体で読者がどのように相互作用しているかを従業員が理解するのに役立つことを期待しているとのことです。CROのジェシカ・シブレイ氏は、これは既存の製品に取って代わるものではなく、より良いものを作るためのものである、と述べています

ファーストパーティデータの利点やコンテクスト広告の効果、パブリッシャーの読者の忠誠心などは、何も今始まったものではありませんが、このような業界の大きな変化は、長期的にはパブリッシャーにとって良いことでしかないと予想されています。

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【12月6日更新】メディアのサブスクリプションを学ぶための記事まとめ

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