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中国市場に挑むビジネスパーソンに向けた「CONNECTO」を展開する36Kr Japan・・・「進化するサブスク」#5

Media Innovationの2021年3月特集は「進化するサブスク」。今やメディアにとって最重要のビジネスモデルに位置付けられつつ有るサブスクリプション。国内でもトライするパブリッシャーが増加し、今までのようにビジネスパーソンに訴求する以外のメディアも増えてきました。いまサブスクに起きている変化は、そして未来は、考えていきたいと思います。31日にはイベントも開催します!

世界のビジネスにおける中国の存在感は年々増しています。しかし奥深い中国の実情を真に理解するというのはとても難しい仕事です。株式会社36Kr Japanが運営する「36Kr Japan」はそうしたビジネスパーソンの為の情報を発信しているメディアです。

ウェブサイトで、無料で情報発信するのに加えて、2020年からは「CONNECTO」と呼ばれる年額10万円の有料サブスクリプションサービスを開始。充実のレポートや中国企業データベースが人気を集めていると言います。同社で事業開発に携わる公文氏にメディアの生い立ちや「CONNECTO」のサービスについて聞きました。

公文信厚
大学在籍中に北京大学への留学を経験。猛烈な勢いで発展する中国に衝撃を受け、卒業後は日中のエンジニア人材を繋ぐスタートアップに勤務。2019年に36Kr Japanに加わり日本におけるメディアの立ち上げや、事業開発に携わっている。

―――まずは本国を含めて36Krの概要について教えてください

36Krは中国最大のテックメディアで、月間で5億PV、500名のスタッフがいて、うち100名程度が記者で、毎日100本以上の記事を配信しています。運営会社は2019年に米ナスダックに上場しました。BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)と呼ばれる巨大企業からスタートアップまで中国で生まれる膨大なテック企業の動向を報じています。

創業は2010年で、中国におけるテック企業の興隆とともに成長していきました。中国のテック企業には海外からも注目が集まっていますし、中国企業としても海外進出を命題としているところもあり、それを繋ぐ役割を果たしたいと思い、海外展開を重視しています。英語版である「KrASIA」を開設し、東南アジアやインドへ拠点を設立、それから日本語サイト開設と事業を広げています。

―――どんなビジネスモデルなんでしょうか?

本国では半分が広告で、残りの半分がビジネスマッチングやサロン、サブスクリプションなどです。ビジネスパーソン向けのメディアになりますので、単純に情報提供で終わるのではなく、実際のビジネスに繋がるサービスを重視していて、そちらの規模が大きくなってきています。

中国でも企業の海外進出は大きな課題です。巨大な企業が生まれている中国ですが、B2Cのサービスとして海外で成功を収めつつあるのは「TikTok」のBytedanceが非常に稀有な例で、まだまだ試行錯誤段階にあります。

また、市場が成長するに従って海外から中国に進出する事にも注目が集まっています。しかし中国事情というのはなかなか外からは分かりません。中国語の検索も漢字を使う日本人でさえ相当な困難が伴います。

ですから、ここを両側で繋いでいくというのが36Krとして重視しているビジネスモデルになります。非常に分かりやすい例では、3月9日~11日の会期で「UNLEASH TOKYO」というイベントを東京都と連携して実施しました。これは東京に投資を呼び込む事を目指した取り組みですが、全編英語で行われ、36Kr Japanがコーディネートしながら、本国の36Krの読者に対してアプローチをするという取り組みで、数万人に視聴されました。

―――日本版はどのように立ち上がっていったのでしょうか?

2018年8月に試験的に運営を開始しました。ベンチマークするようなメディアも無い状態でしたので、日本で中国の情報がどの程度ニーズがあるのか探りながらのスタートだったのですが、予想よりも良い反応がありました。

幸運な事に日本経済新聞社とのパートナーシップも結ぶ事ができ、翌年の5月に正式オープンしました。テーマがニッチな分、ユーザー数が非常に多いというメディアではありませんが、非常に熱心に閲覧いただける方が多い濃いメディアになっていると思います。

―――日経新聞とのパートナーシップはどんな状況でしょうか?

日経新聞の読者は日本のビジネスマンがメインですから当然アジアのビジネス情報への関心も非常に高いと聞いていて、一緒にさらに中国のテック業界を盛り上げる取り組みができればと思っています。具体的には、36Krのコンテンツを日経新聞の紙面や電子版に提供したり、セミナーを共催したりしています。肌感でも、まだ中国のイノベーションに着目している人は少ない印象ですが、日経新聞に36Krの記事が掲載される事はそれを変える可能性があると思います。

―――「CONNECTO」という有料のサブスクリプションサービスを展開されていますが、どんな背景でスタートされたのでしょうか?

36Kr Japanでは記事は全て無料で提供しています。「CONNECTO」は先程申し上げたような、実際にビジネスを作っていく支援として、もう一歩踏み込んだ情報を求めるユーザーに対する情報提供として構築して昨年9月からサービスを開始しました。

実は企業向けのビジネスマッチングやコンサルティングなどの事業を以前から行っていたのですが、新型コロナウイルスで対面が難しくなった事で一時ストップしてしまいました。これに代わる事業で、オンラインで提供できるもの、という発想もありました。

具体的には中国のトレンドをまとめたレポートを毎週一本公開しているのと、日本企業が提携しても安心できるような優秀な中国企業をまとめたデータベースを提供していて、年額で10万円という価格設定です。世の中のレポートや調査などと比べると非常に安価に中国情報にアクセスできるサービスになっていると思います。

CONNECTOで提供されているサービス

―――どういったユーザーに利用されているのでしょうか?

初期のユーザーは銀行、コンサル、シンクタンクなどが目立ちました。これらは自分たちが事業をするというよりも、その先にお客さんがいて、中国事情についてもアドバイスを求められる立場の人たちです。そういうユーザーには、毎週公開しているレポートで定期的に幅広いトピックについてインプットできるという点が評価されたようです。

少し時間が経つとメーカーが目立つようになってきました。こちらはまさに中国進出を考えていたり、中国企業との提携を模索していたりするような人たちです。例えば自動車やヘルスケアなどグローバルで熾烈な戦いを繰り広げているような業種です。この場合はレポートだけではなく、企業データベースが役に立ちます。また、個別に詳細なレポートの作成の依頼を受けたり、具体的な企業とのマッチングを支援したり、より深いサービスに繋がっていく傾向があります。

また、レポートは個人で情報をインプットするためたけでなく、例えば何かを起案した際に上層部を説得する際の材料に使っていただくとか、新規事業の部署などで定期的に何かしらのレポートを上げる必要がある方がベースとして使っていただくようなケースも多いようです。中国にある現地法人でも利用される事も多く、いかに現地にいても直接見られる範囲は限界がありますので、上手く組み合わせて活用いただいているようです。

―――コンテンツはどのように制作しているのでしょうか?

実はコンテンツは中国で制作しています。日本でニーズがあるだろうテーマや方向性を私たちで選定して、それを中国のリサーチ部門に依頼するという形です。やはり現地で無いと取れない情報は多く、さらには36Krグループの記者やリサーチ担当者はどこよりも早く正確な中国の最新情報をキャッチアップできるので、情報収集目的で作られているような現地法人でも取れないような内容を届けられていると思います。

―――実際に人気のあるテーマはどのようなものなのでしょうか?

最近特に人気があるのは、日本より進んでいると考えられる各業界のDX事例のレポートで、お問い合わせをいただく事も多いです。具体的には、

・モビリティ(自動運転、コネクテッド、販売店、スマート工場など)
・消費、流通、小売(店舗のデジタル化、SNS、中国国産の新ブランド、物流など)
・金融、保険(デジタル化、ブロックチェーン、信用など)
・ヘルスケア(IoT、ロボット、遠隔医療、製薬など)

といった領域が人気のようです。企業で言えば、もちろんBATHと呼ばれる中国のIT大手(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawai)は人気がありますし、新興のバイトダンス、ピンドゥオドゥオ、快手、シャオミ、ニオなどに関するお問い合わせも多いです。

やはり、中国でビジネスをする上で知っておかなくてはならない情報を知りたい、自社でも参考にできる先進事例を知りたい、中国企業を相手にビジネスをしたいので動向を知りたい、といったニーズがあるのだと思います。

―――加入者を増やすマーケティングはどのように取り組まれているのですか?

残念ながらそこまで手が回っていないというのが現状です。基本的には無料の記事でサイトに訪れてもらって、より深い情報が欲しい方に登録していただく、というのが導線になっています。一部セミナーなどをやっていますので、そこから登録いただくケースもあります。

個人で登録するような世間のサブスクサービスと比べると単価が決して安いサービスではありませんが、他の企業・業界分析ツールとの比較や、ビジネスマン自身が海外出張して情報を得ることと比較すると格段に低コストで良質な情報が手に入ります。現代のビジネスパーソンにとって必須のサービスには思えないかもしれません。ただ、中国に関わるかどうかは置いておいても、テクノロジーやデジタル化の最先端の情報を常に把握することはやはり今後とても大事になってくると思っているので、そういうアンテナの感度が良く、熱量の高いユーザーに出会うにはどうしたら良いか試行錯誤をしているところです。

―――ポッドキャストやClubhouseでの配信も試行錯誤の一環でしょうか?

そうですね。これらが直接的に有料会員に結びついている確証はないのですが、中国のイノベーションに関心を持つ人を増やしていくという活動が長期的に実を結ぶ可能性はあるのではないかと思っています。ちょっと情報をタダで出し過ぎかもしれませんが・・・(笑)。

―――サブスクリプションを始めて意外だった事はありますか?

ユーザーは大企業が中心だと思っていたのですが、意外にそうではなく、中には個人で契約するような人もいたのは驚きでした。他にも中小企業や地方の製造業など当初想定のターゲットよりも幅広いユーザーがいる事が分かりました。

なるべくコミュニケーションを取るようにはしていて、直近でも個人で契約してくださった方とミーティングをして色々とヒアリングさせていただく中でヒントがあって、サービス開発に繋がりそうです。

―――逆に課題はどんなところにあるのでしょうか?

想定よりも幅広いターゲットが存在する事が分かった事の裏返しで、どんなコンテンツを届けていけば良いのかというのには頭を悩ましています。サイトの使われ方もユーザーにとって大きく異なります。

サブスクリプションでは良いコンテンツを粛々と積み上げていく事が重要だと思いますが、どのくらいの粒度のコンテンツを出していけば、一定の満足をしていただけるものができ、その先の個別のマッチングやコンサルティングに繋がるものになるか、試行錯誤は続いていくと思います。

―――今後の展開について教えてください

とにかく今は日本企業が中国と関わるビジネスで上手くいくという成功事例を積み上げていくフェーズだと思っています。そのためには情報提供のためのコンテンツだけでなく、日中の企業をマッチングするイベントなど、メディアとして積極的に仕掛けていく事も2021年は考えています。

グローバルの36Krとしてはアジアだけに留まらず、世界的なネットワークを作るべく動いています。例えば、中東、東南アジア、太平洋地域などでもパートナーを作っていき、国境を超えようとする企業の支援をより充実させていければと思っています。

特集: 進化するサブスク(2021年3月)

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Manabu Tsuchimoto
Manabu Tsuchimoto
デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

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