赤裸々な数字も公開!Media Innovationのサブスク1年間を振り返る・・・特集「進化するサブスク」#2

Media Innovationの2021年3月特集は「進化するサブスク」。今やメディアにとって最重要のビジネスモデルに位置付けられつつ有るサブスクリプション。国内でもトライするパブリッシャーが増加し、今までのようにビジネスパーソンに訴求する以外のメディアも増えてきました。いまサブスクに起きている変化は、そして未来は、考えていきたいと思います。31日にはイベントも開催します!

Media Innovationで会員制組織「Media Innovation Guild」を立ち上げ、有料のサブスクリプションサービスを開始してから1年が経ちました。

散々、メディアとして「サブスクリプション」は可能性を秘めているとお伝えしている手前、自分たちでも実践しなくては説得力が無いのではないかという考えと、もし収益が積み上がっていけばコンテンツへの再投資が容易になるのではないかという思いでスタートしたもので、皆様へのフィードバックとして定期的に振り返りをレポートしています(過去の振り返り=500名突破1000名突破3000名突破)。

提供しているサービスは?

まずMedia Innovationがどんな事をやっているのかという振り返りです。主にご提供している登録メリットは、

  • 会員限定記事が読み放題
  • 毎月開催しているイベントに参加し放題
  • 広告表示がなくなる
  • ニュースレターが購読できる
  • オンラインサロンに参加できる

「Media Innovation Guild」は月額980円のライト会員と、月額4000円のプレミアム会員、そして無料会員が存在します。メーター制のペイウォールを採用していて、無料会員でも毎月5本までは会員限定記事を読めます。国内新聞社の実装で言えば、銀鍵だけを運用しているイメージでしょうか。この会員限定記事は平日2本ペースで公開をしていて、無料も含めて会員獲得の基盤となっています。

会員限定記事は現時点で772本あります。会員獲得記事を分析すると、もちろん直近で公開した記事が多数なのですが、1年前に公開した記事であっても継続的に会員獲得ができている記事が散見されます。無料ニュースサイトとの競争の観点からも、ストレートニュースではなく、鮮度が落ちても戦える分析や考察を強化した方が良いのではないかと考えています。ちなみにPVはもともと大きくありませんが、ウォールを導入した前後での減少は見られず、1年を通じて緩やかに増加していっています。

記事に加えて柱として考えているのは、毎月開催しているイベントです。次で25回目となる「Media Innovation Meetup」などメディア業界関係者の皆様に有益であろうイベントを開催し、有料会員であれば無料で参加できるという仕組みです。このイベントは会員獲得だけでなく、Media Innovationという媒体自体を知ってもらうきっかけにもなっていると感じます。

有料会員は30日間の無料期間を設けているので、入会して、イベントに参加して、すぐ解約すれば、無料で参加できるという抜け道があるのですが、そういう行動を取る方も少なからずいます(悲しい)。一方で、打ち上げ花火的に獲得した会員の継続率は低くなるのでは、という感覚もあります。一時的な盛り上がりではなく、長く付き合ってもらって、記事を色々と読んでもらって、心を決めてから契約してもらう方が長続きしそうです(願望も含めて)。

会員数は1年間で5000名を突破

ここからはデータで振り返っていきます。

まずは無料も含めた累計会員登録数の推移です。登録解除もできますが、会員自体の削除はほぼなく、若干グラフの傾きが緩くなっている感じもありますが、登録数自体は順調に伸びていると言えるでしょう。3月11日に5000名を突破しました。

続いて有料のライト会員の推移です。全然少ないのですが、隠しても別にいいことはないだろう、という事で実数のグラフを出してみました。ここに若干のプレミアム会員と、法人会員が加わる形です。最初の3-4ヶ月が若干ペースが早くて、その後はなだらかに増えていっています。

グラフの中で若干跳ねている部分はイベントによる効果です。跳ねた分、下がっているようも見えます(悲しい)。大きく跳ねているのは昨年4月の音声の回、6月のサブスクリプションの回のようです。つまり二匹目のドジョウを狙っています

有料会員比率は2.34%です。半年前の10月1日時点では2.47%でしたので若干の低下だったようです。

続いては会員獲得に貢献した記事のリストです(無料含む)。こちらはまさにロングテールという感じで、1記事で1件の獲得があった記事もあるのですが、5~10件程度の記事も大量に存在するというイメージです。以下で歴代トップ15記事を掲載します。

序章で各メディアに新型コロナウイルスの追い風があったと書きましたが、これを見ていくとMedia Innovationにとっても追い風だったと考えられます。

掲載月タイトル件数
2020年4月Facebook広告単価が3月から激減、新型コロナウイルスで出稿手控えか129件
2020年8月自由な言論を守る? 新たなソーシャルプラットフォーム「Parler」はTwitterに替われるか?78件
2020年6月iOS14、IDFAの取得がオプトインに変更・・・広告のターゲティングに甚大な影響69件
2020年10月Instagramがステマを禁止、英国で当局からの指導で…「#ad」を義務付け60件
2020年4月日本上陸から5ヶ月、「Quartz Japan」が目指すニュースレターによるサブスクリプションの現状と今後52件
2019年11月集英社はいかにデジタルメディアとECを成功に導いたか・・・デジタル戦略を率いてきた小林常務に聞く44件
2020年11月韓国発「ピッコマ」が漫画アプリで首位に、その背景とは? 日本企業の課題は?44件
2020年6月グーグル、検索順位を「ユーザー体験」を重視したものに変更へ・・・来年以降に実装39件
2020年10月なぜニュースアプリがクーポン機能を提供するのか…SmartNewsが考えるクーポン戦略のこれから37件
2020年5月日テレ、グーグルから資金提供を受け拡張現実を使ったニュースコンテンツ展開を推進31件
2021年3月クッキー代替ソリューションの本命「Unified ID 2.0」についてThe Trade Desk白井氏に聞く30件
2020年3月新型コロナウイルスの影響で「SmartNews」などのニュースアプリダウンロードが急上昇28件
2020年12月2021年は広告市場が回復見込み、日本は12%強の成長…広告代理店グループエムが予測
28件
2020年4月なぜいい記事を書いてもPVは増えないの?・・・新連載「メディアってオワコンですか?」(第1回)28件
2020年3月オンラインイベントプラットフォームにメディアなどの主催者が殺到、1万8000社待ちの状況も26件

ここからは決済に利用しているStripeのデータから、もう少し詳しいデータを幾つか紹介します。綺麗にデータが出せなかったので、9-12月をその前の3ヶ月と比較したデータになっています。それぞれサブスクリプションにとっては重要な数字なので、少しずついきます。

まず生涯顧客価値(LTV)は平均で1万9881円という結果に。こんなに高いのか? とやってる人にとっても驚きですが、有り難い事です。これは平均的な顧客が解約するまでに払ってくれる金額を指します。1顧客あたり約2万円が期待できるということは、例えばマーケティングコストに2割を投資するとしたらCPAで4000円まで許容できることになります。(ただ、何度かFacebook広告を試しましたが、今のところこんな金額ではとても獲得できないという結果に…)

上記LTVと関係ありますが、解約率は4.94%という結果に。毎月5%ずつ解約するという計算で、つまり1人のユーザーが20ヶ月顧客でいてくれることになります。980円のライト会員が大多数ですので、20ヶ月×980円で上記の約2万円という計算式が成り立ちます。

続いては新規獲得数です。ここでトライアル数となっているのは、有料会員の初月無料に登録してくれた数を指します。1ヶ月に約20件が増えていることになります。既存契約数が100件だとすると、20%に当たる数字が毎月増えていくことになります(分母は増えるので実数が変わらないと比率は落ちていきますが)。

そして大事なのはトライアルからのコンバージョン率です。これは初月無料に登録した人のうち何%が、トライアル期間を終了しても継続して課金を始めてくれるか、という比率です。ここでは73.68%となっています。毎月20人のうち、ですので14人程度が新しい課金ユーザーになるということになります。

一方の解約率は5%で、全体が100人とすると5人が辞めていきます。辞める人数よりも、増える人数が多いので全体としては増えていきます。分母が増えても解約率は低下しないと言われていますので、分母が増えてくると、出入りの均衡点にいずれ達する・・・(怖いので辞めておきましょう)。

赤裸々に書きすぎたような気もしますが、リアルな数字はこんなところです。「これじゃあMedia Innovationって全然ビジネスとして成り立たないね」と思った方はぜひ登録をお待ちしております

(蛇足ですが、有料会員を増やそうと頑張ると、無料会員も増える構造になっているので、属性の絞れた会員を多く抱えたメディアとしての広告モデルも、それはそれで成り立ちそうな感覚があります)

1年の振り返りとこれからの取り組み

サブスクリプションを始めた前後では景色は大きく変わりました。それまでは漠然とPVか、あるいは業界への認知が取れているのか、といった事を考えながらの運営でしたが、出したコンテンツによって登録が大きく増えたり、コンバージョンが取れたり、リアルに見えるようになってきました(これは有料ではなく会員制を取れば得られるものかもしれません)。

有料という観点では、お金を払う価値があると説得するのは並大抵のことではなく、PVで稼ぐというのとは全く異なる頭を使わなくてはならないという点で大変ではありますが、とても刺激的な仕事になると感じました。特にデジタルメディアの世界ではユーザーに何かを売るというのはこれまで無かったもので、色々な意味で発想を変えていく事が求められると思います。

Media Innovationは小規模ながら様々な試行錯誤を繰り返してきましたので、その経験を活かして新しいメディアとして「mirai.Response」という自動車業界に向けたメディアを立ち上げて、そちらでもサブスクリプションモデルとしています。会社としては歴史のある「ScanNetSecurity」というセキュリティメディアでもサブスクリプションを展開していて、異なる領域での可能性を試していっています。

また、メディアのサブスクリプションを実現するためのプラットフォームを新たに開発し、これらのメディアで導入しています。これを外部に提供することも今後のトライになります(ご興味のある方はこちらから)。

最後にMedia Innovationとしては開発を続けてきたiOS/Androidアプリがようやくリリースできるのではないかという段階になってきました。アプリではウェブ版+αのコミュニティ要素を持って、メディア業界で活躍する皆様に刺激を届けていければと思っています。ぜひお楽しみに!

今のうちに会員登録してアプリ版に備えたいという方はこちら

特集: 進化するサブスク(2021年3月)

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Manabu Tsuchimoto
デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。

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