アップルも参戦、メディアを覆い尽くすサブスクリプションという新たなビジネスモデル

サブスクリプション(サブスク)の波が世界のビジネスを変えようとしています。メディアやコンテンツも例外ではありません。デジタルに乗ったメディアはいち早くそのビジネスモデルを変えています。 サブスクの代表例とも言えるNetflixやSpotifyはもちろん、NewsPicksやTh…

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<p>CUPERTINO, CA – MARCH 25:  Apple Inc. CEO Tim Cook speaks during a company product launch event at the Steve Jobs Theater at Apple Park on March 25, 2019 in Cupertino, California. Apple Inc. announced the launch of , it’s new video streaming service, and also unveil a premium subscription tier to its News app. (Photo by Michael Short/Getty Images)</p>
  • <p>CUPERTINO, CA – MARCH 25:  Apple Inc. CEO Tim Cook speaks during a company product launch event at the Steve Jobs Theater at Apple Park on March 25, 2019 in Cupertino, California. Apple Inc. announced the launch of , it’s new video streaming service, and also unveil a premium subscription tier to its News app. (Photo by Michael Short/Getty Images)</p>
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サブスクリプション(サブスク)の波が世界のビジネスを変えようとしています。メディアやコンテンツも例外ではありません。デジタルに乗ったメディアはいち早くそのビジネスモデルを変えています。

サブスクの代表例とも言えるNetflixやSpotifyはもちろん、NewsPicksやThe Informationなどの新興メディア、さらにはNew York TimesやWall Street Journalなどの伝統的なメディアもサブスクにその未来を賭けています。

ハードウェア企業から転身を図るアップル

米国時間3月25日、アップルの一連の発表は世界の耳目を集めました。ゲームの「Apple Arcade」、映像サービスの「Apple TV+」、そしてニュースサービスの「Apple News+」と全てがサブスク型の新規サービスです。

これまでアップルはiPhoneに代表されるプレミアムなデバイスの販売収益で成長してきましたが、これからはアップル経済圏のユーザーに対して、追加のデジタルサービスを契約(サブスクライブ)してもらって、長く続く収益を積み上げようとしています。

Apple News+を発表するRoger Rosnerアプリケーション担当副社長 (C)Getty Images

コンテンツホルダーの反発

iPhoneのアプリストアで生きてきたプレイヤーは反発の動きも見せます。NetflixのReed Hastings CEOは「Apple TV+」の発表直前のインタビューで、「アップルは素晴らしい会社だがこの計画には協力できない」と述べました。同社はiTunesを通じた課金を1月に中止し、ユーザー登録や課金はNetflix自身のウェブサイトを通じて行うように変更しました。

この動きはアップルが、同社が作ったAppStoreというアプリ経済圏と競争関係に入ったことを示唆します。ゲーム、映像、ニュース、これらのプレイヤーは戦々恐々としています。なんといっても膨大なユーザーリーチを持ち、30%のアップル税を徴収されないという特権もあります。

最初の48時間で20万人の新規会員を獲得したという「Apple News+」には、ELLE、ESPN、GQ、New Yorker、TIMEなどの雑誌や、TechCrunch、Voxなどのオンラインメディア、そしてWall Street Journal、Los Angeles Timesなどの高級紙、合計300以上のメディアが揃いました。一方、参加を見送ったメディアも多数あります。

月額9.99ドルで様々なメディアを読み放題で提供するApple News+

ユーザーと直接、繋がれるか

New York TimesのMark
Thompson CEOは「Apple News+」が発表される直前のインタビューでCNBCに対して「私達のジャーナリズムを他の場所で、見れるようにしていく、しかも他のジャーナリズムと混ぜて、という考え方には違和感があります」とコメント。さらにNetflixに自社のライブラリを提供して、大金と引き換えに結果として強大なライバルを育ててしまったハリウッドのような運命は辿りたくないと述べました。

サブスクを支援する世界的なソリューションを提供するZuora Japanの桑野順一郎社長は「プラットフォームの読み放題サービスは、プラットフォーマーにとってはサブスクだが、提供するコンテンツ企業にとってはサブスクではなく流通チャネルが増えただけに過ぎない」と言います。(特集の第3回で詳細なインタビューをお届けする予定)

「顧客に寄り添うのがサブスクの本質」と一般社団法人日本サブスクリプションビジネス振興会の佐川隼人代表理事は言います(特集の第2回で詳細なインタビューをお届けする予定)。デジタル技術を用いて、ユーザーと直接的に繋がり、ユーザーを満足させられるサービスやプライシングをダイナミックに調整しながら提供することがサブスクであるとすると、チャネルを通じて提供することは難しそうです。

メディアのサブスクで重要なものは?

サブスクをメディアに適用していくために必要なものは何でしょうか? 株式会社ユーザベースの代表取締役社長を務める梅田優祐氏は「有料会員を獲得するために必要な最初のステップは、無料会員の強い基盤を持つこと。そして、その無料会員が有料会員に変化するための、強いコンテンツが充分にできていることがポイント」と述べています(株主総会レポート)。

順調に拡大するNewsPicksの有料会員数(2018年の通期決算説明資料より)

これは米国事業であるQuartzに関する重要なKPIを問うた質問に対する返答ですが、以下の2つのKPIを重視しているとしています。

・ユーザーの継続率と訪問数(エンゲージメント)
・無料会員から有料会員への転換コンバージョン率

同じくユーザベースの佐久間衡氏は「毎月一定額をいただくことは、一回限りではなく、必ず毎回、そして継続的にユーザーの皆さんに満足して頂けなければならないということです」と指摘。さらに、1記事単位での課金は考えないのかという質問に対しては「記事ごとの課金につきましては、例えば1記事100円にしてしまうと、1記事だけ良いものを作ればそれでいい、となってしまう可能性があります」としています。

ユーザーと長期的な関係を結びながら、満足させていく事がサブスクでは何より重要であることが分かります。

サブスクのビジネスインパクト

サブスクによって、コンテンツの作り方がユーザーに寄り添い、長期的な満足を追求する方向に変わるとすると、ビジネス面ではどのような変化があるでしょうか? それを理解するのに最適なのが、いち早くサブスクに転換を進めていったNew York Timesの売上推移をグラフ化したものです。

決算説明資料よりMedia Innovation編集部作成

一時的な増減はあるものの、全体的に増加基調を保っています。契約を積み上げていくスタイルですので、基本的に安定し、伸びていく際も緩やかに、仮に縮小する場合でも緩やかに、という形になると考えられます。

あらゆるジャンルのメディアがサブスク化していく

日本では代表例としてNewsPicksや日経電子版が挙げられるため、経済メディア特有の現象だと思われがちですが、現在あらゆるジャンルのメディアがサブスクに挑戦を初めています。代表的な例を挙げてみました。

The Information
テクノロジー シリコンバレーを中心にテクノロジーの話題を深く掘り下げていくメディア。スクープも多く、注目を集める。
STAT
医療 バイオテクノロジー、製薬、ライフサイエンスに関する業界ニュースや政策、技術動向についてレポート。
GoldDigest
ゴルフ ゴルフメディアが運営するゴルフを上達するためのオンラインビデオコースでサブスク課金。
AdAge
広告 広告やマーケティングに関する世界的なメディア。
Vanity Fair
エンターテインメント エンターテインメント、テレビ、政治、セレブ、ファッション、ビューティなどに関する世界的な雑誌のデジタル版。
ExtraCrunch
ベンチャー 世界のベンチャー企業動向を追うTechCrunchの有料版。無料版と比べて、より深く詳細なレポートを届けている。
KAI-YOU Premium
サブカルチャー 世界をワクワクさせるポップなコンテンツ情報を届けるメディアの有料版。
乗り物ニュースプレミアム クルマ クルマやバイクなど乗り物のニュースやコラムを発信するメディア。課金することでプレミアムコンテンツや広告がないサイトが見られる。
クーリエ・ジャポン一般ニュース 世界の主要メディアがカバーした独自情報を届けることで多様な視点を提供するメディア。日本からのオリジナル記事も。

4月特集「サブスクリプションはメディアをどう変えるか?」では、キーパーソンへのインタビューを中心に、サブスクリプションが何を実現するのか、メディアはどう変わっていくのか、解き明かしていきます。

【4月特集】サブスクリプションはメディアをどう変えるか?

4月特集に合わせて、オフラインイベント「Media Innovation Meetup #3 サブスクリプションはメディアをどう変えるか?」を4月17日(水)に開催します。

特集に登場するサブスクリプション総合研究所の宮崎琢磨 代表取締役社長、キメラ/CAMPFIREの大東洋克取締役COO、そしてメディアコンサルタントとして世界のメディア事情に詳しいソーシャルカンパニーの市川裕康氏にも世界のメディアのサブスク事情についても解説いただきます。

終了後には軽食と飲み物を用意した懇親会も実施します。

■概要
日時 2019年4月17日(水) 19:00~22:00
会場 〒160-0004 東京都新宿区四谷3-9 第一光明堂ビル 9F TIME SPACE 四谷 ※四谷四丁目駅から徒歩2分
主催 株式会社イード

■スケジュール
18:30 開場
19:00 開演、主催者挨拶
19:05 各登壇者からプレゼンテーション
    株式会社ソーシャルカンパニー 代表取締役/メディアコンサルタント 市川裕康氏
    ビープラッツ株式会社 取締役副社長 宮崎琢磨氏
    株式会社キメラ/株式会社CAMPFIRE 取締役COO 大東洋克氏
20:05 パネルディスカッション
21:00 懇親会
    軽食とドリンクを用意します
22:00 終了

席に限りがございますので、Peatixより是非早めにお申込みください。

(C)Getty Images

《Manabu Tsuchimoto》

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Manabu Tsuchimoto

Manabu Tsuchimoto

デジタルメディア大好きな「Media Innovation」の責任者。株式会社イード。1984年山口県生まれ。2000年に個人でゲームメディアを立ち上げ、その後売却。いまはイードでデジタルメディアの業務全般に携わっています。

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