広告業界がクッキー廃止に備えられていないことをIABが警告・・・年間1兆円の広告収益喪失の危機

2月8日、広告関係の業界団体であるIABは第5回の年次報告を発表し、広告業界がサードパーティクッキー廃止に十分備えられていないことを警告しました。代替手段への投資が伸び悩んでいるどころかクッキーへの投資が増加している現状から、年間1兆円の広告収益が喪失する危険性があるとしています。発表では、それを回避するための3つの方法も提案されています。

業界関係者の見込みの甘さ

IABは、第5回目の年次報告State of Dataにて、サードパーティクッキーの廃止、クロスメディアアドレサビリティ(個人特定)の制限や技術革新が広告測定にどのような影響を与えるかを調査しました。その調査の結果、広告業界がクッキー廃止に十分備えられていないことが浮き彫りとなりました。

調査対象のパブリッシャーやアドテク企業の約60%がクッキー廃止は広告測定に影響があると予想し、77%以上がそれに備えていると回答しました。備えていると回答した割合は前年から15%と大きく上昇し、意識は大きく改善されていますが、それがクッキーの代替手段活用へつながっていないことが判明しました。

伸び悩む代替手段への投資

調査対象となった企業の大半は、クッキー廃止に向けた新たなデータアプローチへの適応を進めていません。具体的には、

  • 3分の2以上の69%がAIの活用を増やしていない
  • 3分の2の66%が広告測定の戦略見直しを行っていない
  • 59%がファーストパーティーデータへの投資を増やしていない

ということが挙げられます。そしてなお悪いことに、廃止予定のクッキーへの投資は前年から8.1%も増加しており、業界全体が真逆の方向へ進んでいることも分かりました。ちなみに、この8.1%は昨年の2倍の増加率となっています。

グーグルが代替案として用意したプライバシーサンドボックスについても、それを理解している企業は46%に留まりました。また、IAB自身が提供している、プライバシーに配慮したOpen Measurement SDKを実際の広告技術として使用している割合はわずか15%しかありませんでした。

広告業界はどう動くべきか

こうした調査結果から、IABは年間1兆円の広告収益が失われる可能性があると警告しています。IABはそれを回避するための施策として次の3つを挙げています。

  • 共通言語、共通の基準、そして共通の重要業績評価指標(KPI)を開発すること
  • 個人特定や広告測定のためにプライバシー重視のソリューションを開発すること
  • 既存の技術標準を活用し、クロスメディアアプローチにおける新たな技術標準を確立すること

IABの報告した調査レポートの全文はこちらから読むことができます。

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