世界的なパンデミックが始まってから約2年。メディア業界も大きな変化の波で揺れ動き続けています。この記事では、2021年にMedia Innovationがお届けしてきた記事の中から、注目を集めた記事を一挙にご紹介。メディア業界の動向を振り返ります。
目次
PVが多かった記事トップ10
MIが2021年に公開した記事のなかで、もっともPVを集めた記事トップ10をご紹介します。
- 枻出版社、民事再生法を申請・・・主力メディアは譲渡済み
- 話題の次世代音声SNS「Clubhouse」が新たな資金調達へ…Twitterも類似サービスで追随、課題も
- INCLUSIVE、堀江貴文氏のメルマガ発行会社を買収・・・新株発行で堀江氏が第2位株主に
- NFTはなぜ世界的に注目されるのか?gumi國光氏が見る未来像とは…特集「パブリッシャーのためのNFT入門」#2
- 日経新聞、朝刊購読数は減少が続く…電子版はコロナ禍で増加も6月以降は微減
- 【メディア企業徹底考察 #9】電通と博報堂の業績比較、後塵を拝した電通は稼ぐ力を取り戻せるか?
- 再び緊急事態宣言、イベントは5000人もしくは収容率50%以下を目安
- 世界で大流行のニュースレター、人気のフォーマットを解説【寄稿】
- KDDIのポータルアプリ「auサービスTOP」が「auサービスToday」にリニューアル・・・Gunosyが運営・開発を担当
- 【特集】巨大プラットフォームに成長した「YouTube」を知るための10のデータ
最も注目を集めた記事は、今年2月、趣味、ライフスタイル分野の老舗出版社の枻出版社が民事再生法を申請した、というニュースでした。主力メディアはそれぞれ他の出版社へ譲渡され、再始動しています。倒産前の12月、同社グループ会社のピークスと24ブランドと引き継ぐことを発表したドリームインキュベータには取材を行ない、新体制での展望についてお聞きしました。
新連載「メディア企業徹底考察」
今年4月からは、「メディア企業徹底考察」シリーズをスタートしました。国内のメディア関連企業の業績をもとに成功や失敗の要因を明らかにし、今後の事業戦略を探る、毎週金曜日公開の会員限定コンテンツです。今年は計38本の記事を公開。人気トップ10は以下のようになりました。
- 【メディア企業徹底考察 #9】電通と博報堂の業績比較、後塵を拝した電通は稼ぐ力を取り戻せるか?
- 【メディア企業徹底考察 #16】債務超過に転落した広告写真のアマナ、10億円の資金調達で成長軌道に乗れるか?
- 【メディア企業徹底考察 #12】売上減少が止まらない朝日新聞、巨額赤字の先に未来はあるか?
- 【メディア企業徹底考察 #10】民放4社業績比較―なぜ日テレの営業利益率は10%を超え、TBSは1%を割っているのか
- 【メディア企業徹底考察 #2】復活するKADOKAWA・・・高収益の源泉と、新社長・夏野氏の実力とは?
- 【メディア企業徹底考察 #1】Quartzの大失敗で65億円の赤字、それでもユーザベースが評価される2つの理由
- 【メディア企業徹底考察 #5】赤字が続くC Channel、インフルエンサープラットフォームで大逆転できるか
- 【メディア企業徹底考察 #15】BASEが戦略的に赤字を出そうとしている理由とは?
- 【メディア企業徹底考察 #34】消費者起点の改革を行うトーハンと書店との繋がりを強化する日販、岐路に立たされた出版取次
- 【メディア企業徹底考察 #14】利益率が大幅減、グノシーは”負のループ”から抜け出せるか?
クッキー規制問題
プライバシー保護への懸念が高まり、欧州のGDPRをはじめとする法規制、そしてグーグルの「Chrome」ブラウザにおけるサードパーティクッキー利用廃止計画など、ユーザーデータの収集や広告配信について様々な影響が出ています。MIでは、国内外の事例を取り上げ、メディアがどのような対応を迫られているのかをお伝えしてきました。
- 【特集】もうすぐやってくるAfter Cookieの世界、メディアが直面する課題と好機とは?
- クッキー規制にどのように対応すれば良いのか? インティメート・マージャー簗島社長
- クッキーレスは既に始まっている―ポストクッキーIDで先行するLiveRamp今井氏に聞くパブリッシャーの進むべき道
- 1兆円の広告収益が失われる可能性、IABがサードパーティクッキー廃止に対する業界の目論見の甘さを警告
- Cookie規制などのデジタル業界の変化に対し、64%のマーケターが“詳細を理解せず”・・業界の変化に対する危機感の低さがあらわに
- クッキー規制などのプライバシー保護に関する意識調査・・・「顧客からの信頼」が最優先事項
- クッキー規制による広告の過剰配信問題の実状・・・ニールセンがデジタル広告配信とメディアプランニングのインサイトを発表
グーグル関連記事
- サードパーティクッキー廃止の延期、グーグルの決定は何を意味するか・・・Teadsのチーフ・データ・オフィサーが解説
- グーグルのサードパーティCookie廃止は独占強化に繋がるか、英当局が調査開始
- グーグル、「クッキーの代替技術を開発したり採用しない」と表明
- グーグルがクッキー廃止後に向けたパブリッシャー向けの取り組みを紹介・・・ファーストパーティデータ活用に重点
- 英競争当局、グーグルのプライバシーサンドボックスに関して広く意見を求める「パブリックコンサルテーション」を実施
- グーグル、クッキー代替技術「FLoC」のテストスケジュールを延期
- グーグルのプライバシーサンドボックス、第三者による監視を約束・・・英競争当局の調査を受け
プラットフォームによる記事対価支払い問題
GoogleやFacebookによるニュース記事へのタダ乗り問題に対して世界各国のニュースメディアが異を唱え、大きな動きがあった年でした。オーストラリアでの「ニュースメディア交渉法」を皮切りに、多くの国でルールが定められ始め、プラットフォーマーは対応を急いでいます。2022年も、ニュースメディアへの記事対価支払い問題は大きなテーマとなることが予想されます。
- マイクロソフトと欧州メディア4団体、オーストラリア式の仲裁機関を求めて共同歩調・・・ニュースへの公平な支払いを求めて
- プラットフォームによるニュースへの支払い、小規模な報道機関をカバーすべき理由
- テック企業によるニュースへの支払いは本当にメディアのためになるのか?
- 紙媒体の新聞は死んでいない:主要な調査によると、Googleよりも地元の新聞の方が圧倒的にニュース消費者から支持を受けている。
- カナダの新聞社団体がトルドー首相宛ての公開書簡を公開・・・ニュース対価支払い法の迅速な制定を要求
- カナダで”オーストラリア式”ニュース対価支払い法の実現が近づく・・・年間計1億ドルの支払いという予想も
- 豪ローカル出版社18社が記事対価についてグーグルらと団体交渉・・・「ニュースメディア交渉法」が抱える問題とは
- 米ニュースメディア同盟、著作権局に対し声明・・・グーグルらのニュース記事使用の「著作権侵害」認定を求める
- 2021年の”パブリッシャーVSプラットフォーム”を総ざらい・・・レポート「Media Moments 2021」
出版社との契約、ニュースキュレーションサービスの展開
- 「Googleニュースショーケース」がついに日本でスタート 全国紙・地方紙40社以上が参加
- ニューズ・コーポレーション、「Facebook News」と複数年契約・・・記事対価を巡り
- グーグル、オーストラリアでニュースに支払う「ニュースショーケース」を開始・・・参加を拒否するパブリッシャーも
- ニューズ・コーポレーションがGoogle News Showcaseを契約・・・米英豪大手、地方紙が大量参画
- グーグル、掲載するコンテンツの使用料を支払うことで仏出版社団体と合意
- グーグルが仏AFP・独複数メディアと記事対価の支払いで合意
- フェイスブック、記事使用料支払いで仏出版社団体と合意・・・1月には「Facebook News」を提供開始
- 独アクセル・シュプリンガーが記事対価についてフェイスブックと合意「公平な関係になった」
- Facebook Newsがドイツで5月に開始、大手出版社アクセル・シュプリンガーは不参加を表明「不当に安い対価」
メディアのNFT活用
ブロックチェーン技術を使ったNFT(ノンファンジブルトークン、非代替トークン)への注目が高まり、大きな話題となりました。海外のメディア企業は、記事や表紙をNFTとして販売するなど、いち早く新規ビジネスを模索。最近ではテレビ朝日など国内の大手企業も参入を発表しています。
海外企業
- 「Quartz」がNFTで記事を販売する実験、約20万円の値が付く
- 「TIME」も伝説の表紙をNFTとして販売、将来はメディア向けのプラットフォーム構築を目指す
- ニューヨーク・タイムズもコラム記事をNFTとして販売、なんと約6000万円で落札
- 「フォーブス」も表紙をNFTとして販売、約3,650万円で落札
- CNNがNFT参入・・・「歴史的瞬間」のアーカイブを購入可能に
- FOXとBento Boxが共同でNFT市場に参入し、1億ドル規模のクリエイターファンドを設立・・・世界初のブロックチェーンキュレーションアニメも発表
- 米フォーチュン誌、表紙のNFT販売で得た収益の一部をジャーナリズム組織に寄付・・・1組織あたり約16万5000ドルの寄付
- 『スポンジ・ボブ』を所有するバイアコムCBSがNFT市場に参入・・・人気IP活用で「ファン重視のプラットフォーム」
国内企業
- gumi、doublejump.tokyoと共同でNFTコンテンツ販売を開始・・・第一弾としてNFTアートを発売へ
- メディアドゥとトーハン、世界初・NFTデジタル特典付き出版物の刊行へ・・・扶桑社・主婦の友社の3タイトルで販売
- MyAnimeList、漫画のコマを用いたNFT「Manga Fragments」を発表・・・漫画のデジタルアイテム化に挑戦するクリエイターも募集
- テレビ朝日がNFT事業へ参入・・・東映ロボットアニメの名シーンをデジタルカードとして限定販売
新たなメディアプラットフォーム
ポッドキャストをはじめとする音声コンテンツへの注目が集まるなか、音声ライブアプリ「Clubhouse」は一時的な熱狂を巻き起こしました。また、ニュースレタープラットフォームの「Substack」では、多くのジャーナリストがニュースレターを発行。プラットフォーム上の有料購読者は100万人を超えるまでに成長しています。
これらの新興サービスの流行を受け、さまざまな企業が類似サービスを開発しており、現在はどのサービスが覇権を握るか、というフェーズに入っています。周辺サービスとの連携やクリエイターの収益化支援などの工夫を凝らし、ユーザー獲得競争が激化しています。
音声ライブアプリ
- 大人気のClubhouse、いま何が起きているのか?
- 音声アプリ「Clubhouse」がシリーズCラウンドの資金調達を完了・・・企業価値は40億ドルと報じられる
- Clubhouse、TEDと独占契約を締結しコンテンツプールを拡大へ・・・5月には元TED責任者を採用
- フェイスブック、米国で”Clubhouse”風の音声ライブとポッドキャストの提供を開始
- フェイスブック、音声ライブ機能を全世界へ拡大・・・認証を受けたクリエイターがルームを開設可能
- Spotify、「Clubhouse」対抗の「スポティファイ グリーンルーム」を提供開始
- ツイッターが「スペース」クリエイター支援プログラム開始・・・合格者には毎月2500ドル支払いなど
ニュースレター
- 世界で大流行のニュースレター、人気のフォーマットを解説【寄稿】
- 「パブリッシャーには今がチャンス」theLetter 濱本氏が語るニュースレターのこれから
- 国産ニュースレターサービスの先駆け「theLetter」に聞く成功の秘訣
- ニュースレターのSubstackはジャーナリズムの新モデルではなく、むしろ旧モデルである
- INCLUSIVE、ニュースレターサービス「WISS」をローンチ・・・サブスクリプション形式で配信
- Substack上の有料サブスクリプションが100万人を突破
- Twitter、プロフィール画面からRevueのニュースレターの購読が可能に
- 米アクシオスがローカルニュースレターで有料メンバーシップを開始・・・寄付モデルを新たな収入源に
- 米アトランティック、サブスタックからニュースレター作家とその読者を取り込む
- メタのニュースレタープラットフォーム「Bulletin」、開始から6か月の経過報告・・・ライターの半数が読者1000人以上獲得
- メディアも個人も巻き込んだニュースレターブーム、来年はどうなる?・・・レポート「Media Moments 2021」
メディア業界の再編
前年に引き続き、ファンドによるメディア企業買収や、競合同士での合併など、業界再編の動きが多数見られました。徹底したコストカットで「ハゲタカ投資家」と悪名高い米アルデンによるローカル新聞社の買収には注目が集まりました。下半期には、ドットダッシュがメレディスを、Vox Mediaがグループナインを買収するなど、大きなニュースも飛び込んできました。
- 米紙トリビューン株主がアルデンによる買収を承認・・・地元投資家らによる対抗は実を結ばず
- 英フューチャー、同業のデニス・パブリッシングを買収し米国でのポートフォリオ強化
- 独アクセルシュプリンガー、米ポリティコを買収・・・取引額は10億ドルと報道
- 米メレディスをデジタルメディア企業ドットダッシュが買収・・・両社のデータを組み合わせデジタル戦略加速
- Vox Mediaがグループナインを買収し合併・・・年間収益7億ドル規模の巨大メディア企業に
特集
MIではほぼ毎月、メディア業界の直面する課題や新たなビジネスチャンスをテーマに特集、イベントを開催しています。今年は、以下のようなラインナップとなりました。
- 1月 After Cookie~メディアと広告の未来像
- 2月 YouTube経済圏のいま
- 3月 進化するサブスク
- 4月 パブリッシャーのためのNFT入門
- 5月 熱いコミュニティの作り方
- 6月 地域メディアの現状とこれから
- 8月 メディア業界のキャリア、これからどうなる?
- 9月 NFTが進化させるコンテンツの未来
- 10月 ニュースレターについて知りたい
- 11月 メディアとコマース2021
- 12月 メディア業界2022年に向けて